第2話 あいつと俺と
川野辺高校。
この辺りでは比較的偏差値が高く進学校として知られる公立高校だ。
その2年A組。俺が編入されるクラス。
担任の田中先生の後をついて教室の前まで行く。
「おい静かにしろ! ホームルーム始めるぞ!
新学期早々だが、今日からこのクラスに1名編入生が来ることになった。編入試験はほぼ満点で、アメリカからの帰国子女だ。皆仲良くな!
じゃ 田辺入って自己紹介しろ」
教室に入り教壇の横に立ち挨拶。
「田辺 健吾です。親の仕事の都合でしばらくアメリカに居ましたが、元々はこの地区の出身で川野小学校に3年生まで通ってました。
俺の事覚えてるよって人いましたらどうか絡んでください。よろしくお願いしします」
と軽く挨拶しクラスを見渡す。
『ん? 窓際の二人って朝不良に絡まれて女の子たちじゃん なんかこっち見てる』
「ねぇ楓、朝の人って編入生だったんだね。強い上に頭も良いとかすごいね!」
「・・・たなべけんご?」
「ん? どうしたの楓?」
と少し震えながら急に立ち上がるポニテの女の子。
「ケンちゃん!!」
「へ?」
「私だよ。わからないの?」
「誰?」(俺 あんな可愛い知り合い居ないぞ)
絶望的な顔をするポニテの子
『俺何か悪いことしたのか・・・・』
「・・・・・バカぁーーーーー!」
と何だか泣きながら教室を出て行ってしまった。
『何だ???』
なんというか俺も呆然とするしかなかった。。。
すると
「あの~」
とショートボブの女の子が申し訳なさそうに声を上げた。
「田辺君って川野小で3年1組に居た田辺君だよね。私の事覚えてる?村田 綾子って言うんだけど」
「村田・・・あぁ楓といつも一緒にいた綾ちゃんか!
まさか高校でまた同じクラスになるとはなぁ。よく一緒に遊んだしちゃんと覚えてるよ!ってことはもしかして楓もこの高校に通ってるの?」
「うん。楓の事もちゃんと覚えてるんだね」
「当たり前だろ!あいつとは幼馴染なんだぜ」
「うぅ~そうだよねぇ~
私も名前聞いても小学校の時の田辺君とすぐに一致させられなかったから偉そうなこと言えないんだけどさ~
・・・・・さっき泣きながら出てったのが楓だよ。」
「またまたぁ~ 楓はショートカットだったし、もっと男勝りで、色黒で・・・」
「・・・女の子もさぁ、7年もすれば変わるんだよ。。。」
「ま じ で す か・・・」
「楓は田辺君が帰ってくるのずっと待ってたんだよ。だから"誰"とか言われてショックだったんだろうと思う。。。」
「・・・・・」
「とりあえず田辺君 楓の事追いかけて!まだそんな遠くには行ってないと思うし」
「わかった。楓なら何となく行きそうなところに心当たりはある」
「うん 任せたよ!」
と俺は教室を出て走り出した。
「あのさぁ一応この時間は俺の授業なんだけど。。。」
先生ゴメン!
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<小早川楓視点>
私は何をやっているんだろう
ケンちゃんが帰ってきたと思ったら「誰?」とか言われて気が動転して。。。
そうだよね。ケンちゃんが引っ越してから7年。
私の事なんか忘れちゃってるよね。
背も高くなってたし、喧嘩も強くて勉強も出来る。
きっと可愛い彼女とかも居るんだ。
ずっと待ってたのにさ・・・
気が付くと私は小学校の裏山にある神社の境内に居た。
ここに来るのは久しぶりだけど小さい頃に嫌なことがあるとよく来てた場所だ。
何だかここにいると心が安らぐ。
そして、一人で座ってるといつもケンちゃんが迎えに来てくれた。
『何だか懐かしいな・・・』
感傷的になったのか何だか涙が出てきた。
『ケンちゃん・・・』
「楓!」
「え?」
振り向くと走ってきたのか息を切らしたケンちゃんが居た
「なんで?」
「楓は辛いこととかあると、いつもここに来てただろ?」
「何よ!私の事忘れてたくせに・・・」(覚えててくれたんだ・・・)
「ゴメン。だけど楓の事はずっと忘れたことはなかったよ。ただ、こんな可愛い子になってるなんて思ってなくてさ 綾ちゃんに楓の事を聞いても最初信じられなかった」
『可愛いって私の事?』
『何?ちょっと照れるじゃない』
「ふ ふん。お世辞言っても許さないんだからね。私はケンちゃん見てすぐにわかったんだから!」
「それは名前言ったからだろ?今朝 不良から助けたときは気が付いてる様には見えなかったぞ」
「うぅ~それは確かに。。。」(痛いところを・・)
「許してくれないかな?」
「・・・・・」
というと楓は俺の近くまで来て、顔を赤くして照れながら俺に抱き着いてきた。
ふんわりとあの日と同じ柑橘系の甘い香りがした。
「楓?」
「おかえりなさい ケンちゃん」
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