1章 7年目の春~夏
第1話 帰ってきました
神奈川県の中心地である大都市横浜。
そこから、数駅進んだ各駅停車の小さな駅。
「懐かしいなぁ~」
小学校3年生まで過ごした俺の生まれた町"川野辺"。
高校2年の春。
今俺は7年ぶりにこの町に帰ってきた。
親父の転勤では本当にあちこち行った。
鹿児島、大阪、沖縄に各1年。そして急に海外でアメリカに4年だ。
親父の任期はあと2年あるんだけど、日本の大学に通いたいという俺の想いもあり俺だけ先に1人日本に帰国したわけだ。
そして、生まれ故郷近くの高校に編入。
今日はその高校の始業式だ。
家は学校近くに贅沢ながらも1LDKのマンションを借りた。
初の一人暮らしでもあり今から楽しみでしかたがない。
そして、学校へ向かう道。
流石に7年も過ぎると街並みも変わっていた。
近くに大きなショッピングモールが出来たのも影響しているのかもしれないけど昔よく遊んだ駄菓子屋やゲームセンターも閉店していた。
あの駄菓子屋におばあちゃんはまだ元気なんだろうか・・・
ちょっと寂しい気はするけど町は変わっていくんだよね。
閉店した駄菓子屋のシャッターを見て、ふとあのころを思い出した。
そういえば、あいつはまだこの町に居るのかな・・・・
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以前住んでいた家のお向かいさん。
生まれた病院も誕生日も同じで、小さいころからいつも一緒だったあいつ。
いわゆる幼馴染というやつで、面白い事に俺が転校する小学校3年生までクラスも全て一緒。
よく喧嘩もしたけど仲も良かった。
ただ、あいつは俺にとって大きな壁でありライバルでもあった。
勉強にスポーツにゲームに喧嘩etc 何をやっても毎回あいつに勝てなかった。
いや別に俺が頭が悪いとか運動神経が悪いとかではない。
むしろクラスではいつも上位だったはず。それでもあいつはそれ以上で。。。
そして、毎回"私に勝とうなんて10万年早いわ!"と言い放たれるんだよね。
何だよその10万年ってとか思いつつも反論できずに過ごしていた。
そんなあいつだったけど、俺が親父の仕事の都合で引っ越すことになった時は泣いてた。いつも強気なあいつが泣いてるのなんて初めて見たし衝撃だった。
そして、最後に言われたのは"待ってるから、絶対戻って来てよ!"だった。
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という事でだいぶかかったけど約束通り戻ってきたんだよな。
今頃あいつは何をしているのやら・・・・
そんな昔を思い出しながら学校へ向かう道を歩いていると何やら路地裏から物騒な声が聞こえてきた。
「放してって言ってるでしょ!」
「お前を連れてかねぇと俺たちも困るんだよ。ごちゃごちゃ言わず一緒に来いや!」
ポニーテールの気の強そうな女の子が腕を捕まれ、その後ろではショートボブの小柄な女の子が震えている。
不良どもは学生服を着たいかにもな感じの男が4人。
う~ん 転校初日から面倒ごとはなぁ~
でもあの子ちょっと好みかも・・・
などと考えながら様子を見ていると不良君の一人と目が合ってしまった。
「おい てめぇ何見てんだよ。」
とこちらの返答も待たずにいきなり手を出してくる金髪の不良少年A。
はぁ結局巻き込まれるのか・・・
と俺は嫌々ながらも相手のパンチをかわし、ボディにパンチをお見舞いした。
昔のドラマで言ってたよね"顔はやめな ボディーだよ"的な。
反撃があるかと思ったら、思った以上に貧弱で金髪君は1発でダウン。
弱すぎるぞ不良少年Aよ。。。
残りの3人は一瞬驚いた顔をしたけど「ふざけやがって!」と一斉に殴りかかってきた。というかこいつら動きが遅い・・・喧嘩慣れしてないのか?
1人目の不良少年Bをかわし脚をひっかけ転ばせ、後から来た2人目の不良少年Cにはボディに一発。
一瞬ひるんだ3人目の不良少年Dには蹴りを食らわせてやった。
結構加減したつもりだったけど、4人とも涙目。
弱いぞお前ら・・・
言っておくが俺は別に喧嘩慣れしてるとか武術を習ってたりとかいうわけではない。運動神経はそれなりに良いと思うけど単に不良が貧弱なだけだ。
そして、お約束の「覚えてろよーーー!」の一言を残し逃げ去っていった。
誰が覚えてるかよ。一瞬で忘れるわ。でも あの学ランってこれから行く俺と同じ学校の制服だよな。進学校のはずなんだけど・・・はぁ~初日から面倒そうだ。。。
と立ち去ろうとすると、絡まれていた女の子に声を掛けられた。
可愛い子達だけど正直これ以上巻き込まれるのは面倒だ。
「あの~」
「ち 遅刻するから早く学校行けよ!」
と投げやりに言い放ち、俺はダッシュでその場を立ち去った。
「あ、行っちゃった。お礼言いたかったのにな・・・
ねぇ楓、強いしちょっとカッコよかったよね あの人」
「う~ん そうかなぁ~ 強かったけどカッコよかった?」
「ふふ 楓はケンちゃん一筋だもんね。」
「け ケンちゃんはそんなんじゃないし・・・
でもあの人、うちの高校の制服だったよね。あんな人いたっけ?」
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