第3話 鳥居をくぐって

「一週間だけ待ってやる。」

「どういう、意味?」

「世界の要を見つければこの世界から出られる。だがこの世界は悠長に待っていてくれるほど甘くないんだ。だいたい一週間で最初の1日に戻ってきてしまう。」

「ループするってことか?」

「あぁ、俺はこの世界と現世を繋ぐ案内人みたいなもんだ。もしこの世界の要を見つけても俺がいないと現世には帰る道がわからない。だけど俺もここに迷い込んだやつに合わせて何日もこんな世界にいるわけにはいかない。だから一週間だけ待ってやる。」

「一週間・・・。もし見つけられなかったら君は帰って、俺はこの世界に取り残されるわけか。」


 こうしてはいられない。一刻も早く要を見つけなければ。


「なぁ、この世界に来た人が前にもいるって言っていただろ。戻れなかった人たちはどうなったんだ?」

「さぁな、この世界から一回出ると戻るのは難しいんだ。この世界と現世は隔絶されてる。同時に縁も切れてしまうからな。元来た道がわからなくなるんだ。」

「縁が切れたら繋がっていた人との付き合いがなくなるだけじゃなくて記憶が消えてしまうって聞いたことあるけど、それってほんと?」

「意外と冷静だよなお前。そうだよ。現世じゃ付き合いがなくなるって意味で使われているがここでの縁切りは縁を持ったすべての人との関わりを消すって意味だから。」

「もし、そうなったら俺は覚えていられるのかな。」

「どうだろうな。」


 俺のつぶやきに白い狐は前を向いたまま答える。その横顔が少し寂しそうに見えたのは俺がそう思いたいからだろうか。


「ねぇ、君の名前はなんていうの。」

「普通名乗ってから聞くだろ。礼儀がなってないな。俺の名はヤクだよ。」

「俺は佐々木奏汰だよ。よろしくヤク。」


 そう毒づいた狐は高飛車だが意外といいやつなのかもしれない。勘だけど。



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