第10話

「私に愛を教えてほしい」


「愛というのは、相手とのんびり映画を観たいということだ」

「ふーん?」

「というわけで映画館にやってきた」

「見れば分かるけど」

「今日観るのはこれだ!」

「……これは、ミステリーもの?」

「そうだ」

「……ふつう、こういう時は恋愛ものを見るんじゃない?」

「え、だって君、恋愛ものはつまらないって前に言ってただろう」

「言ってたっけ?」

「言ってたさ。俺たちが出会ったばかりの頃、君が同じ学部の男に誘われていたときに」

「…………」

「思い出した?」

「……よくそんな前のことを、自分に言われたわけでもない言葉を覚えてたね」

「記憶力はいい方だからね」

「詳細に覚えすぎててちょっと気持ち悪い」

「あれっ、ここはよく覚えてたねって好感度が上がるところでは?」

「ふふ、なにそれ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る