第9話

「私に愛を教えてほしい」


「愛というのは、相手の趣味を無理に理解しないことだ」

「そう」

「人はそれぞれ違う。十人十色だ。いくら運命の相手でも、全てを理解しようとするのは傲慢ではないだろうか?」

「そうかもね」

「だから理解しなくてもいい。理解できなければ、一定の距離を置いてそっとしておくのが優しさであり愛というやつだ」

「ふーん」

「だからそのプラモデルを捨てるのはやめてくれ」

「だって、床にバラバラにされてたから」

「バラバラにされてたんじゃなくて元々バラバラなんだよそれは。これから組み立てるところなの」

「そう」

「いや確かにそのまま放置してトイレ行った俺も悪いけど、踏んだ腹いせに捨てるのはやめてくれ」

「…………」

「お願いします」

「…………はぁ」

「おお、分かってくれたか」

「その綺麗な土下座に免じてね」

「ありがとう土下座」

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