幻影の中へ
ジャック
幻影の中へ
ある廃れた郊外にある診療所で医師と男の二人は話していた。
「僕はとても気分が悪くて、精神がどうしてしまったのだろう、教えてください」
患者の男は医師に尋ねた。
「何が見えますか? 」
「森が見えるよ」
「どのような?」
「 暗闇に光があるんだ」
「どうするつもり? 」
「その中を歩きたいんだよ」
男は永遠に続く森の中を歩く夢を見るという。医師はさらに尋ねた。
「他に何が見えますか?」
「蝶が見えるよ」
「どのような? 」
「少女みたいなんだ」
彼はその永遠に続く暗闇の森の中から光が見えたかと思うと美しい少女を見たというらしい。
「それからどうするつもり?」
「それを追いかけたいんだよ。救いを求めて。その少女が立つ地面の上に鍵があるんだよ」
「どのような? 」
「ただの鍵だけど、光っているんだ。それを拾っておかなくちゃならないんだ。何かが起きているという気が、ずっとしているんだ」
男はそわそわして落ち着きがなくなった。額からは汗が出てきて、呼吸も荒くなってきた。
「長い壁が見えるよ。そして、どこまでも果てがないんだ。でも、あの鍵を使えば、開けられるんだよ」
医師はこれ以上聞くと後戻りができないような感じがして、ここで質問をするのを止めた。男は帰り際、何かにとりつかれたようにこう言った。
「そしてそれはスリルがあるんだけれど、とても恐ろしいものなんだ…」
幻影の中へ ジャック @Anderson
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