第六章
カクイのピックアップが、這うような速度で洞窟を進む。タイヤが転がる岩や起伏を踏みしめるたび、ヘッドライトのビームが上下に揺れる。
「広いが、寂しい洞窟だな」
ハンドルをとるカクイが言った。
「洞窟に寂しいもクソもあるかよ」
リョーの声が荷台から聞こえてくる。案内役のティウが助手席に座っているため、リョーは荷台に乗るしかなかった。
「あるさ。これだけ深い洞窟に足を踏み込んでいるんだ、洞窟性の小動物と遭遇してもいい。コウモリとか……」
「コウモリ?」
ティウが怪訝な顔を向けてきた。
「僕らの星の動物だ。羽が生えてて、空を飛ぶ。昼間のうちは暗がりで休むんだ」
洞窟を進むこと二時間。カクイはすでに百以上の単語をティウに説明していた。聞き慣れない言葉はすぐさまその意味を尋ねてくる。そして納得すると、またリョー達を無視しているかのように黙り込むのだった。嫌悪する相手の知識をも吸収しようとするその好奇心は、敬服に値した。
カクイは疑問を感じていた。これだけ好奇心が感情を超越する生命体が、高度な文明を築けていないことに。協会の搾取という外圧はあるが、それはここ数十年のことだろう。何か別の外因があるはずだった。
「なあティウ」
ティウはカクイの呼びかけを黙殺している。だが、カクイは構わず続ける。
「僕はこれまでにかなりの言葉を教えた。一つか二つ、僕らにも何か教えて欲しいな」
「……案内をしているだろう」
「それは僕らを追い出すのと交換だ」
「…………」
「じゃあ第一の質問。なぜ君は僕らと話ができる?」
「私がお前達に伝えたいことをテレパシーで送り、お前達が伝えたいことを私が読み取っている。お前達の脳はテレパシーを受容する能力が無いから、私のテレパシーを『会話』として補完して認識しているに過ぎない」
「こうして話していることが、錯覚だっていうのか?」
「そうだ」
カクイは目を丸くして驚いた。目の前のティウの唇は確かに動いている。それが幻だというのだから。
「凄いな。論文の一つでも書けそうだ。……君らはみんなそうなのかい? それとも君が特別なのか」
「年が長じた者はみな発現する。今は私とソミカだけだ」
「さっきも言ってたが、誰だ。そのソミカってのは」
荷台からリョーの声が飛んでくる。
「…………」
「その……ソミカと、君は長老ってわけだね?」
「そうだ」
リョーは舌打ちをした。露骨に不愉快な雰囲気を醸し出している。タバコを取り出し、これ見よがしに煙をふかして見せた。
「君はその……。そんなに年を重ねている様子じゃないけど」
「肌が白い者は代謝が遅い。だから体が木質化するのも遅れる。先代もそうだった」
「もくしつか? 体が木になるのか?」
「我々は年をとると木になる」
「ゾッとするな」
リョーが素直な感想を呟く。それをティウは鼻で笑った。
「恐れることなど無い。森の『意識』は静かで、懐かしい。かつて世話になった者や別れた親しき者達と、再会できるのだぞ」
「なんでそんなこと分かる」
リョーは笑いを含んだ声で煽る。
「『意識』とテレパシーで交信することも、我々長老の役目だからだ」
「――確約された天国、か」
カクイは嘆息した。
「――カクイ」
「なんだ? リョー」
「外の匂いがする」
カクイはパワーウィンドウを開けた。確かに空気の匂いが変わっている。新緑の香りだ。出口が近いことを、リョーはいち早く察知したのだった。
無意識にカクイはアクセルを僅かに踏み込んでいた。エンジンの回転がわずかに高まる。
「おー……」
目の前に、青ざめた月光を取り込む穴がぽっかりと現れた。カクイはライトを落とし、ポジションランプのみを点灯させた。洞窟内にさし込むほど月の光が出ているのならライトはいらない。むしろ点灯することで、誰かの注意をひきたくはなかった。
タイヤが地面を踏みしめる音が、砂利や岩の音から落ち葉や枯れ木の音に切り替わる。
木の一本一本はさほど大きくはなく、三メートルを超えるものは少ないようだった。
「マングローブみてぇだな。あれよか根元がスッキリしてるが」
リョーは誰に言うとなく呟いた。
「……君の口からマングローブという言葉が出てくるとはな」
「東南アジアで行軍訓練をしたんだ。――昔の話だ」
ピックアップは再び這うような速度になった。カクイは木と木の間をソロソロと、車体をぶつけないようにハンドルを切る。
「これが全て、君らの祖先なのか」
「そうだ。特にこの辺りは最古の世代だ」
「最古って、どれくらい」
「お前達の時間換算で、六千五百万年程度だ」
「……地球に霊長類が現れた頃には、すでに君たちはこの星で生活していたのか」
ハンドルを握る手に力が入る。車を傷つける心配よりも、彼らの祖先に傷をつけたあとのしっぺ返しを恐れたのだ。
洞窟を抜けて一時間ほどたつと、森の際に到達した。木々の隙間には砂漠が広がっているのが見える。
カクイはピックアップを停めて、助手席のティウに礼を言った。
「ここまでありがとう。あとは僕らでいけるから」
だが、ティウは動かなかった。気の早いリョーが助手席のドアを開けると、微動だにしないティウを訝しんだ。
「おい、道案内は終わったんだ。降りろよ」
その時、蚊の羽音をさらに大きく、甲高くしたようなノイズが宵闇に響いた。リョーとカクイは思わず身構えたが、その音が遙か遠くから聞こえるものだと気づくのに時間はかからなかった。
「……銃声か?」
リョーはピックアップの天井へと駆け上り、あたりを見渡した。台地を背に、左側の砂丘の向こう側から銃声が連続して響いている。断続的に赤い瞬きも見えている。
「……我々のキャンプが襲われている」
ティウが呟くように言った。
「襲われているって……誰に?」
「あの光はコイルだな。――協会か」
「コイル?」
「COIL。化学酸素ヨウ素レーザーだ。安くて高威力」
「何をしているんだ……」
「奴らは同胞を捕らえては、奴らの拠点へと連れて行っている」
「何のために」
「搾取のために決まっているだろう!」
ティウの怒りに震えた声に、カクイはたじろいだ。
「……ちょっと行ってみようぜ」
リョーは天井から荷台へ降りると、手早く身支度を調えだした。
「何するんだ」
「搾取」
*
二十分後、ピックアップは砂丘の頂上に到着した。リョーとカクイは下車し、頂上に腹ばいになって眼下の戦闘を観察し始めた。
十人程度のスードゥ人が、五人の兵士によって追い立てられている。レーザーの閃光が荷物やテントに着弾するたび、火の手が上がる。何人かの体格の良いスードゥ人が食ってかかっていくが、重装備の兵士達に囲まれてたこ殴りにされる。
「惨い」
双眼鏡を覗いていたカクイは吐き捨てた。
「奴さん、五人だけか?」
「ああ……。いや、まて」
カクイは双眼鏡を、燃えさかるテントの風下へと向けた。そこには軍用のシャトルが着陸しており、傍らにはグレーの詰め襟を着込んだ男が佇んでいる。
「あれがリーダーか? 六人だな」
「よし」
リョーはライフルを構えた。いつの間にか望遠スコープが装着されている。
「まさか狙撃するのか」
「距離六百七十二。ヤニを切ってスローモーにすれば、連続射撃で六人同時に狩れる。あとはシャトルを奪ってサヨナラさ」
「待て。せめて、あの詰め襟は残せ」
「何でだよ」
「奴は人権侵害の尖兵だぞ。風体からして協会の知識階級だ。木星の当局に突き出せば、君の手柄になる。いずれにせよ邪険にはされないだろう」
「…………」
「何でも、手土産は持ってけば喜ばれる」
「無力化ってのが、一番ムズいって分かってるか?」
「出来るだろ?」
リョーは舌打ちをした。
改めてスコープを覗く。五人の兵士は捕らえたスードゥ人達をシャトルへ追い立てている。
心臓の鼓動が早くなる。耳鳴りが始まり、手足の痺れが体を遡る。もう実戦では三回目の体験だったが、口中が粘つくのだけは慣れなかった。舌を頬の内側の唾液腺に押しつけてなんとか唾を出そうとするが、粘つきが増すばかりだった。
スコープの中の景色が止まりだす。巻き上げられた火の粉が宙に静止する。
弾は真っ直ぐは飛ばない。基本的に放物線を描き、さらに重力によって下へ引きずられ、風によって横に流され、湿度によって飛距離が変化する。これに加えて気温や惑星の自転が与える影響も考慮し、照準をしなければならない。レンズには射手補助のためのインターフェイスが仕込まれており、前述の諸々の変数から導かれた照準点を勧めてくる。
だがリョーは、ポン付けしたスコープが返してくる数値を信用していない。データは確かに正しいかもしれないが、スコープ自体が真っ直ぐ標的を向いているとは限らないのだ。
リョーは引き金を引いた。同時に、彼は想像した。
銃機関部の撃針が弾の雷管を叩き、薬莢内の発射薬を燃焼させる。その時発生した運動エネルギーで銃弾が銃口から飛び出るのは、人間の尺度なら刹那の出来事である。
だが、今のリョーにはその刹那という時間はあまりにも長く感じられている。少なくとも、千分の一秒にまでスローダウンして感じられている。
銃身の中に充満したガスがピストンを駆動させ、ボルトキャリアを後退させる。ボルトキャリアは銃身に残った薬莢を引きずり出すと、イジェクターより薬莢を排出する。――全て一抱えの銃の中で、瞬きしているうちに行われる動作である。これが完了しないうちには、次の弾は発射されない。
リョーは肩に感じる反動を吟味しつつ、次なるターゲットへ銃口を移した。トリガーを引いた指をゆっくりと弛緩させると、トリガーは元の位置へと戻っていく。フッと、スコープを覗く右目の視界に、鈍い金色の物体が入った。薬莢が排出されたのだ。次の瞬間にはスプリングの力で、ボルトキャリアが銃身へ向かって突入しつつ次弾が装填される。
別の振動が肩を貫く。装填が完了し、第二射の準備が整ったという、愛銃からの合図だった。
二発目を放つ。同じように三発目を放つ頃には、最初の兵士の頭部が射貫かれていた。
状況によるが、確実に仕留めるには頭よりも、動脈など急所の集中している下腹を狙いたい。だがリョーの使用しているライフルは貫通力を重視している。ピックアップの荷台に鎮座する重機関銃の弾のような、体の何処に当たっても致命傷になるような弾丸ではないのだ。
一人目の頭の内容物が、弾の侵入した側と反対側へしぶくのが見える。そんな惨状が目の前で起きているのに、兵士達は微動だにしない。二人目が首を撃ち抜かれる。それでも、誰も逃げる素振りも見せない。注意が散漫になっているのもあるが、彼らの意識が事態を理解するのにはゼロコンマ秒の時間がかかるのだ。それはリョーにとって余りにも長かった。
五人目が左脇から銃弾を受けて心臓を貫通される頃に、やっと彼らは騒ぎ出した。スードゥ人達は頭を低くして散り散りになり、シャトルの側にいた蛇腹の詰め襟は機体にへばりついてうろたえていた。
スコープの中で、三人目が無傷で動いているのが見える。勘に頼った補正が間違っていたらしい。だがリョーはそれもリカバリ出来ると見込んで狙撃に踏み切っている。瞬時に照準を合わせて発砲し、しとめた。
詰め襟は這いずってシャトルへ逃げ込もうとしたが、両肩に銃弾を受けると甲高い叫び声を上げて転げ回る。逃走防止なら足を狙いたいが、大腿動脈の損傷は避けたかった。
「……ゲホッゲホッ。ああー……」
リョーは満足そうに紫煙をくゆらす。
「ナイスワーク」
「どうも」
リョー達はピックアップを走らせ、シャトルのかたわらでうめき声を上げる詰め襟の男の側につけた。
運転席からカクイが飛び出すと、すかさず銃創を診た。その時詰め襟の左胸にIDカードを見つける。血で染まってはいたが、ロアキンという名前が見えた。
「大丈夫そうか?」
「ああ。肩の骨が砕けているが」
カクイはペンシル型の注射器で鎮痛剤を投与する。止血パックをいくつか取り出し、銃創の中に押し込んで固定する。
「貴様ッ! 貴様らッ!」
痛みが遮断されたとたん、ロアキンという詰め襟の男の口から憎悪がついて出た。
「何だ貴様らはッ!」
「盗賊さァ」
リョーはタバコを、未だ燃えているテントへと放り込んだ。カクイはシャトルから担架を引っ張り出している。
「良いシャトルじゃん。もらうぜ」
「ふざけるなッ! 何をしているか分かってるのかァッ!」
「うるせぇな。カクイ、もっとキツい麻酔ねぇのか」
「昏睡は良くない。今みたいに、興奮しているほうがよほど安全だ。出血は増えるが。それよりシャトルへ車を入れてくれ。早くずらかろう」
「おう」
リョーは二本目をふかしだした。もはや制限する必要は無いのだ。血液のサンプルが手に入り、脱出手段も確保した。おまけに当局への手土産も出来た。
「――リョー」
呼び止められたリョーはびっくりして後ろを振り向いた。ティウだった。
「……なんだよ」
リョーは嫌な予感がした。
「その力を、私に貸せ」
「はァ?」
思わず咥えていたタバコを落とす。
「お前、人にモノ頼む態度か? ソレ」
「お前は強い。お前の力があれば、この星から地球人を一掃できる」
「急に便利グッズ扱いかよ。めんどくせぇ。お前の仕事は洞窟案内で終わってんだ。しかもお仲間まで助けてやった。貸し借り無しだ」
「私に力を貸せ」
「ハイハイ、また今度な。いつかは分からねぇが」
リョーは踵を返し、ピックアップへと向かおうとした。直後、彼はめまいを感じた。
「あ……?」
汗が噴き出てくる。いくらか吐き気も感じる。最初はニコチン切れかと思っていたが、途端に視界が薄暗くなった。もはや立っていられず、その場に崩れた。
「……? リョー!」
異変に気づいたカクイが駆け寄る。リョーを仰向けにすると、事態の異常さを察するのに時間はかからなかった。
「縮瞳? 徐脈? ……何をした!」
「力を貸すか?」
カクイはハンドガンを構えた。
「毒か? でなきゃ念力か? いずれにせよ、妙なことを今すぐやめろ!」
「私を殺せば、そいつは確実に死ぬ」
その時、空にエンジン音が響き渡る。カクイが見渡すと、先ほど狙撃をした砂丘の向こうから、大型のシャトルが接近していた。
「クソッ!」
悪態をつくと同時に、シャトルのカーゴからロアキンが笑いながら這い出てきた。
「ハハハハ! ざまあみろ! 応援を呼んだ! お前達は終わりだ! ハハハハ!」
カクイはリョーの両脇から胸へと腕を回し、シャトルまで引きずっていく。
「なんだ? なんの症状だ? ドーパミン亢進じゃないぞ」
リョーの顔色は青ざめ、呼吸も弱まっている。かなり危険な状態だった。だがゆっくり診断している時間は無い。おまけに敵が目前に迫っている。
「――銃をよこせ」
迷っているうちにリョーの意識が戻ったようだった。
「大丈夫なのか!」
「何が起こった……」
「分からん! 君が回復したのも見当がつかない」
カクイはハンドガンをリョーに押しつけるように渡した。
「協会の増援が迫ってる。僕はピックアップから血液サンプルを持ってくるから、君はなんとか発進準備をしろ」
「クソッ。やっぱり全員殺すべきだったろ」
「今更だ!」
カクイはシャトルのカーゴを飛び出した。その背中を見守ったリョーは銃の弾倉を確認して残弾を確認する。
体のコンディションがかなり悪い上、対応が遅れている。エンジン音からして、かなり武装されたシャトルらしい。リョーの脳裏に、かつて任務で陥った危機的状況がフラッシュバックする。経験からいって、万に一つも勝ち目が無い。
カクイがサンプルの保管コンテナと、リョーのライフルを持ってカーゴへ駆け込んでくる。そのすぐ後ろで閃光が瞬いた。発砲してきたのだ。
「持て!」
カクイはコンテナをリョーに託した。ライフルの残弾を確認する。
「何してんだ」
「応戦に決まってるだろ! ここで死ぬ気は無いからな!」
「良いからカーゴのハッチを閉めろよ。それで飛びたて」
何かが大気を裂く音が頭上を掠めると、シャトルを衝撃が襲った。
カクイはバランスを崩してカーゴの床へ転がった。焦げ臭い匂いがカーゴ内に広がった。
「……エンジンを吹っ飛ばされたみてぇだ」
「落ち着いている場合か!」
落ち着くというより、気力が抜けているようだった。ティウに何をされたのか、判然としない。そういえばと、リョーはカーゴの外を見渡した。ティウが居ない。
「あの糞アマはどこいった」
「知るか!」
カクイはカーゴの影から応戦を開始した。当然、効果は望めない。
「リョー! いつまでなまけてるつもりだ! しっかりしろ!」
頭の中がもやに突入したかのようにハッキリしない。視界が暗くなって物が見えづらく、呼吸も満足にできない。心臓に至っては、この緊急事態にもかかわらず低速運転を続けている。ヤニ切れとは明らかに違う体の変調に、リョーはなすすべも無くうなだれていた。
着陸した敵のシャトルからは兵士が二十人ばかり降りてきているのが、辛うじて見えた。
「ハハハハ! ハハハハ!」
ロアキンの高笑いがリョーの機嫌を逆なでする。だが撃ち殺す事も出来ない。たった五メートルの距離ですら、照準がつかないのだ。
その時、虚空から赤い閃光が彗星のように降り落ちた。
敵シャトルはコクピットを叩き潰され、前へつんのめってひしゃげる。さらに二つが直撃すると、シャトルは誘爆を起こして鉄くずと化した。その様子を見て、ロアキンは唖然とした。協会の二十人の兵士達は混乱を呈している。彼らは何が起こったのか把握しようとしたが、すぐに次の混乱が始まった。
兵士達が短い叫び声を上げて次々と倒れていく。青白いつららのような物が、心臓や首などの急所を串刺しにしていくのが見える。
砲声も銃声も聞こえない。二十人分の叫び声と怒声が、夜の砂漠にこだまする。
「グッ! がっ!」
急にロアキンが砂へ突っ伏す。
働かない頭でリョーは直感した。光学迷彩だ。――そう気づいた時にはすでに遅かった。
「銃を捨てろ」
廃墟で遭遇したあの声が頭ごなしに聞こえた。カクイは目の前で起きた急転直下の結末と、見えざる人物に戸惑っている様子だ。
リョーは逡巡したが、おとなしく銃を放り投げた。
「カクイ。銃を下ろしとけ」
「で、でも」
「下ろしとけ」
カクイは下唇をかみ、額に脂汗を浮かべて悩んだ。この先に何が起きるのか分からない。だが少なくとも、協会と敵対する組織らしいことは確かなようだった。それについてカクイは自分を納得させると、ライフルを地面へ置いた。
襲撃者は光学迷彩を解除した。驚くべき事に、少なく見ても三十人はいた。うち二人がロアキンを拘束している。そしてリョーの目の前には五人。襲撃者の一団は、みなフルフェイスの光学迷彩ヘルメットを被り、のっぺりとした光学迷彩スーツを着込んでいる。
「らしくないではないか。あの奮戦はどうした」
リョーを囲んでいる五人の間を割って、夕日のようなオレンジ色の髪と、白目のない黒い眼の女――ル・アが現れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます