第8話『王都ギルドと闇クエスト』

「シロー。おきてー! もう、

 お昼の時間になっちゃうなのー!」



目を覚ますと、銀髪金眼の幼女が

ベッドの上に横たわるシローの

瞳を覗き込んでいた。



間近で見るソフィアの肌は

まるで絹のように透き通って

いて白かった。


金色の目はまるできらきらと輝く

宝石のようであり、つややかな唇は

幼い容姿にも関わらず妙に妖艶である。


かすかに漂うココナッツの甘い香りと

爽やかな桃の香りが渾然一体となり、

とても心地の良い匂いであった。


日の光に照らされて煌めく銀髪は

とても美しく、まごうことなき、

その姿は天使そのものであった。



もちろんこの幼女は

この世界の魔王こと、ソフィアである。

そして、シローは……ロリコンである。



気を失っている間にソフィアが

着せ替えてくれたのだろうか、

寝間着に着替えさせられていた。


「俺、あれからどれくらい

 意識失っていたんだ?」


「半日ちょっとくらいなの。

 すやすやと宿屋のベットで

 気持ちよさそうに寝ていたなの」



(半日かー。それほど寝ていたわけ

 でもないのか。2日間徹夜した翌日

 とかは、丸一日寝てたもんなー)

 


「ソフィア。悪い。俺が意識を

 失ってからのことを教えてくれるか?」


「かいつまんで説明するなの。あのあと、

 シローが助けた冒険者の男の人がギルドに

 助けを求めにいったなの。


 そして、ほどなくしてギルドの職員さん

 たちが駆けつけてきて、あそこにいた

 人たちを連行していったなの。

 もちろん暴れないようにボクが

 麻痺と束縛の魔法を重ねがけしておいたなの」


「おおグッジョブ! ソフィア」


「ギルドの職員さんから、

 報奨金を渡したいから、

 今日中にギルド本部に

 顔を出してほしいって

 言われているくらいなの」


「そうか。それじゃあ、善は

 急げってことで、早速行くか」



シローは寝間着から冒険者風の

服装に着替え、宿屋の階段を降りる。



「あら! 冒険者のシローさんですね。

 ゆうべはおたのしみでしたね?」



宿屋のおかみさんである。

30代前半、髪はブロンド、

そして胸が大きい。

「なんか妙にエロいいな」

とシローは思った。



「いや、お恥ずかしながら

 普通にバタンキューでした」


「あはは。さっきのは、冗談ですよ! 

 詳しいことは知りませんが、

 シローさん昨日は大手柄だった

 そうじゃないですか! 担ぎ込んでくれた

 ギルドの人がそう言ってましたよ」


「えへへ……なんか照れますね。どうも」


「そうそう。昨日シローさんを

 担ぎ込んでくれたギルドの人

 から伝言があったんですよ」


「はぁ。なんでしょうね?」


「王都のギルドまでの、道順を

 教えてあげて欲しいとのことでした。

 なので、私の方でも簡単な地図を

 書いたんで、もしよければ使ってください」


「助かります! 昨日王都にきたばかりで

 右も左もわからないので。ありがとうございます!」


「いえいえ。では、シローさんとソフィアちゃん

 気をつけていってらしゃ~い」


笑顔でぶんぶんと両腕を振りながら見送る。

それと同時にぶるんぶるんと胸が大きく揺れる。

「エロいな」シローは思った。



「いってきまーす」


「いってくるなの!」



シローとソフィアは宿屋の

おかみさんからもらった

地図を片手に、ギルドを目指す。



「いやーやはり異世界は空気がうまい!

 空も青くて綺麗だ! 異世界最高!」


「ふふっ。シローの世界は青くなかったなの?」


「うーん。あんまり空を見上げるような

 こともなかったから、記憶が曖昧だけど 

 強いて言うなら灰色っぽかったかなぁ」


「灰色……なんか不景気でいやな感じなの」


シローはそう言ったあとに改めて考える。

灰色に見えていたのは

自分の心が灰色だったからではないかと。


ふと頭に浮かんだ転生前の東京の

空模様を頭からかき消すために、

顔を両手でパシンと叩き、気分を変える。


「シロー。急に顔叩いてどうしたなの?」


「ちょっとまだ眠気があるみたいで、

 目覚ましのために叩いてみた」


「ふふふっ。シローって結構お寝坊さんなの」


「ははっ。そーだな。俺はお寝坊さんなんだ」


二人は他愛のないない会話をしていると、

目の前に目的地が近づいてくる。

王都の冒険者ギルドである。


「おおっ! でっかいな」


「わー! おっきー! さすがは世界最大の

 ギルドと言われるだけのことはあるなの」



二人はギルドの門をくぐり、中に入る。



「どうも、こんにちは!

 冒険者のシローさんと、

 奴隷のソフィアさんですね!」



ギルドの女性職員が二人に声をかける。



「はい冒険者のシローです」


「はいなの。シローの奴隷のソフィアなの」



「ようこそいらっしゃいました。

 念のためにシローさんのギルドカードを

 見せてもらって良いですか?」



シローはギルドカードを職員の女性に手渡す。

ソフィアから貰った偽装ギルドカードである。



「はい、シローさんの確認が取れました! 

 それでは、ここではなく別室でお話を

 伺いたいのですがよろしいでしょうか?」


「もちろんです」


二人は女性職員の後ろについて歩く。

ギルドは王都でも珍しい5階建ての建物である。

その最上階の5階の応接室に案内される。



「それでは、シローさんとソフィアちゃん、

 ここで少し待っていてください。

 すぐにギルドマスターが参りますので」



そういって、応接室から女性職員は出ていく。



「わー。すごい立派な応接室なのー!」


「そうだな。ソファーもふかふかだ。

 テーブルもなんかピカピカしててすごい」


「凄いなの! 背表紙だけはかっこいい

 けど、中身が白紙のインテリア用の

 本が本棚にいっぱいあるなの!」


「あの、ニ○リとかのアンティークコーナー

 とかで売っている、本の背表紙だけ

 立派で中には何も書かれていない

 インテリアピール用の本がこの世界にもっ!」


「すごいなの!!」


「うん、すごいね!」



とりとめのないやりとりをしていると、

ドアの向こうから、一人の男が入ってくる。



その男は眼帯を着けた浅黒い肌の男であった。

年齢こそ50近いが屈強そうな体つきや

顔の細かい傷、浅黒い肌、からも

修羅場をくぐり抜けてきた、一流の

猛者であることがひと目で分かる容貌であった。



「おお! お前たちがマヨネーズ

 密造組織をぶっ倒したとかいう奴らか!」


「どうもはじめまして。

 冒険者のシローと申します」


「はじめまして。

 奴隷のソフィアなの」


「はは! あんまりかしこまらくいいんだよ!

 よろしくなシロー、ソフィアちゃん。

 俺の名前はギルダー。

 この王都のギルドのギルドマスターだ。


 親しみをこめて呼び捨てでギルって呼んでくれ!

 あと俺は敬語が苦手だから、お前たちも

 普段遣いの言葉で話してくれや!」


「ギル。改めてよろしく頼む」


「ギルさん。ボクもよろしくなの」


シローとソフィアは、ペコリと頭を下げる。


「んでだ! 良い情報と悪い情報がある。

 どちらから先に聞きたい?」


「それじゃ、良い話を先に頼む」


「まず、今回の報奨金は金貨100枚だ。

 この金はギルドからではなく、俺からの

 個人的な報奨金だ。遠慮なく受け取れ」


そう言って、ギルダーは金貨の入った

麻袋をシローにわたす。

ずしりとした重みを感じるほどの金貨だ。


「ギル。どうもありがとう。

 ギルドから正式にではなく、個人的に

 というのはどういう意味だ?」


「それは、悪い情報の方に関係するので後でな。

 まずはいい話の続きだ。シローの

 冒険者ランクをブロンズから、

 オリハルコンへ一気に昇格させてやる」


「ギル、ありがとう」


「感謝なんていらねーよっ!

 今後、お前達二人には難しい仕事を

 任せなきゃいけないことも増えるだろうから、

 その方が俺にとっても都合がいいってワケだッ」


「分かった。で、悪い方の情報というのは?」


「マヨネーズの密造組織が解体されたことで、

 それを実行したヤツを恨んでいる奴も多い。

 だから今回の手柄は、公式の発表では

 俺、ギルダーのものとさせてもらった。

 お前らは、俺の密命を受けて潜り込まされた

 ギルドの冒険者っていう話になっている」


「俺は名声を求めてる訳ではないので

 それでまったく構わないぞむしろ、

 危険な立場を肩代わりしてくれた

 ことを感謝している。ありがとう、ギル」


「おー。欲がないねぇ。んでもう一つ

 お願いだ。あそこに、『戦士の孫』

 センシーが居たことはお前達だけの

 秘密、つまり墓場まで持って行って欲しい。

 まぁもっとも、言ったとしても

 誰も信じないだろうけどな!」


そう言い、ギルダーは豪快に

がははと笑う。

 

「どういうことだ?」


「つまりはだ。元勇者パーティーの子孫が、

 闇社会のドンだったって知られることで、

 都合が悪いやつが多いってことだ。

 ましてや、その英雄様の子孫が殺された

 なんてなるとシャレにならねーことになる」


「なるほど。分かった」


「まぁ。正直、あの一件は俺も驚いたんだぜ?

 まさか王都の門番をしている奴があの

 勇者パーティーの仲間の戦士の孫だなんて

 誰も思わねぇし、更には闇社会のドンだったなんてなぁ。

 ギルドマスターの俺ですら驚いたもんさぁ」



ギルダーは、一人目をつぶってウンウンと

うなずくと、改めて言葉を続ける。



「それとだ。ソフィアちゃんは本当は

 奴隷じゃなくて、凄腕の魔法使い

 とかなんだろう?」


「どうしてそれを?」


「まぁ。長年ギルドマスターやってりゃわかるさ。

 人体を傷つけないように調節して麻痺や

 束縛の魔法を使えるやつなんてのは、

 相当優秀な魔法使いくらいだってこたぁな」



「…………」



「ははっ! 難しい顔すんなや! 嬢ちゃんも、

 前科持ちかなんかワケアリで身分を隠さなきゃ

 いけないような事情があるんだろ?

 無理に詮索するつもりはねぇさ」



「……なの」



「こまけーことは聞かねぇさ。冒険者なんて

 命知らずの仕事を好んでする奴はそんな

 ワケアリのゴロツキばかりさぁ。

 だから俺たちゃあこまけぇことは気にしねーし、

 他人様の過去について詮索するのはご法度なんだよ。

 重要なのはなぁ、使えるか使えねぇかだけだ」



「なるほど」



「それでだ! そんなワケアリで凄腕の二人に

 ギルドでは正式にクエスト依頼ができない

 『闇クエスト』をお願いしたいんだが興味はあるかい?」



「報酬と内容次第だ。興味はあるが、無実の人を

 殺めるとかだったら、先に断っておく」


「はは。シロー。面白い奴だな。安心しろ

 『闇クエスト』と言っても暗殺とかじゃあねぇ。

 人助けだ。いや……ケモノ助けなのか?」



「ケモノ助け?」



「それじゃあ、クエストを依頼しよう。

 永世中立地帯メメントの森に居る、

 ある獣人を助けて欲しい」

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