第4話『そうだ 王都、行こう!』

「とは言っても具体的には何をやるなの?」


「そうだな。まずはヤルダバ王都に潜伏して

 この国の実情を知るところから始めたい。

 現地視察というやつだな」


「なるほど。でもシローはともかくボクが

 何者か聞かれたらどう答えればいいか

 悩ましいなの……」


「ソフィアは俺が購入した奴隷ということに

 すれば、不自然に思われないんじゃないか?

 首にゴツい首輪とかしてるし」


「むむ……。正直、魔王として奴隷を名乗る事は

 少しだけ思うところが無いわけじゃないなの。

 だけど、バレたら大変なことになるから、

 今回はシローの案にのっかるなの」


「理解が早くて助かる」


「それに王都の現状を知りたいというのは

 シローだけじゃなくボクも同じなの。

 伝聞で王都の様子を今までも聞いてはいたけど、

 実際に見にいったことはなかったなの」


「そりゃまあ……魔王だからな

 あんまり簡単に外にも出れないだろうからな」


「基本、魔王は引きこもりなの」


「以前もちょっとだけ質問したが、ソフィアは

 魔王城に戻らなくて大丈夫なのか?」


「影武者がボクの代わりで魔王をしているか大丈夫なの」


「影武者ね。バレないもんか?」


「影武者の擬態スキルは四天王以上だから大丈夫なの。

 それにこと内政に関していえば遥かにボクより

 優秀なの。だから戦争でも無い限りはボクが 

 いなくても不自由することなく回っていくなの」


「なるほどね。人には得手不得手はあるからな。

 餅は餅屋に任せた法が良いのは同意だ」


シローは、うんうんとうなずきながら納得する。



シローが転生前に派遣されていた

勤め先には『システム情報部門』という、

社内のコンピューターを一手に管理する

部門があったのだが、


社内システムのクラウド化にともなう

情報システム部門の機能の社外への

委託化の影響を受け、20年勤めていた

優秀なベテラン社員が、急遽いままで

未経験の営業に回され、慣れない仕事と

上司からの罵倒でメンタルを壊し、

退職したという事件があった。


やはり、優秀な社員とはいえ、向き不向き

があり、慣れない仕事を押し付けられれば、

パフォーマンスを発揮できないのだと理解した。

人材の適材適所は重要である。


そういった観点ではソフィアの言っている事は正しい。

ロリとは言え、さすが一国の王を務めているだけの

ことはあるなと、シローは思った。



なお、情報システム部門の優秀な社員は

風のうわさでは、その後首吊り自殺をしたそうだ。


『風のうわさ』というようも、具体的には

シローのデスクの近くの席の女性社員が

大声で笑いながら話していたのだが……。


ツイッ○ーで死後に親族から死亡の報告があった

ことから、知ったようだ。わざわざ元同僚の

ツイッ○ーを覗いているとか、いったいどういう

神経をしているんだと憤慨したものだ。



「シロー。大丈夫なの? 

 とっても辛そうな顔しているけど……

 辛いなら無理せずゆっくり休んでもいいなの」


「おおっ…! すまん。ちょっとぼーっとしてた

 そうそう。王都の潜伏の話だが、この世界には

 身分証明書とかあるか? 王都で潜伏する際に

 提出を求められたらツムからな」



「身分を証明するものなら、

 ギルドカードならあるなの」


「うーん。ギルド登録すると勇者とか

 バレそうで面倒くさいなぁ……」


「ボクの分の偽装ギルドカードをあげるなの。

 物造りを司る、魔王四天王の一人が作った

 超特別な偽装ギルドカード。だから

 バレることは無いなの。シローの設定は

 『冒険者』にしておくなの」


「助かる。ありがとう。でも、俺に渡したら

 ソフィアの分がなくなるんじゃないか?」


「ボクの分の偽装ギルドカードは必要ないなの」


「必要ないって?」


「……奴隷はモノとして扱われているなの。

 そもそもギルド登録はできないし、

 身分を証明するものは無いし不要なの」

 

「モノとして扱われるか。やっぱ、転生前の俺って

 奴隷だったんだなぁ。身分証明書はあったけど

 消耗品として使い潰されて過労死したから。

 使う側の人間からは俺はモノに見えたのかもな」


「意外なの……。過去の勇者達の記録を読むと

 ボクたちの世界は『未開なちゅーせーなーろっぱ』

 と侮蔑していたという記録はあったのだけど、

 シロー達の世界にも奴隷制度みたいなのは

 存在していたなの」


「奴隷という名前ではなかったけど。実務的に

 同じような身分はあったよ。奴隷というパッケージの

 名前を代わりに別のモノにしただけで、本質は同じだ」


「よしよし。シローはとってもとっても

 がんばり屋のえらいさんなの」



つま先立ちをしながら背伸びをして、

シローの頭を撫でようとしてくる130cmの幼女。

身長180cmの大柄なシローは地面にひざまずく。


生前は、その努力が報われることはなかったが

ソフィアに頭を撫でられている時だけは、

報われたような気分になれたのであった。



「でも、それにしてもこの首輪はちょっと不格好なの

 もうちょっとかわいい感じのだったら良かったなの」


「似合っているから良いんじゃない? 

 俺はその首輪かわいいと思うぞ!

 ロリにゴツい首輪というアンバランス

 感が、なんというかグッとくる」


「つまり、それってどういうことなの?」


「一言で言うなら、かわいいって

 いうことだ! ベリープリチー!」


「そこまで褒められると、さすがに照れるなの。

 でも、ありがとうなのシロー。

 ちょっとむれるけどアクセサリーと思って我慢するなの」


「結婚指輪とかも外さない人は

 死ぬまで外さないらしいからその

 首輪もきっとしばらくしたら慣れるよ」


「うーん。仕方ないから我慢するなの」


ソフィアもシローに褒められたことが

まんざらではないらしく、少し赤面しながら

前髪のさきっちょを指先でパスタを

絡めるかのようにくるりくるりと回している。


「そういえば、ここからヤルダバ王都と

 まではどれくらいの距離があるんだ?」


「徒歩なら3日間程度なの」


「魔法で飛んでいくこととかは可能か?」


「それは可能なの。だけど、最上位の不可視化の

 魔法を使ってもかなり目立つからできれば

 やめておいた方が良いと思うなの」


「悪目立ちするのは避けたいな。

 よし地道に徒歩で行こうか」


「その方が無難なの。それに、シローは

 勇者と言ってもLV1で今のままだと

 危険なの。王都につくまでの間に

 ボクがレベリングしてあげるなの」


「さす魔王!」


「さすまお?」


「超ラブリーなソフィアさん最高ですって意味だよ。

 それにしてもパワーレベリングは助かる!

 ソフィア先輩! よろしくおなしゃすっ!」


「えっへん。まかせるなのよ! 

 それじゃー。道中のモンスターは

 隠匿魔法をかけた状態でボクの

 超広範囲魔法で倒しながら王都へ進むなの」


「生態系や地図をぬり変えない

 程度の破壊でおなしゃす!」


「りょーかいなの。王都へれっつごーなの!」

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