第3話『盗賊団をぶっ潰そう!』

ソフィアと、シローは勇者召喚の

行われていた洞窟を抜け出し外に出る。



曇り一つない澄み渡った青空、

草花の香りをかすかに感じられる

涼やかな風。シローは感動していた。



「青い空! 鮮やかに生い茂った草原! 

 空気もうまいっ! 味がする!

 やっぱ異世界ってこうじゃなくちゃなー! 

 これぞ俺の憧れていたザ・異世界!」 


「ただの草原なのにそこまで喜んで

 もらえるのはこの世界の魔王として

 素直に嬉しいなの!」


「そんなもんか?」


「そんなもんなの。そういうシローだって、

 自分の転生前の世界を褒められたら

 嬉しいでしょ?」


「いや、俺は……特にそういうのはないかな。

 転生前は多分この世界で言うところの

 奴隷階級だったせいもあるけどさ。


 正直、前の世界ではしんどいことや

 辛い思い出の方が多かったからなぁ

 やっぱ最高だよ。異世界!」


「シローは転生前は奴隷だったなの。

 シロー転生前はとっても苦労したなの

 よしよしなの。シローはとっても

 えらいさんなの」



130cmのソフィアが背伸びをしてシローの

頭をなでようと頑張っているのをみて、

シローは地面にひざまずく形で頭をなでられる。



(うぅ……なんだろ。目頭から熱いものが

 こぼれ落ちそうだ。報われなかったけど、

 俺なりに転生前もがんばってたんだよな)



シローは、ソフィアに気づかれないように、

瞳から自然に流れ落ちようとしてくる

汗を服の袖で拭う。

さすがは、ロリとはいえ魔族を率いる魔王。

器が大きい。



シローがソフィアの小さな手のひらで

頭頂部を撫でられ、余韻に浸っているところに、

物陰に隠れていた盗賊の群れが現れる。



(いまいいところだったのにっ!

 ……空気の読めない盗賊め!)



盗賊を率いるボスは、スカウターのような

形状の片目にだけかける眼鏡を装着していた。



盗賊の頭領のような男がシローに向けて言い放つ。



「オレ様は盗賊団の頭、トゾーク!

 きーっひっっひ。 ハズレ勇者!

 おめーに恨みはねーけどここで死ぬでヤンス」



「ハズレ勇者? 一体なんのことだ」



「ひーっはっはっは! オレ様は、

 冥土の土産に答えを教えてやるほどの

 お人好しではねーざんす。

 ハズレ勇者はおとなしくここで

 死ぬでヤンス!」



盗賊は言葉を言い切る前に駆け出し、抜剣。

身なりこそいかにも盗賊といった姿であるが、

かなりの手練れ。


この世界の上位職のアサシンに匹敵する

かなりの腕の持ち主である。


 


「風の精霊よ契約に従い我が主を守れ! 

 エア・プロテクション!」



 シローの首を一撃のもとに切り下ろさんとする、

 盗賊の頭の高速の一閃は、不可視の

 魔法の壁にはばまれる。



「ソフィア助かった! 危うく殺されていたところだった。

 まさに首の皮一枚というやつだ。

 それにしても、この盗賊野郎、恐ろしく速いっ!」



「シロー。ただの盗賊じゃない……。

 こいつ外見と違って相当な手練れなの」



シローも女神からの転生特典で身体能力を大幅に

強化されている。


この世界でも十分に戦っていけるだけの力を

持っているにも関わらず、盗賊の頭を名乗る

この男の攻撃を目で追うのがギリギリ。

つまり、かなりの格上の相手ということである。



(コイツ……勇者の俺よりも明らかに強い!)



「ひっひっひ。風属性の魔法障壁でヤンスか!

 やっかいな魔法を使う奴隷でヤンスね」



「無礼なり、我が名を聞いて恐れおののけ!

 我れは魔王。魔族の王にして、四天王を

 率いる王である! 下賤なる人の子よ、

 我に刃を向けるということは、魔族に

 弓引くも同等の行いであると知りたまへ!」



「えーっと……でヤンスね。言いたくないけど、

 布面積が、乳首と股間にしかないような

 痴女幼女奴隷がなにを言っているんでヤンスか?

 それは、何かのプレイでやんすか?」



盗賊のボスを名乗る男は困惑した表情で

ソフィアに向かって告げる。



「えぇい。面倒でヤンス。岩陰に隠れている

 野郎ども! 殺るでヤンス!!」



目の前の男は、後方に控えていた

他の盗賊に加勢するように指示する。


岩陰に隠れていた、数十にもおよぶ

盗賊たちがゾロゾロとあらわれる。




「思ったより大勢隠れてやがった。

 どうするソフィア?」



「この程度の数は物の数ではないなの!

 雷の精霊よ我が契約に従い仇なす敵を貫け! 

 マルチプル・サンダースピアー!」


 ソフィアの前面の空間に三十を越える

 黄色の魔法陣が浮かび上がり、

 その魔法陣から雷の槍が現出射出される。


 

 盗賊達の胸をピンポイントに射貫く。

 出力を最小限に絞った不殺の一撃。



「ワァーーー!!!」

「ガアアァァァッ」

「ギャーーーーッ」

「ギィヤァァァッ」

「ニャアアアン!!」



ソフィアの雷の槍に胸を貫かれた

盗賊たちから叫び声が上がる。



「ソフィアさん。マジ魔王」


「えっへん! ボクは魔王、

 これくらいできて当然なの!」



ドヤ顔で平らな胸を張る。

130cm銀髪、金色の目の幼女。


外見だけみたらただの痴女風魔王

のコスプレを着た幼女だ。



「こいつら死んだのか?」


「殺してはいないなの。ただ1ヶ月くらいは

 ベットで静養していないといけない程度の

 ダメージは加えておいたなの」


「ソフィアは優しいんだな」


「シローはボクが魔王のくせに

 甘いっ思ってるんでしょ?」


「正直言うと、そうだな。意外と言えば意外だ」


「魔王たる地位にあるものが無闇に人の子の

 命を奪うのは、矜持に反することなの」


「ノブレス・オブリージュというやつか

 高い身分にいるものの義務っつー奴」


「ノブレスなんとかって、言葉は知らないけど、

 魔族は高い地位や身分にいるものは人々の

 模範たれという考えがあるなの。


 もっとも、今や古臭いカビの

 生えた考えだって馬鹿にする人もいるけど

 大事な理念だとボクは思うなの」


「それは、魔族の法なのか?」


「それは明文化された法ではないなの。

 強いて言うなら魔族の王としての意地。

 みたいなものなの」


「なるほど。うまく言えないけど

 人間そういう明文化されていない、

 矜持みたいなのを守らないと

 どこまでも悪くなれるからな」


「悲しいけど。そうなの」


「んで、そんないい話をしているところ

 なんだがこの盗賊たち追い剥ぎしていい?」


「それは、この世界では合法だから大丈夫なの。

 盗賊はパンツ以外は身ぐるみ

 剥がしてオールオッケーなの」


「まぁ。命まで奪おうとしてきた

 盗賊なんだから因果応報ってやつだよな」



シローは気絶していた盗賊のボスの

身ぐるみを剥がし、ボスが持っていた、

切れ味の良さそうなワザモノの短剣は回収した。



あとは、盗賊団のパンツ以外の全身の身ぐるみをはぎ

ソレ以外の武器や防具は全てソフィア

の火炎魔法で焼却させた。



あとは女神から与えられた勇者風の服はあまりにも、

この世界では目立ちすぎる服装なので、

猫のような叫び声をあげていた盗賊に着せておいた。




シローは、盗賊の頭領が来ていた服を着、

痴女風魔王ルックが目立ちすぎるソフィアには

盗賊が着ていたマントを羽織らせた。



「ソフィア。この盗賊のボスみたいなやつが

 金貨袋をもってたんだけど、どれくらいの

 価値があるかわかるか?」


「盗賊とは思えないくらいの金貨なの。

 どこでこんな金貨を稼いだのか怪しいなの」


「どれくらいの金額なの?」


「王都の貴族街に一軒家を建てられ

 るくらいの金貨なの」


「そりゃ凄い。六本木ヒルズの億ションに

 住むことができるくらいの金という事か」


「億ションとやらは知らないけど、多分

 ニュアンス的にそう間違ってはいないと思うなの」


「それとこんな巻物みたいなのがあったんだけど、

 暗号文字で読めない。ソフィア代わりに読んでもらえるか?」


「……っ!! これ古代ルーン文字で書かれた契約書なの」


「珍しい文字なのか?」


「太古の昔に使われていた文字なの。

 現在は王族しか使えない文字のはずなの。

 ご丁寧に、王族しか使えない封蝋まで押されている」


「そのルーン文字で何って書いてある」


「ハズレ勇者はその場で殺せって書いてあるなの」


「勇者を殺す? 召喚しておいてなんでだ」


「この世界に勇者は一人までしか許されないなの。

 だけど、勇者が死ねば再召喚することはできる

 だからハズレ勇者は殺せっていうことらしいなの

 もう一度新しい勇者を生贄召喚するために……」


「なんだそれ。勇者リセマラかよ。

 一体人の命をなんだと思ってんだ」


「レアリティーの高い『当たり勇者』が出るまで

 勇者召喚は終わらないなの。狂っているなの」


「それにしても、一体当たりとハズレって

 どうやって見分けてるんだ?」


「その盗賊のボスが持っている、モノグラスで

 覗くとレアリティーが見えると、このルーン文字

 の巻物には書かれているなの。

 試しにボクもかけてみるなの」


「ああ……。あの盗賊の頭領が掛けてた、

 スカウター風の眼鏡のことか。

 ところで、ソフィアさん……俺のレアリティーは?」


「の、……のーこめんとなの」


「あっはい。ソフィアさんの

 リアクションでわかりました。だから

 俺は勇者なのにいきなり命を

 狙われたってわけですね。

 ソフィア、気遣いありがとね」


「シロー。強く生きるなの」


ソフィアがシローの背中をさすって励ます。


「ところで、シローはこれからどうするつもりなの?」


「そうだな……。おっし!――俺は決めた!」


「何を決めたなの?」


「俺は――この世界をぶっ壊す!」


「へっ? この世界をぶっ壊すってどういうことなの?」


「この世界の腐りきった部分をぶっ壊す!

 そして、俺が転生前にいた世界のように

 不幸な者が生まれるような世界にならないよう

 ソフィアと一緒にこの世界を再建する!

 改めて手を貸してくれるか、ソフィア?」


シローは、ソフィアに右手を差し伸べる。

そのシローの右手をソフィアの幼い

手のひらがギュッと握りしめる。


「もちろんなの! 二人でこの世界を建て直すなの!」

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