第2話『転生勇者とロリ魔王!』

転生2分後には魔王ソフィアは

シローの『隷属』の能力により、

強制的に支配下におかれていた。



転生部屋の女神から授けられた一回だけ

しか使えないという制約付きの

『隷属の水晶玉』の力である。



魔王ソフィアは、首に巻き付いた

錠前付きの鉄の首輪を外そうとこころみる。


ソフィアは焦りのためか、

頬から汗をたれている。



「我が契約に応じこの世すべての魔なる法を

 破却せよ! ブレイク・スペル!」



魔王としての全魔力をこめた

解呪の魔法を首輪に叩きつける。



大気が震えるほどの圧倒的な魔力。

これがレベル999の魔王の力。



だが――。



「しょっ、しょんな……ばか……にゃ。

 この首輪っ! 魔王の全力を

 注いでもハズせない……なの」



シローの目の前で銀髪幼女こと

魔王ソフィアは地べたに体育座りで、


地面の砂をいじりながらいじけている。

魔王とは思えない姿。


どちらかというと、その姿は

ママにおもちゃを買ってもらえなくて

いじけている小学生のようである。




(いじけている姿もかわいい! 

 好きだ……!)




容姿はロリと言えどもソフィアは本物の魔王だ。

もちろん魔王とは勇者の天敵であり、

この世界に恐怖をもたらす四天王を率いる

あの魔族の王のことである。



(うわぁ。ガチでへこんじゃってるじゃん

 ……かわいい、じゃなかった、かわいそう)



シローは、あまりの気まずい

沈黙に耐えきれず口を開く。



「あのー。大丈夫っすか、魔王ソフィアさん?」


「みてのとーり! ぜーんぜんっ大丈夫じゃないなの!

 はやくこの首輪ハズして! 全然取れないなの!

 何でもするからおねがいなの!」



「あー……本当、ごめん。『隷属』は一度能力が発動すると

 俺でも解除できない類の能力みたいだ。

 だから解呪は無理だ。それに一度しか使えない能力だったから、

 すでに『隷属』は俺の手からも離れて、自律的に機能している」



「ひどいなの! 変態! ロリコン! 勇者!」



(前半の2つはともかく、勇者って魔族の中では蔑称なのか?

 それに残念ながら、3つの言葉は全部事実を指摘

 されているだけだから侮辱になってないんだよなぁ……)



涙で目をうるませながら、幼女が抗議する。

その金色の瞳には涙がたまっていた。



「それにボクの考えていた予定とぜんぜん違うなの!

 これじゃあ、四天王や部下にあわせる顔がないなの」



「お気の毒にとしか言えないっす。ド、ドンマイ」



「ひどいなの!」



「でも魔王ソフィアさんも、悪くないっすか?

 だってこの死体の山、魔王さんがヤッちゃっ

 たんでしょ? こりゃエグすぎですよ?」



「コレは違うなの。ボクはこんな恐ろしくて

 残酷な事はしないなの! ここにいる人達は

 ボクが来た時には全員自害していたなの!


 その人達は、勇者を召喚するために犠牲になった

 生贄召喚のための犠牲者たちなの」



シローは周囲に散らばる死体に近づき、

その首元を覗き込む。死体には、なんらかの

儀式めいたナイフが突き立てられていた。



「うーん。こりゃ確かに自殺……だね

 よくよく死体を見たら、片手に

 儀式用ぽいナイフ握ってるもんな」



「あたりまえなの! 無益な殺生は、

 魔王としての格を落とすものなの」



(……どうやら魔王ソフィアは、

 嘘を言っている感じじゃなさそうだ

 すげー必死そうだもんなぁ)



「本当は、この人達が犠牲になるまえに……。

 ボクは生贄の勇者召喚のの儀式が行われる前に

 止めたかったのだけど、一足遅かったなの。

 完全にボクの失態なの……」



「異世界からの勇者召喚のためには

 絶対に生贄が必要なのか?」



「生贄が必要なの。異世界から勇者を

 召喚するためには、その勇者の魂に

 見合うだけの膨大なこの世界の

 人間の魂を捧げる必要があるなの」



「なんというか。酷い……話だな」



「ボクは、その情報を極秘裏に手に入れたから

 魔王の国から、人間族の国に単身で

 やってきたなの」



「でもさ、俺殺されかけて

 なかったっけ……?」



「本当は、束縛の魔法で拘束したまま、

 ボクの国に連れ帰る予定だったなの。

 

 もちろん異世界からの転生者は危険だから

 不自由はさせることになるけど、

 殺すつもりはなかったなの!」



「なるほど。言いたいことは分かった。

 ところで、ソフィアは異世界転生の

 システムのことをどこまで知ってる?」



「転生システムは、異世界から生贄と

 "タリスマン"と呼ばれる銀色のコインを

 ささげることで勇者を召喚する儀式。


 ただ、召喚される勇者は完全に

 女神の気まぐれ……つまりランダムで

 選定される。


 ボクが知っている情報はこの程度なの」



「銀色のコインと生贄を捧げることで、

 女神の気まぐれでランダム召喚。


 まるでガチャだな。金じゃなくて

 人の命で召喚するというのは最悪に

 悪趣味だが……」



「うん、ガチャ? とやらは何かは知らないけど

 その理解でおおむねあっているなの。


 勇者はボクたち魔族の宿敵であり、

 ボクの祖父を殺した仇でもあるなの」



「ぼく悪い勇者じゃないよ!」



「お前がなんとなく、人が良さそうなのは

 伝わってくるけど、それでもやっぱり

 異世界出身というだけで、

 

 この世界にとっては危険なの。

 きっと悪意なく、過去の勇者とそう

 変わらないと、災厄をもたらすなの」




「悪意なく災厄をもたらす?」



「そう。過去の異世界転生者が、

 持ち込んだ異世界文明とやらの

 せいで魔族だけじゃなく人間達も

 破滅の一途を辿っているなの」


「たとえば?」


「まず、ヤルダバ王都のマヨネーズ汚染。

 マヨネーズは依存性が強くて、

 これは中毒者続出でとっても深刻なの

 マヨネーズ中毒者の中には、自分の子供を

 奴隷商に売る愚か者まででる始末」



「ヤク中かよ。マヨネーズのために

 自分の子供を奴隷商に売るとか

 異世界にもクズはいるんだな」



「あとは黒色火薬。これが普及したことで、

 貧困層のテロが増加したなの。一定の

 修練を積まないと習得できない魔法と違って

 黒色火薬は素材さえあれば簡単に

 作れるからとっても危険なの」



「剣と魔法の中世ヨーロッパの世界に、

 文明の進化の段階を何段も飛ばして

 黒色火薬を広めるのは無謀だったか」



「とっても危険なの。他にもいろいろあるけど、

 まずはここを出るなの……。


 長い話になるから、まずはこの洞窟を

 出ようなの。ここは、血と脂の匂いが

 立ち込めていて……気分が悪くなるなの」



「そうだな。俺もこの異臭は耐え難い

 新鮮な空気を吸うためにも 

 まずは外に出ようか」



 シローとソフィアは召喚の間をあとにして、

 洞窟の出口を目指す。



「あのさ」



「なんなの。勇者」



「ソフィア。俺のことはシローと

 呼んでくれるないか?

 これから長い付き合いになりそうだしな」



「ふん。ボクは魔王、敵対する勇者に

 対しては『お前』で十分なのっ! 

 って! ぎにやぁああああああぁっ!」



まるで素手で電線に触ったかのように

ソフィアの全身に電撃が走り、

全身を痙攣させる。



(うわあ……。『隷属』の能力っえぐいな……

 しかも俺の意思関係なしに自動発動かよ……)



「おい……ソフィア、大丈夫か? 

 なんかすげー苦しそうだったけど」



「はぁはぁ……なんとか、大丈夫なの

 これが、勇者の能力。恐るべしなの」



「なんか……悪いな。この『隷属』の能力、

 俺の意思と関係なく発動する能力みたいなんだよ」



「解呪しようとした時に調べたからわかっているなの。

 そこは責めるつもりはないなの。この能力は、

 能力の使用者に危害を加えることや意思に

 そぐわぬ行動をした時に自動的に発動する能力なの」



シローは握手を求めるために右手を差し出す。

ソフィアは照れくさそうに左手を出すか、

出すまいか悩んでいる。


その手をぐいっと引っ張り、

シローは無理やりソフィアの手を握る。



「改めて、これからよろしくな。ソフィア」



「よ……よろしくなの。シロー」



「こちらこそ。ソフィア」



「はぁ……四天王たちの言う通り魔王城に

 引きこもっていたほうが良かったみたいなの。


 魔王城にはボクより内政実務に関しては有能な

 影武者をおいているからしばらくはバレないと

 思うけど、バレたら大騒ぎになるなの」



「そんなに幼い頃から国や部下のころを

 考えなきゃいけないなんて、魔王って

 いうのも大変なんだな……。種族が違うから

 間違ってたらゴメンだけど、10歳くらい?」



「見た目で判断してもらったら

 困るなのボク、もう成人済みなの」



「えっ、まさかソフィアさん

 ロリババアとかですか?」


「ロリババア……。まったく!

 シローはデリカシーがないなの。

 ボクは今日で13さ……18歳。

 せ……っ成人済みなの!」



「18歳! お誕生日おめでとう! 

 ソフィアちゃん」



ムツゴロウさんのような、満面の笑みで

シローが告げる。



(うわぁ……この勇者。ロリコンの人だ)



シローは前歯を輝かせながら、

満面のムツゴロウスマイルで

ソフィアを舐め回すように見つめる。



転生時の女神特典で18歳の凛々しい少年の

顔のはずだが、このときのシローの顔は

転生前の二次エロを見つめってにやけている

時のシローの顔そのものであった。



(やったぜ! ロリなのに成人、つまり合法!

 やはり異世界とはいえども性に関する遵法精神

 だけは大事にしていかなきゃいけないからな。


 日本の警察は優秀だから条例に違反すると

 異世界まで取締に来だしかねないからなっ!)



そんなこんな話していると、

前方から光が差し込んでくる。



「おっ。明かりが見えてきたな。

 そろそろ、出口か」



徐々に洞窟内に、外から入る光が増してきていた。



魔王ソフィアと勇者シローは、

もう少し歩けば洞窟の

外に出られるとこまできていた。

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