レベル999のロリ魔王とすばやさ極振り勇者が異世界再建!

くま猫

第1話『魔王が仲間になった!』

『おめでとうございます、シロー。

 魔王ソフィアの【隷属】に成功しました』



「「ええええぇええええっっ!!」」



転生してから2分で転生者シローは

この世界最強の魔王を仲間にすることに

成功したのであった。



時は今から2分前にさかのぼる。



・・・・・・・・・


・・・・・・


・・・



「ふははははは! 我は魔王ソフィア

 転生勇者を屠るものなりっ!!」



過労死で転生したシローが

最初に目にしたのは死体の山と


傍らに立つ銀髪金眼の

痴女風ルックの幼女魔王であった。



見た目こそ幼女だがそのレベルは999。

四天王を従える世界最強の存在である。


この世界のAランク冒険者の

平均レベルが10なのに対し、

魔王配下の四天王のレベルは以下の通りである。



魔眼の凶星エンキ :レベル135

国堕としカラカル :レベル180

混沌遣いアルケオ :レベル213

『影』ハルマロク :レベル333



四天王とは、一人だけで小国を陥落させる

ことができるほどの実力をもった強者達である。


『影』に至っては四天王の座に有りながら

その姿を表したことのない謎の存在だ。


だが……レベル999の魔王ソフィアは

そんな四天王が束になってかかっても

決して、敵わない強者なのだ。



転生して間もないシローですら

幼女の発するオーラだけで



(あっ、やべっ。これマジ無理ゲーだ

 転生3秒で既に詰んでるのだが?)



そう悟らせるのに

十分過ぎるオーラを放っていた。


この今まさに絶賛死の危機に

瀕している男の名はシロー。

日本からの異世界転生者だ。



シローは明確な死をもたらす存在を前にして、

いままでの人生が走馬灯のように

脳内に駆け巡っていた。




………シローの頭の中の走馬灯、

シローの人生を記録した映写機が回り始める。

今際の際の、彼の人生の記録の振り返りである。


シローの脳内のスクリーンに彼の

人生が映し出される。まずは自己紹介からだ。



シローは転生前は派遣会社に勤める

38歳の独身男性。趣味はソシャゲと

ラノベ乱読である。


基本的にラノベは人気作であれば

ジャンルを問わず読むが、

異世界ファンタジーは特に好きなジャンルである。



性欲に関してはもっぱらパソコンに

ため込んだ銀髪ロリ幼女の

無修正二次エロ画像で発散する

至って健全な成年男子だ。



なおエロについては動画よりも、

静止画派である。



食事はコスパと短時間で食べれる事を重視する。

シローは食事はスプーンやレンゲなど、

主に片手でたべれるもの全般を好む。


理由は単純で何か作業をしながらでも

栄養を摂取することができるからだ。



休日はスマホやゲームのコントローラーに

油がつかないようポテチをワリバシで

摘みながら食べたり、封を切った

フルグラをそのまま口に

ザザーッと流し込んで咀嚼する。



残った片方の手でスマホで投稿サイトの

異世界ファンタジー小説を読んだり、

ソシャゲで遊んでいる。

そんな日々を過ごすナイスガイだ。



そんな、彼の異世界転生の理由は過労死である。

過酷な現代日本が生み出した、

あまたいる犠牲者の一人である。



働き方改革以降、正社員の残業は厳しく禁止され、

定時までに終わらなかった仕事が派遣社員である

シローに振られることが多くなったのだ。



シローの頼まれると断れないお人好しな

性格が災いし、請け負う仕事は雪だるま

のように増えていった。



最初は遠慮がちだった正社員は、いつからか、

当然の権利を行使するかのごとく、彼に仕事を

押し付けるようになり……いつからか、



正社員たちは定時の内に終えることができる

仕事まで彼に押し付けるのが当たり前となり、

ある日、シローは雪だるま式に積み上がった

仕事によって圧し潰され死んだのであった。



直接的な死因はくも膜下出血。

休日無しで睡眠時間を削って働いたら

脳の血管がプチンと切れたのだ。



もっとも、会社ではそんな扱いをされている

シローも小学生の頃は、学業としての勉強は

それほどできるほうではなかったが、

頭はまわるほうであった。


テレビゲームがうまく、

面白い話をよく知っていることからも、

クラスでも人気の小学生であった。



クラスでいじめられている子が居たら、

いじめっ子グループの主犯格が一人になった時に、

サシで喧嘩を挑み、秘密裏にいじめを

やめさせた事もあった。そんな静かな

正義感を内に秘める少年であった。



もっともそんな彼も高校に入る頃には、

だいぶ落ち着き、悪目立ちするような

派手な行動は控えるようになったのだが。



だが、生来のお人好しな性格と、

真面目さ、面倒見の良さは変わらなかった。

目立って、クラスの人気者になれる

タイプの華のある人間ではなかったが、

彼を密かに好む人間は多かった。


シローの内面を知った女性の中には、

密かな恋心をいただく女性もいたくらいだ。

シローは最後まで知るよしも無いことではあるが。



そんな彼は、高校卒業後には大学に

進学せず地元の企業に就職した。


地元の企業では、人柄の良さから

やりての営業ではなかったが、

お客様から可愛がられる営業として

信頼を築いていたのであった。



そんな会社も、彼が30歳になった時に

倒産、仕事のない地方から東京に引っ越し、

その後は派遣企業に務めていた。




彼は善良な人間であった。




ただ、そんな善良な人間が生きるには

この世界は残酷が過ぎた。



彼の善性は『扱いやすい駒』として

消費され、ひたむきさも、

評価されることはなかった。



過労死でしんだそんな彼に対して

同僚がつぶやいた言葉は……。



「派遣さんさぁ……仕事残っているのに

 勝手に死なれると困るんだよなぁ

 空気読んでよ。マジでさぁ」



同僚も悪気があっていった発言ではなかった。

ただ、ぽろっとでた本音というだけだ。

悪意がない、だからこそ残酷だ。



今までも口に出さなかっただけで、

心の中で思っていた本音が……。



言葉に出したのがこの同僚というだけで、

シローに仕事を押し付けていた他の同僚も

口には出していなかっただけで同じような

ことを考えていただろう。



仮に本当に神が居たとして、神がこの世界で

シローにもたらした唯一の慈悲は

『苦しませずに殺したこと』であろう。



何はともあれ、シローは日本で生き、

過労死で死んで異世界に生まれ変わった、

由緒正しい正統派の異世界転生者

という事になるのだろう。



シローは死後に女神のいる転生部屋に

転移し異世界女神に能力を授けられた。



彼が、授かったチートは【隷属】



女神からもらった水晶玉を【隷属】させたい

対象に投げつけて当てればいかなる相手でも

有無を言わせず強制的に支配下に

おくことができるというチートだ。



転生女神がたわむれに現代日本のポケ○ン

という人気ゲームを参考に作った能力である。



ただし、この能力は一回しか使えない

という制約付きである。お世辞にも

使いやすい能力とは言い難い。

俗に言う外れチートというやつだ。



そのほかにシローが女神から与えられた

チートの他に転生特典として18歳への若返り、

転生先でも勇者として十分にやっていけるだけの

強靭な筋力や高い反射神経なども付与されている。



当然、異世界でネイティブに話せるだけの

異世界言語も脳に直接叩きこまれている。

外見は、18歳の時のシローをベースに

異世界でも違和感のない黒髪の凛々しい

少年冒険者といった感じの姿にしてもらった。



あとは勇者召喚という儀式で召喚されるという

理由もあり、転生した時に異世界人でひと目で

勇者と分かるような衣服を与えられていた。

ドラ○エ1の勇者のような青を基調とした衣装。


ポケ○ンの件といい

……どうやらこの女神、

日本のゲームに影響を受けすぎなようである。



転生女神も普段はすることがなく、

暇なのかもしれない。



女神はひとしきり転生時のチュートリアル

的なあれこれを終えたあとにシローの

額に手を伸ばし告げる。



「日本から異世界へ旅立つ転生者シローよ。

 あなたが次に目を覚ます時に、そこは異世界です。

 その世界であなたは勇者として

 新たな人生を生きることになります。

 あなたの新たなる二度目の人生が輝かしい

 ものとならんことを祈ります」



そう女神が告げ終わると、

そこで意識は途絶えた。



以上が、シローが転生して魔王を見た時の

走馬灯の光景であった。



走馬灯は切り替わり、シローの視点は洞窟に戻る。

シローはおびただしい数の死体の山の傍らに立つ

目の前の幼女をまじまじと観察する。



目の前の魔王を名乗る幼女は、

銀髪に金色の瞳が特徴。


身長は130cmくらいである。

シローの性癖にどストライクの身長だ。


胸はすこし膨らみかけたこれからの

成長が楽しみな片手でおさまる大きさ。


衣装は、股間と乳首の一部が隠れる

タイプの痴女風の魔王装束であった。



死に瀕してシローが最も

強ったのは……



(……好きだっ! そして、エロ良い!)



「お主? 我の話を聞いておるのか?

 何やら上の空のようじゃが?」


「ふえぇ……」


「お主も勇者というのであればもうちっと

 シャキッとできぬものかのう?」


「はわわ……」


「……わかったわかった!

 さてはお主びびっておるのじゃな?

 ちょっとだけ我のオーラを抑えようかのう」



(いや……確かに最初は死を間近にして

 走馬灯を見るほどビビってたけど、

 途中から若干興奮しているとは

 言いづらい雰囲気だな……)



魔王ソフィア。


ぱっと見、その姿はただの銀髪幼女であるが、

転生直後のシローでも明らかに死を確信する

ほどの膨大なオーラをまとっている。


幼女の全身に渦巻く禍々しい漆黒のオーラは

質量として感じる事ができるほどのものであった。



シローは自身の本能的な

死を自覚しながらこう思った。



ちゅき好き




「勇者よ。最後に何か言い残す事はあるか?」



「す……っ」


「"す"……とはなんじゃ?」


「好きだっっ!!」


「ふえぇ……」



(いまだ! スキありっ!!)



ポケ○ンGOで鍛えた投擲テクニックを

駆使して女神から授かった【隷属】チート

が付与された水晶玉を投擲する。



くるくると空中で放物線を描きながら

ゆっくりと標的であるソフィアに

向かって飛んでいく。



魔王ソフィアが『ふえぇ』と怯んでいる

そのスキだらけの魔王の頭の上に

水晶玉がポコリと当たる。



その刹那――水晶の中心から膨大な光が溢れ出る。




「はわわっ……?!」



水晶玉が魔王ソフィアの額にコツンと

当たるやいなや、鉄の首輪が水晶玉から飛び出し、

首にグルリと巻き付く。


首には隷属の能力が付与された

首輪が巻き付いていた。

さながらゴツい犬の首輪といった体だ。




『おめでとうございます、シロー。

 魔王ソフィアの隷属に成功しました』




・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・



以上がシローが転生してわずか

2分間の間に起こった出来事だ。



こうして転生者シローと転生2分で

仲間になった魔王ソフィアとの

大冒険が幕を開けたのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る