第47話 先人は偉大


 怒り狂った英吾は叫んだ。


「良いか世紀末雑魚! エルフってのは森の奥に住んでる高貴な一族で綺麗な金髪娘の事なんだよ! てめぇみてぇな世紀末雑魚が名乗って良い種族じゃねぇんだよ! 」

「なんで! 何でお兄ちゃんが怒ってるの! 」


 英吾に胸倉掴まれて泣きそうな金髪モヒカンのアベシ。

 こう見えてかなりの弱虫なのだ。


「エルフはなぁ! 元々北欧神話にある半神半人の天使みたいな一族をトールキンが指輪物語で使用して水野〇がロード〇島戦記で広めた存在なんだよ! それから世紀末雑魚は〇哲夫と武〇尊がマッドマ〇クスと中国拳法を融合した傑作で生まれた雑魚で悪の象徴でもあるんだよ! その世紀末雑魚がこともあろうかエルフだと? てめぇは前世からやり直してこい! 」

「落ち着け英吾! そんなこと言ってもどうしようもないだろ! 」

「だって……だって……」


 泣きながら嘉麻に訴える英吾。


「私はそんなことよりも簡単に戒めを解いたことが気になるんですけど……」


 一連の話を全く聞かずに英吾を縛りなおそうと縄を構えるスティ。


「だって……だって……」

「良いから落ち着け。そんな幻想を打ち砕かれたからって大したこと無いだろ? 」

「だって、エルフのお姉ちゃんと色々エッチな事したかったんだもん! 」

「縄だけじゃ足りませんね。ちょっと抱かせる石持ってきて」

「かしこまりました」


 泣いて訴える英吾と刑罰をより重くするスティと抱き石を取りに行くメイド。


「あれじゃどう見てもアメリカドラマのいじめっ子の彼女みたいなのしかいないじゃん! 確かにそれはそれでアリだよ? それでも良いけどさ! それとは別に金髪美人エルフとやりたかったよ! 」

「なんでそこまで失礼な言い方出来るかわからんが……それからエルフが居るからってそれとエッチ出来るとは限らんだろうに。というかそっちでも良いのか? 」

「あんな格好でもエロければ正義だ」

「ごめーん! 下に敷くギザギザの波板追加で持ってきてー! 」

「かしこまりましたー! 」


 アホな事を言う英吾と突っ込みを入れる嘉麻。

 それとさらに実刑を増やすために抱き石を取りに行ったメイドに大声で刑罰のおかわりをお願いするスティ。

 アクドイが困り顔で答える。


「あの……うちのマミヤちゃんとアイリちゃんもエルフなんですけど?」

「あのエロいねーちゃんが?」

「は、はぁ……」


 困り顔で答えるアクドイだが、それを聞いていい笑顔になる英吾。


「ならば良し!」


 蒼○航路の曹操のように爽やかな笑顔で答える英吾の後ろで、もっといい笑顔で笑うスティが構えていた縄で英吾を縛り始めた!


 そして、数分後・・・



「それにしても困りましたなぁ……もっと売ってくれと言われているんですよ……」


 アクドイも困り果てる。

 アクドイがここに来た目的は生産の催促だった。

 スティ達は約束を守るものの、それはあくまで生産に無理が無い範囲である。

 渋面になる嘉麻が答える。


「俺たちも今のうちに稼いでおきたいですからね」


 嘉麻の本音も、沢山売ってお金に変えたい所なのだ。


 ゴムの木は昔、ゴンボルという大金持ちがこの周辺にしか植えなかったので、ここでしか取れない。

 だが、現実にはゴムの実を持って帰って栽培すれば簡単に増やすことが出来る。


 稼げるうちに稼いで色んなインフラを整えようと言うのがスティ達の目標である。


 特に問題なのはヴァリスに広がる見渡す限りの荒野である。

 何が原因かわからないが、ここの土地で作物が育たないのだ。

 国の基盤は何だかんだ言いながら食料にあるので、彼らとしてもこの荒れ地を全て農耕地に変えたいのだ。

 そのためにはお金が必要でそれをこのゴム産業で稼ぐ必要がある。

 

 スティも困り顔で呟く。


「何とかいい方法があれば良いんですが……何かありませんかエーゴさん? 」

「その前にこの戒めを解いてくれよぉ……」


 その声はスティの真後ろから聞こえた。

 今の英吾は下に三角の角材を並べた板の上で縛られて正座しており、その膝の上には重石が乗せられていて、さらにその上にスティが座っている。


「もう、無闇に女の子に手を出さないと誓いますか? 」

「誓います! 全知全能の神であるイエスのとーちゃんに誓います! 」


 泣きながら叫ぶ英吾の言葉に満足してようやく戒めを解除するスティ。

 戒めを解きながらも英吾は尋ねる。


「ところで今のところ租税免除している村はどれぐらいあるの? 」

「??? なんでそんな話を? 」

「良いから良いから! 重要なことだから! 」


 そう言って笑う英吾。

 すると嘉麻が代わりに答える。


「大体10集落ほどだな。もっとも、残りの村にもあまりに酷くて税を掛けられない連中も多いがな」

「なるほどねぇ……」


 うんうんうなずく英吾。


「その貧乏な家に税を掛ければ良いんだ」


 それを聞いて全員が顔を凍り付かせた。

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