第36話 天女の正体

「……とりあえず逃げながら考えるぞ。俺はこっちで何か探す! お前は向こうで探してくれ!」

「了解!」


 そう言って二人で探してみる。


「俺の方に来たぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 嘉麻が叫びながら逃げ惑う。

 どうやらロボットは先に嘉麻をやろうと考えたらしく、ゆっくり歩いて近寄っていく。


(すまん!嘉麻!)


 そう言って辺りを探す英吾。


(金づちでさえ吹っ飛ばされたんだからもっと強力な盾が無いと・・・)


 一応、嘉麻の方に注意を払いつつ、辺りを探す英吾。

 だが、それらしい物は一切見つからない。


(出口の階段の木をどかせば……)


 そう思って出口の方を見てみるが、階段にある木は一人では到底動かせそうもない。

 嘉麻が居れば出来るかもしれないが相手を引きつけている以上どうしようもない。


(どうすれば……)


 懸命になって何かを探す英吾。

 ふと、奥にある人形が目に入った。


(天女か……)


 何の気なし、天女の側に向かう英吾。


「英吾まだかぁぁぁぁ!!!!」


 姿はみえないものの、嘉麻もうまく逃げ回っているようだ。

 だがいつまでも続きそうにない。

 なんとはなしに天女の側を探ってみる英吾。

 だが、それらしい物は見つからない。


「助けてくれ……」


 ぽつりとつぶやきながら辺りを探す英吾。

 だが、その言葉に答える者はいるはずもなかった。

 無かったのだが……


むにょん


 天女をまさぐっていた英吾の手が天女の口の中に入った。

 そしてあることに気付いた。


「……なんだこれ?」


 口の中に何かが入っている。

 薄い板状の何かだ。

 そこに触れると天女の目が開いた。


「……ご主人様を確認」

「……え?」


 突然降ってわいたに呆然と首をあげる英吾。

 それまで目を閉じていた天女の目が開いていた。


「質問します。マスターは何をお求めですか?」


 天女の整った怪しい唇が動く。それを見て呆然とする英吾。


「えっと……助けて欲しいんだけど?」

「……状況確認。サーチします」


 ヒュィィィィィィィン


 目から発したレーザーが辺りを舐めるかのように照らす。


「現在危険にさらされている事を確認しました。これより起動します」

「……え?」


 天女は言うなり立ちあがると急に下着を脱ぎ出す。


「・・・え~と」


 いきなりの行為に呆然とする英吾。

 だが、すぐに理由はわかる。

 乳首もマンコもなく、そこはつるりとした肌があるだけだった。

 そして・・・


バカン!


 天女の身体が魚の開きのように開く。

 そこは完全な空洞になっており中には布が当ててある。


「強制装着いたします」

「え?……ってちょぉ!」


 慌てて逃げようとするが、時すでに遅し、天女の身体はバラバラになり、英吾の身体に纏わりつく。


ガシャンガシャンガシャン!


「って……これは!」


 聖闘○星矢のオープニングのように次々と英吾の身体に纏わりつく天女。

 そして全てが装着されたとき、英吾はこれが何なのかわかった。


「……パワードスーツか!」

「回答。ご主人様の言う単語の内容がわかりません。わたくしの名前は『アラレ』です」

「アラレちゃんか!」

「回答。その通りです」


 天女が英吾の疑問に答える。


「英吾かわってくれぇぇぇぇぇ!!!」

「……あいつを助けること出来る?」

「回答。代わりに相手になるぐらいなら出来ます」

「十分!」


 そう言って走り出す英吾。


「すげぇぇぇぇ!」


 自分の身体とは思えないぐらいの軽やかさに驚く英吾。

 すぐに離れていた嘉麻とロボットを発見する。


「どっせぃ!」


ドゴォ!


 英吾のドロップキックを受けて吹っ飛ぶロボット。


「今度はなんだぁ!」


 突然現れたパワードスーツのようなものに泣きそうになる嘉麻。

 それを見てクスリと笑う英吾。


「俺だよ嘉麻!」

「……英吾なのか! 助かったぁぁぁぁ……」


 へなへな崩れ落ちる嘉麻。


「でもあいつはまだ倒してない!ちょっと奥の方に逃げててくれ!」

「わかった!」


 よろよろと立ちあがると奥へとふらふら歩いて行く嘉麻。

 どうやら足が限界だったようだ。

 それを見て少しだけ顔を曇らせる英吾。


(嘉麻はこれ以上は走れないな)


 となると目の前の敵を倒さなくてはならない。

 だが、ドロップキックを受けた敵は何事も無かったかのようにすくっと立ち上がる。


「何とかして倒さないかんなぁ……」


 背中に汗が出始めた英吾だが、天女アラレが抑揚なく答えた。


「回答。こちらは家庭用、向こうは軍用です。性能に差があり過ぎます。逃走を提案します」

「あいつを置いて逃げられるかよ」


 英吾は苦笑して言った。








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