第34話 採掘するのは
「こいつは一体……」
嘉麻が不思議そうに唸るのも無理もない。
上がった先は整然と並んだ林だった。
この山にゴンボルが植林したとされる木が整然と植えられていた。
頭上を見ると既に夜が明けかけており、うっすら陽が差し込みつつある。
そこは天井がなく、地形がすり鉢状になっており、その底の部分に木々を植えられていた。
壁の上の部分は反り返ってオーバーハングになっており、登れないようになっているのは逃走防止のためだろう。
「採掘場?」
英吾が不思議そうに首をひねるのも無理もない。
あまりにも一般的な採掘場とは程遠い、今までの洞窟での冒険が何だったのかと言いたくなる。
「……ここは一体どんなところだったの?」
「全くわからん。一体なんなんだ?」
不思議そうに手近な木に近づく嘉麻。
すると不思議そうに木を眺めた。
「なんだこりゃ?」
木にはらせん状に一周する形で傷がついていた。
長い年月でほぼ消えかけているが、全ての木に同じ傷があるので間違いない様だ。
「……なにこれ?」
「……わからん」
英吾の疑問に首をひねる嘉麻。
「……どんな意味があるんだろ?」
「……全く分からん。似たような傷は見た事あるが……なんだっけ?」
嘉麻が頭を捻っているが、それを見てはっとなる英吾。
「そうだ! もう夜が明けかけてるんだ! 急いで天女の下穿きを探さないと!」
「そうだな!」
慌てて辺りを探し始める二人だが、それはすぐに見つかった。
「……飾ってあるな」
「……飾ってあるね」
二人で呆然と口を空けて天女の下穿きを見る。
確かに天女の下穿きはすぐに見つかった。
一番奥の壁に少し窪んでおり、そこに飾ってあった。
だが……
「まさか中身入りとはなぁ」
嘉麻が困ったように唸る。
あろうことか天女の下穿きは中身が入っていた。
しかも・・・
「……これ生きてると思う?」
「……違うと思う……というよりもこれって人形じゃないか?」
豊かな胸、くびれた腰、綺麗なお尻、肉感的なふともも、そして整い過ぎているほど整っている顔。
この世ではありえないというよりも二次元的な美女だった。
そんな美女が眠っているように目を閉じて下着だけの姿で窪みに腰掛けるように座っている。
フニフニ
英吾が試しに胸を揉んでみるが首を捻る。
「ラッキースケベの振りして瞬の乳揉んだ時と違う……やっぱり人形だ」
「そういやあったな。その後二階の窓から突き落とされたんだっけ?」
「あれは痛かった……何故か知らんがそれを見たドリアンが動けない俺を殴ったことだった……俺が被害者なのに何で殴られたんだろう?」
ちなみにドリアンとはマッチョ体育教師で体罰要員だった先生だ。
「何か起きたら、とりあえずお前が悪いと考えて間違いないからじゃないか?」
「納得がいかん……」
「多分、お前以外は全員納得してると思うぞ?」
不思議そうに首を捻る英吾だが、すぐに気を取り直して人形の胸をさらに揉んでみる。
微妙に違うものの柔らかく、ある意味人間よりも揉みごたえのある胸だった。
「……こんな人形ってこの世界で作れるの?」
「……ありえないな。よほど高度な文明じゃないと……」
そう言って人形に近づく嘉麻。
そして、とんでもない物を見つけて服を凝視する。
そして頭を抱える。
「……どういう事だよこれ……」
「……どうした?」
そう言って服に付いたタグを見せる。
それを見た英吾が唖然とする。
「……桃太郎?」
「……ああ、あの胸を寄せあげる天女のブラで有名な下着メーカーだ」
「・・・・・・・」
あまりの事に呆然として桃太郎と日本語で書かれた下着を凝視する英吾。
「なんで元の世界の下着をこいつがつけてるの?」
「しらねーよ」
もう、わけがわからな過ぎて投げやりになりつつある嘉麻。
しばしの間呆然と二人で天女の様子を見てみる。
ふと、思いついたように英吾がつぶやいた。
「……どうする?」
「……どうするったって……脱がすしかないだろ?」
「……これを?」
微妙な顔で天女をみる英吾。
見た目はただの美女だからあ、それを無理やり脱がすのは人形と言えども抵抗を感じるのも仕方が無い。
「……いっそのこと諦めてフォルンの原料を持って帰ったらどうかな?」
「……原料ってどれのことだよ?」
そう言って辺りを見渡す二人。
辺りには整然と並んだ林があるだけで、それ以外は何も無い。
採掘した穴すら見当たらない。
「……何を採掘してたんだよ……」
嘉麻が頭を抱える。
「ここまで来ても採掘した穴は見つからないし、それらしい物も見つからない! そもそも時間が無いんだぞ! もうこいつしか手段がない!」
そう叫んで人形を指さす嘉麻。
それを見て諦める英吾。
「わかったよ」
そう言って人形に手をかける英吾。
その時だった。
ピーーーー!
「……なんだ?」
いきなり起きた変な音に辺りを見渡す二人。
「・・・アジェ;オイアン@ガンメプ4パ;ポアマ」
ウィーン・・・キュルルルルル・・・・
「なんなんだ?」
「何の音?」
突然の機械音に動揺する二人。
辺りをもう一度見渡してみる。
キュィィィィン・・・グション
ようやく機械音の出ている方向がわかり、そちらを見てみる。
「……ちょっと待て。あれは洒落にならん……」
現れたソレを見て嘉麻は凍り付いた。
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