第30話 ゴンボルの死体
「まさか、床が動いて向こうへと繋ぐ仕組みとはねぇ……」
「一種の移動床だな……」
さりげに向こう側も大穴が空いていたのだが、それは床が動く事で向こう側につく仕組みになっていた。
「要はあれだ。扉を開いてから床を動かせば向こうまで自動で送ってくれる機械だったんだな。トラップと移動を兼ねて一石二鳥ってやつだ」
「もう少し簡単な物にしてほしかったな……」
改めて一息つける二人。
「問題はここだな」
「そうだね……」
あたりを見渡すと広い空間にたどり着く。
広いと言っても廊下の両側に小さな部屋があるだけで、一本道が続いている。
すでにいくつかの部屋を覗いているのだが、骸骨しかなかった。
「ここがゲイドとかいう殺人鬼の襲撃現場か?」
「みたいだな。そこかしこに死体がある」
そう言って一つ一つの部屋を覗いてみる二人。
死体のほとんどが真っ二つに斬られており、そうでなくても崩れ落ちるように不自然な形で倒れていた。
「……どうも精製場のようだな」
「みたいだねぇ……」
辺りにはそれらしい道具がいくつも置いてあり、概ね似たような物を置いてあった。
だが、いくつかの部屋を覗いて嘉麻は不思議そうに首を傾げる。
「……やっぱりおかしいな」
「……なにが?」
「……炉がない」
そう言って嘉麻は全ての部屋をチェックする。
それらしい物は見当たらない。
「……なんで炉が無いんだ?」
「……さっきから言ってるそれは何?」
「よく映画とかでみるだろ?鉄を溶かすのに高温で燃やす竈みたいなやつ。あれが無いんだよ」
「……それがどうしたの?」
「金属を精製するのに炉を使わないわけがないんだ。精製して柔らかくなるのかもしれんが、それまでは石だぞ?前にも言ったけど採掘した石は不純物だらけなのにそれを濾し取るような設備が無いんだ。どういう事だ?」
不思議そうに考え込む嘉麻。
「丸のまま取れてたってこと?」
「……そうとしか考えられんが……聞いた限りでは鉄のように量も多く作れたみたいだからダイヤのような宝石の形をしていたようには思えんしな……」
「……前に言ってたたルビーをステンレスに使うようにやってたとか?」
「……考えられなくもないがそれだと、外から大量の鉄を買わないと出来ない。無から有を作ることは出来ないんだからその分の質量を補完できないと作れるわけがない。それに丸のまま取れててもどの道その場合でも炉が必要になる。なのに何で無いんだ?」
「……これなんかそれっぽくない?」
そう言って英吾は大鍋のような物を見せる。
だが、それを見て嘉麻はかぶりを振る。
「それでも出来なくもないがそれは鉄製だぞ?鉄より溶融点が低くないとだめだぞ?プラスティックでもないと無理だな」
「う~ん……」
英吾も顔を顰める。
だが、元々頭のいい方では無い英吾はすぐに諦めた。
「今考えてもしょうがなくない?今回の目的は天女の下穿きなんだし?」
「……まあな。フォルンってのは一体何だったんだ?」
嘉麻も調べる事を諦めて奥へと向かう。
そして一番奥までくると英吾が何かに気付いた。
「……あっ……」
「どうした?」
「……ゴンボルだ」
最後の扉の前に一際豪華な服を着た骸骨がいた。
扉の前で横に倒れている。
「……どうしてゴンボルだとわかった?」
「屋敷とさっきの仕掛けの時に見た服と一緒だから」
「……なるほどな」
なんとはなしに手を合わせる二人。
ほんの少しではあったが黙祷する。
「……あんたの遺産は僕らが使わせてもらいます。有効に使いますので安らかにお眠りください」
「……化けて出てきそうだからその辺にしとけ」
あきれ顔の嘉麻。
ぱんぱんと自分の頬を叩いて気合いを入れ直し扉の仕掛けを見る。
「それで最後の仕掛けだが……」
「……考えるまでも無いな」
恐らくはただの覗き穴のある鉄の扉に見えていたであろう仕掛けだが、周りの木枠ぶち壊されていたので内容が丸わかりである。
じつは硬貨のような円盤状の扉で横に引けば開く仕組みである。
ついでに言えば本来は木の壁で隠れていたであろうその重い扉を開く仕組みが全て丸わかりになっている。
「この紐引っ張ればいいんだな」
「みなよ。下に人形の足が落ちてるよ」
「暗号には右足を引っ張ったらマンコがびしょ濡れだったって書いてある。そう言う意味だろ」
「どうしようもねぇエロじじぃだったんだな」
呆れながら二人で滑車を引っ張る。
扉はあっけなく開いたが手を離したらすぐに閉まった。
「……どうしよう?」
「……何かで引っ掛けとくしかねぇな。」
そう言って一度部屋に戻り引っ掛けておくような物を探す。
ほどなくして先ほどの大鍋を転がしてくる。
「じゃあ、俺が引っ張るからお前がひっかけといてくれ」
「了解」
そう言って嘉麻が引っ張ると扉が開く。
すぐさま扉に大鍋を入れる。
「はなして」
「おう」
ガキン!
かなりの重量の扉だが、大鍋で十分だったようだ。
一人が何とか通れる程度の隙間が出来る。
「ふぅ……」
「行くか……」
そう言って二人は扉をくぐった。
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