第28話 カラクリ


「危なかったぁ……」

「やばかったなぁ……」


 二人で中に入って一息をつく。

 さすがに人一人がやっと通れる程度のこの通路にはサルミが入るのは難しいのだろう。

 しばらくの間はサルミの叫び声が反響していたがやがて聞こえなくなった。


「とりあえずは第一関門クリアだな」

「関門はいくつあんの?」


 不安そうに聞く英吾ににやりと笑う嘉麻。


「今の所、3つだな。採掘場に行くまでのトラップをくぐり抜けるのと、帰る時にもう一回サルミの生息地抜けるのと全部で三つだ」

「サラっと言うけど結構大変だよ」

「インディ=ジョーンズに比べればましだろ?さ、行くぞ」

「へいへい」


 そう言って歩きはじめる二人。

 通路自体は一本道で迷うことなく進める。

 すると、目の前に扉が現れた。


「扉だな」

「扉だね」


 そう言って英吾が開こうとする。

 だが、がちゃがちゃと音がしただけで開かない。


「なんだろこれ?あかないね」

「錆ついてんのかな?どれ」


 そう言って二人でがちゃがちゃといじり回す。


ボコッ


「いてぇ!」

「なんだ!?」


 頭上から落ちて来た何かに当たり、苦悶する二人。


「なんだこれ?棒?」


 頭上から落ちて来たのは木の棒だった。

 半分以上腐っており、それが頭に当たったのだ。


「棒じゃねぇな。槍だな」


 頭をさすりながら冷静に分析する嘉麻。


「見てみろ。こっちには穂先がついている」

「ほんとだ」


 嘉麻が示した棒には穂先がついている。

 もっとも・・・・


「さびて腐ってるね」

「本当は侵入者を刺し殺す罠だったんだろうな」


 そう言って落ちて来た棒を叩く嘉麻。

 ばらばらに崩れてぼとぼとと何かが落ちてくる。


「きたねぇな!」

「すまん」


 二人は扉の前から離れる。


「ここで、あの暗号文の出番だな」


 そう言って嘉麻が暗号の紙を取り出す。


「何かないか探そう。多分、あの隠し部屋みたいな仕掛けがあるはずだ」

「ああ」


 そう言ってあたりを見渡す二人。


「見つかんないね」

「おかしいな」


 二人で探してみるのだが一向に見つからない。


「このろうそくが怪しいな」


 そう言って嘉麻が蝋燭立を調べてみるが何をしても動かない。


「近くにあるはずなんだがな……」

「どこだろ?」


 周りを探す二人。

 すると英吾の耳に何かが聞こえた。


カツーン


「……何?」


 足音のような物が聞こえて英吾の動きが止まる。


カツーンカツーン


「……足音が聞こえるね」

「……なんだと?」


 嘉麻も動きを止める。


カツーンカツーン


「……こっちに近づいてきてる」

「……俺には何も聞こえんけどな」

「……ということは?」

「サイコメトラーの出番か?」


 嘉麻がそう言うと同時にぼわっと禿げた爺さんが現れる。

 もっとも英吾にはそう見えているだけで嘉麻には見えないのだが。


「よく見ておけよ」

「わかった」


 そう言って様子を探る英吾。

 だが、次の瞬間。すぅっと壁の中に入って行く。


「あれ?」

「どうした?」

「この壁の中に入っていったよ」


 そう言って、英吾が指さした先にはタダの土の壁しか無い。

 嘉麻はためしにどんどん叩いてみた。


「……空洞があるな」


 そう言って壁を探る。

 すると……


ボコォ


 壁の一部が奥へと動いて開いた。


「なるほどね」


 二人は中を進んでみるとすぐに折り返して扉の反対側までくる。

 扉の反対側には、ドアが動かないように色々と打ち付けてあり、ドアを引くと仕掛けが発動するようになっていた。


「こうやって守っていたんだな」

「簡単だけどうまい方法だね」

「子供だましだが命がかかってるとそこまで考えないもんだからな」


 苦笑して先へと進む二人だった。



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