第27話 猛獣サルミ

ドゴォン!


 荷物を抱えた二人が出ると同時に扉を破ってサルミが出てくる。


「サンザは!」

「あそこに落した!」

「使えねーな!」

「うるせぇ!」


 そう言って二人ともジワリジワリと後ろに下がる。


「よりによってなんであんな所にいるんだよ!」

「おかしいとは思ったんだよ。他は木造りなのにあれだけ石造りなんだからよ!」

「気づいたなら行動に移せよ!」


 お互いに毒づくが全ては後の祭り。

 二人ともサルミを前に後ろ向きにじわじわと歩く。


「採掘場の入り口は!」

「あそこだ!……っておい!」


 嘉麻が叫ぶので英吾が見てみると入り口には大岩がふさがってる。

 落石で扉が閉まっているようだ。

 扉自体は木でできているのだが、頑丈で壊れそうにない。

 ましてやサルミに襲われながら壊せるようには見えない。


「まじか……」

「逃げ場無しだな」


 じとりと嫌な汗を吹き出し二人。

 だが、英吾は大岩を見てあることに気付く。


(扉が壊れかけている……)


 大岩が当たって扉が割れている。

 人が入れる隙間は無くも無いがちょっと広げる必要があるだろう。

 それに気づいた英吾はにやりと笑った。


「ちょっとこれ持っててくれ」


 そう言って荷物を渡す英吾に訝し気な嘉麻。


「どうするつもりだ?」

「今から俺が走りだして隙を作るからお前は荷物から残りのサンザを出してくれ」

「走りだすって……追いかけられるぞ」

「そうだ。だからその隙にサンザを出しといてくれ。そんなに逃げ回れそうにないし」

「……なんか考えがありそうだな」

「うまく行くかわからないけどね」


 そう言って足元を確認する英吾。


「行くよ」

「ああ」


 そう言って二人は急に動きだす!

 嘉麻は横に、英吾は採掘場の扉にむかって走りだす。


ウキャア!


 サルミは叫びながらも英吾を追い掛け始める!

 獣の習性で生き物の背中を追いかけていく!

 英吾も足場が悪いながらもよく走るがそこは野性の生き物。

 あっという間に追いつかれそうになる。


(後少し!)


 採掘場の目の前の大岩に向かってジャンプする。


タンッ


 うまく大岩にたどり着く。

 だが、すぐ後ろにサルミが迫っていたので、すぐに横に飛ぶ。

 そして……


ゴガシャッ!


 サルミは勢いそのままで岩にぶつかり、岩が大きく奥へと動いた!


 めきごがぁ!


 岩が奥へと動いたことで半壊した扉が完全に壊れて人が入れる隙間が出来る!

 そしてサルミはその痛みからか、すこしうずくまった! 


「嘉麻!」

「あいよ!」


 英吾の合図とともに、嘉麻は持っていたサンザの汁をサルミの顔に向かってぶちまける!


ウキャアァァァキャァキャァ!


 どうやら効果はあったようだ。

 苦悶の叫び声をあげながらのたうちまわるサルミ。


「英吾!」

「おう!」


 のたうちまわるサルミを尻目に二人は隙間から採掘場の中へと入って行った。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る