第14話 暗号の謎

「なんかわかりそう?」

「う~ん」


 嘉麻がベッドの上で頭を傾げている。

 だが、それも仕方のないことで、書いてあるのは愛人とのエッチにしか見えないのだ。

 中には図解入りで説明すらしてあるのだが、夜になって寝室で謎を解き明かしているのだが……


「炙りだしはあれだけみたいだしね……」

「そうだな……」

「水掛けてみたらどうだろ?」

「……多分出てこないな」

「……なんで?」

「見ろ」


 そう言って嘉麻は本をランプにかざす。


「水にぬらして浮かぶようなものならランプにかざしても出てくるよ。一応、解ける紙と解けない紙に分けてやってあるのなら丸ごと放りこまないと意味ないし、それすると全部わからなくなるから、最終手段だな」

「難しいね」


 そんなことをいいながら二人で内容を読んでみる。

 だが、書いてあるのは潮吹いたとかマンコびしょ濡れとかそんな内容ばっかりなので次第に英吾は飽きてくる。


「個人的にはこのマンコびしょ濡れってのはこの図を水に濡らすと何か出てきそうなんだけどなぁ……」

「俺もそんな気はするけどそれは最終手段つったろ」


 段々どうでもよくなってきた英吾だが、ふと尿意を覚える。


「びしょぬれって言えばなんだかトイレに行きたくなった」

「……俺も」

「一息がてら行こうか?」

「そうだな」


 そう言って二人で連れションへと向かう。

 とはいえ便器は一個しか無いので順番にやるしかないのだが、英吾が用を足すと嘉麻が月を眺めていた。


「レオリスか?」

「ああ。いつ見ても凄いな。地球の月よりかっこいい」


 そう言って嘆息する嘉麻。


「知ってるか?この世界の月が暦の月に合わさってるんだぞ」

「……そうなのか?」


 少しだけ不思議がる英吾。


「あそこに月の模様があんだろ?あれが虎柄のシャチでスマリオンっていうんだが、あの模様が少しずつずれていって30日後には蟹兎のレイパスが同じ位置にくる。だから一カ月は30日になるらしい」

「へぇ~」


 感心する英吾。


「それが一年後にはまた同じ位置につく。だから星座と月を足したような感じになってるらしい」

「へぇ~」


 ますます感心する英吾。

 しばしの間二人で月を鑑賞する。


「そろそろ戻ろうか?」

「そうだな」


 そう言って部屋に戻ろうとする二人だが、英吾の耳に足音が聞こえた。


バタバタバタ


「待って嘉麻」

「……なんだ?」

「例の足音が聞こえた」

「……なんだと?」


 訝しげに二人で耳を澄ませてみる。


バタバタバタ


「確かに聞こえる!」

「……俺には何も聞こえんが?」


 英吾の声に疑わしそうに眉を顰める嘉麻。

 いらいらした英吾は嘉麻の手を引っ張る。


「いいから来いって!」

「お、おい!」


 嘉麻の手を引っ張って廊下の奥へと向かう英吾。

 すると昨日の夜と同じように爺さんが廊下を歩いている。


「ほらあそこ」

「・・・・・」


 英吾が静かに指さすのだが、嘉麻の反応は険しい。


バタバタバタガタっ!


 昨日と同じように爺さんがすっ転ぶ。

 昨日と全く同じようにスリッパを頭に乗せている。


「ほら、みろって!昨日と同じで頭にスリッパ乗せてる!」

「昨日と同じだと?」


 英吾の声に嘉麻が眉を顰めるが、その反応にじれったそうに英吾は言う。


「どうしたんだよ?」

「俺には何も見えないんだよ」


 英吾の声に冷静に答える嘉麻に唖然とする英吾。


「……え?」

「完全に見えない。足音すら聞こえていない」


ひゅおぅぅぅぅぅぅ


 外の風の音がやけに大きく聞こえた。

 震えながら英吾は問う。


「じゃあ、幽霊だったり……」

「……多分違う」

「……え?」


 嘉麻の言葉に間抜けな声で答える英吾。


「多分……サイコメトラーとかいうヤツじゃないか?」

「サイコメトラー?あのエイジとかあの系統?」

「多分……前に調べた事があるんだけど、サイコメトラーってのは残留思念を感じ取る能力らしい。だから生前の行動をそのまま感じてるだけなんだよ」


 英吾はうんうん頷く。

 そして腕組みして堂々と答える。


「わからん」

「ようは昔本当にあった事を追体験してるだけなんだよ。幽霊とは意味が違う。誰かがとったビデオを見てるだけと言った方がいいかな? 良かったなチート能力に目覚めたみたいだぞ」

「役に立つのかなぁ……」


 どうせならもっと戦闘的な能力を身につけたかった心の中で付け加える英吾。


「とゆうことは僕が見ているのは?」

「昔ゴンボルがやっていた事を見ているだけなんだろう?」


 そう言って嘉麻は奥の方を見る。

 爺さんは二人を一切気にせずに奥の廊下へと向かっている。


「そうなるとこの奥の女神像の乳首をいじってるのも昔ゴンボルがやってたって事になるね」

「そうなるな……」

「変態じゃねーか」

「変態だな……って待てよ?」


 くるりと踵を返して部屋に走る嘉麻を慌てて追いかける英吾。


「いきなり置いてくなよ!」

「違う!あれを取りに行くんだよ!」

「あれってなんだよ!」

「暗号文だよ!」


 そう言って部屋に戻り暗号文を取って再び走りだす。


「何してんだよ!」

「あの文字だよ!女神像の乳首いじってたんだろ!」

「そうだよ!」

「確かめるぞ!」


 そう言って嘉麻は奥の廊下へと走って行った。

 仕方ないので英吾も追いかけていった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る