第8話 大富豪ゴンボル


「なんじゃこりゃ……」


 昼食を終えて約束していた部屋の片づけへと向かった英吾を待ちうけていたのは……大量の家具や道具が放置された大広間であった。

 あまりの量に愕然とする英吾。


「元々、この屋敷の持ち主であるゴンボルは大金持ちだったのでいろんな物を持っていたそうです。それがスティ様が使われることになったので他の部屋にあった物をこの広間に放りこむ事になったんですよ」


 メイド長のクリィがそう説明する。

 クリィは英吾を治癒したメイドでずっとスティ王女付きのメイドである。

 年齢不詳だが見た目は20代後半で黒髪を無造作に後ろに束ねている。

 青人と呼ばれる身体に青みがかかった人種で顔色は常に青白いがべつに体調が悪いわけではない。


 この世界では黒白黄色の人種だけでなく赤青緑の人種もいるのだ。

 一般的に青人はクールな人が多いと言われているがクリィはその典型的な青人でクールな印象そのままの性格をしている。


「凄い量ですね……」


 ポカンと口を開けているのは緑人のメリルである。

 長く綺麗な緑髪ををしており、それを綺麗にポニーテールにしている。

 白に近い緑色の肌がきれいな可愛らしい顔の女の子で年は15と英吾達と同じで、そばかすが少しついているが八重歯が可愛らしい。


「でも、そのゴンボルはなんでこの屋敷手放したの?」

「……皆殺しにされたからです」

「……え?」


 クリィの言葉にぞっとする英吾。


「昔はこの屋敷を拠点に広く商いをしていたんですが、ある日、殺人鬼ゲイドがたまたまこの近くに現れたことでゴンボルとそこの奴隷たちはゲイドに皆殺しにされたんです」

「たまたまって……なんでそんなことやったの?そいつ?」

「わかりません……ゲイドは突然現れて周りの人を殺して行くので何のためにやったのかはわかってないんです……ただ、それが原因でゴンボルのフォルンは作れなくなり、一家は離散したそうです」

「へぇ~……ところでフォルンって何?」


 英吾の間の抜けた声にはぁっとため息をつくクリィ。


「フォルンを知らないなんて……よく考えればもう知らなくて当然ですね。ゴンボルが作っていた謎の金属です」

「金属?」

「ええ。ふしぎな金属で柔らかい石のようなものです。これを加工するといろんな事に使えたのでゴンボルは大金持ちになったんです」


(柔らかい石って賢者の石のことか?)


 なんとなく、か○くりサーカスの事を思い出した英吾は単純にそう思った。


「そんなもんがあったんだ~。すげぇな。どうやって作ったんだろう?」

「なんでも天女様に教えてもらったそうですよ」

「天女?」 


 怪訝そうな英吾。


「ええ、本当かどうか知らないですけど、ゴンボルは7つの石を集めて天女を呼びだしたそうです。そしてその時に天女のはいていたパンツを懇願したそうです」

「変態じゃねーか」


 苦笑する英吾。


「そして天女はフォルンの製法をゴンボルに教えたことでゴンボルは大金持ちになったそうです」

「……その話し……まるっきり繋がってないんだけど?」


 眉を顰める英吾だが、クリィは困った顔で答える。


「それはわたしもそう思うんですけど伝聞ですのでどこまで本当なのかまでは……ただ、わかっているのは件の天女の下着は不破の下着と名前を変え、ニョイの棒、7つの宝玉とともにドゥラ=ゴンボルの3大宝具と言われています」

「どっかで聞いた事あるなぁ」

「ですが、やはり一番すぐれているのは不破の下着でしょうね。なにしろフォルンを作ることに繋がったのですから……」

「そりゃ、星を砕くブゥの一撃でも破れなかったからなぁ……」


 どんな激戦でも決して破れなかった悟○のパンツを思い出す英吾。


「??? 何の話です?」

「なんでもないよ」


 異世界にドラゴンボールの話しをしても通用しないだろうと英吾は諦める。


「あのぅ……」


 横で聞いていたメリルがおずおずと声をかける。


「何?」

「そろそろ仕事を始めた方が……」


 そう言って部屋の荷物の方を指す。

 先ほどから話してばかりで何も仕事が進んでない。


「あら?私とした事が……じゃあ、始めましょうか。まずはそちらの椅子から運んでくださいな」

「うぃ」

「はい」


 そう言って3人で部屋を片付けた。

 当然ながら一日では終わらなかった。


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