ほしい物リスト

 『ほしい物リスト作ってみました!誰でもいいのでなんか下さいw』


 「ほしい物リスト」とは、どんな商品でも取り揃えてあると評判のwebサイトが運営するサービスの一種である。

 その起源は、ウサギとして生を受けたブッタが飢えた老人の食料になるために自ら火に飛び込んだという逸話や、修行中のキリストを誘惑するために悪魔がパンを持って現れた話が基になったと言われていたり、言われていなかったりするが、簡単に言うと人間の欲望が顕在化したものである。


 その男が「ほしい物リスト」をSNSで公開したのは、ネット上で次のような噂が大量に流れていたからだ。

『ほしい物リストを呟いたら、知らない人がなんでも買ってくれた!』


 噂通り、翌日には男の家にゲーム機が届いた。宛先人の名は無かったが、男はおおいに喜んだ。

 その翌日、数十万はする新型のデスクトップパソコンが届いた。世の中には物好きな奴もいるもんだ。

 更にその翌日には、庭付き一戸建ての物件を受け取ることになった。まさか冗談のつもりで入れていたのだが、こんなものまで買ってくれるとは。


 男が新しい住居でゲーム片手にネットサーフィンをしていると、インターホンが鳴った。次は何が届いたんだろうとウキウキしながら男は扉を開けた。だがそこにいたのは宅配便ではなく、黒服の妙な男だった。

「代金を頂きに来ました。」

「代金って、ほしい物リストの商品のことですか?僕はリストを公開しただけですよ。」

「だからその中から望み通りの品を3つ差し上げたじゃないですか。」

 どうやらこの目の前の人物が、差出人不明の送り主らしい。だがそれなら代金とは一体なんのことだろうか。

「いやあ、最近の若者は欲がなくて助かります。昔は使いきれないほどの金貨だったり、一国の王にしてくれだったりと3つも願いを叶えるのは苦労したものですよ。」


家主の居なくなった家で、悪魔がパソコンを眺めている。

「本当にこのサイトには何でもあるなあ。」

その片手には新鮮な魂が握られていた。

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