人類の節目

 科学技術の発達により人類は不老不死となった。寿命という概念は消失し、人間は悠久の時を生きる存在となった。

 ある日、未来を見通すコンピューターが警鐘を鳴らした。このままでは大変な事になると。

 だが人類は楽観視していた。時間は文字通り無限にあるのだ、いつか良い解決策が見つかるはず。

 しかし月日が経つにつれ、着実に事態は悪化していった。


 その悪夢は2月3日、節分の日に始まる。

 この日から人類は「年の数」だけ豆を食べなければならない。

 最初は一日あれば十分だった量も、もはや年の瀬ギリギリになっても食べ切れない程、時間が過ぎ去っていた。

 そして今年の分を食べ終えたとしても、また来年、そのまた来年も、これから先ずっと節分が来る度に増えていく豆を食べ続ける。


 豆を撒く暇もない人類には、死という名の幸福が訪れることもないだろう。その代わりに耳元で、鬼の笑い声が聞こえたような気がした。

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