ウサギとカメとスポンサー
「我がイナバ社は、ウサギの勝利を応援します。」
長きに渡る因縁、兎と亀のリベンジマッチが行われようとしていた。その話題性は抜群。両者にはスポンサーがつくことになった。
前回のウサギの敗因を分析した、「イナバ社」は高麗ニンジンで作った眠気覚ましのエナジードリンクを提供すると言い出した。
カメを支援するのは、ネットショッピングの大手として有名な「ウラシマ社」。通気性の良い素材を使いながら、車に引かれても大丈夫な耐久性。従来と比べて10分の1までの軽量化に成功し、収納容量もアップした甲羅を作成した。
各々の弱点を克服し、スポンサーと連携しながら練習に励むこと1ヵ月。とうとう決戦の日がやってきた。
「昨夜は緊張で眠れませんでした。しかし、負けるつもりはないです。」
試合前のインタビュー。ウサギは充血した目を見せるが、元々赤い目なので本当かどうか誰にも分からない。
「恋人と約束したんです。この戦いに勝ったら結婚しようって。」
カメはレースに勝ってそのままプロポーズするつもりであると、引っ込み思案な性格に似合わない、大胆な宣言。
そしてレースが始まった。
両者いいスタートを切ったが、前に出たのはやはり自力で勝る兎だった。
順調にカメを引き離していき、やがて過去にうたた寝をしてしまった丘まで辿り着いた。振り向いてもカメの姿はない。その安心感と練習の疲労からか睡魔がウサギを襲う。
しかし心配はない。ウサギは練習中にも常用していたエナジードリンクを取り出して、ぐいっと一気飲みする。交感神経が刺激され目が冴えて、汗が噴き出る。だが、暫くして兎は異常に気付いた。
汗が止まらないのだ。ドクン、ドクン、ドクンと心臓が痛み、視界が真っ暗になる。
兎はカフェインの取りすぎと睡眠不足による心不全で倒れてしまう。
一方のカメは対戦相手が倒れたことなど知らず、必死に走っていた。すでにウサギの姿は見えないほど離されてしまっているが、負けるわけにはいかない。カメの背中には甲羅だけではなく、応援してくれる者達とスポンサーの期待を背負っているのだ。
カメは甲羅から栄養ドリンクを取り出す。ウラシマ社から渡されていた、疲労に効果てき面だと言う、特性のドリンクだ。
ゴクゴクとそれを飲むと体中に力が沸き上がってきた。今なら何でもできる気がする。勢いを上げてカメはゴールまで辿り着いた。
だがそこに、告白するはずの恋人の姿は見当たらなかった。
後日、レースの結果の影響もあってウラシマ社の商品が大ヒットした。
「疲労に効果抜群。すっぽんから作られた栄養ドリンク!」
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