幽霊オチ
幸せな生活はほんの些細な出来事で崩れてしまうものだ。
俺はそう呟いた。俺はある日突然、妻から無視されるようになった。理由は分からない。加齢臭のせいかもしれない。
最近は喋りかけても知らん顔をされるし、ご飯も作ってくれなくなった。驚かせようと、入浴中の風呂に乱入しても、妻はため息をつくばかり。
そんな俺に嫌気がさしたのか、妻は突然俺の部屋にあった大事なものを壊し始めた。
やめてくれ、それは学生時代に買ったアイドルのポスター!
ああ、それは30万円で買った幸せになれるツボ!
もう勘弁して。俺が悪かった。だから、そのプラモデルを置いて!
色々壊された後、妻は飾ってあった写真を投げようとして手を止めた。
妻は俺が写った写真を見て悲しそうに言った。
これは壊せないわね...
俺は妻をすり抜けて、その写真を見てみた。
なんとそれは俺の遺影だったのだ!
そこで目が覚めた。俺は自分の鼓動を確かめる。大丈夫だ、ちゃんと動いていた。
俺は横ですやすやと眠っている妻の頬にキスをした。
「どう思います?面白くないですか?」
僕の元にやって来た、売れっ子作家は自慢気に作品を見せてきた。
僕はばっさりと答えた。
「全然面白くないです。特に、実は幽霊でしたってオチをやりたいならもっと上手に書くべきです。」
彼はその返答に首を振る。
「いやいや、オチはそこじゃないですよ。幽霊オチと思わせておいての、夢でした!これは読者もびっくり仰天間違いなしです。」
僕は呆れて言った。
「それこそ夢オチなんて最悪ですよ。それに最後はオチを放り投げて、微妙にいい雰囲気で終わらせようとしてるじゃないですか。こうやって誤魔化そうとするの止めた方がいいですよ。」
彼は悲しそうに言った。
「やっぱり私に面白い作品は書けないようだ。」
僕はそれを聞いて、とある疑問を口にした。
「いやでも、あなたはもっと面白い作品を書いていたじゃないですか。本当にあなたは本物なんですか?」
それを聞いて彼は不敵に答える。
「おお、流石先生だ。気づいてしまいましたか...」
俺は少し身構えて言った。
「まさか貴方自身が幽霊だったとか勘弁してくださいよ。」
彼は大笑いして言った。
「やっぱり、先生は面白い事を言いますね。でも私は幽霊じゃないですよ。私はもっと現実的な話をしに来たんです。」
「現実的な話?」
「はい見ての通り私にはセンスがないようです。だから先生に頼みに来たんです。ゴーストライターの仕事をね。」
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