41.畑の整備とゲストキーについてです

 パートナー達と一緒にギルドハウスに戻ると、ガイルさんやユーリさんがいたので話しかけるよ。

 ガイルさんには家のことでお礼を言わなくちゃいけないからね。


「ガイルさん、ユーリさん、こんばんは」

「お、リーンか。……お前らしくない、ごっつい従魔を連れてるな」

「こんばんは、リーンちゃん。無事アントをワーカーアントにできたのね」

「ワーカーアントじゃなくて、見習いロイヤルワーカーアントだけどね」

「見習いロイヤルワーカーアントって事は、その子はネームド個体という事かしら? アントってネームド個体でも見分けがほとんどつかないのね」

「そうみたいだよ。ユエさんにも聞いたんだけど、アントや見習いロイヤルワーカーアントだと、普通のアントより黒っぽくて光沢があるくらいしか違いがないらしいからね」

「そうなのね。見習いロイヤルワーカーアントだとって言うことは、ファイターアント側だと違いがあるって事なのかしら」

「うーん、ボクもそこまでは聞いてないんだよ」

「どっちにしても、リーンの身長ほどもあるアリって言うのは迫力があるな。モンスターの時とは違って、どことなく愛嬌はあるが」

「そうだね。そうそう、ガイルさん、ボクの家のリフォーム資金を出してくれたって聞いたよ。ありがとうね」

「あー、その件か。あまり気にすんな。……と言っても気にするんだろうから、礼は受け取っておくよ」

「うん。それで、ボクにかけた迷惑って何? 心当たりがないんだけど」

「ああ、それか。レッドのことだよ。これ以上自分勝手な行為で迷惑をかけんなって言ってあったのに、またお前に突っ掛かって行ってたみたいだからな。あいつには再度注意はしたが……まあ、もういなくなった人間だし、これ以上リーンと関わる事も無いだろうよ」

「いなくなったって、追放したの?」


 流石にそれは逆恨みされそうなんだよ。


「追放はしてないぞ。野良パーティに加わって、次の街まで行ったらしい。そこで、ここよりもいいギルドを見つけたから抜けるといって出て行ったな」

「そうなんだ。まあ、ボクとの接点はなくなったわけだし、個人的にはいいことだけど」

「そう言う訳だ。それに、次の街……ツヴァイファムって言うんだが、そこでは色々なギルドが新人プレイヤーを勧誘していたりするからな。そこまでいって瑠璃色の風うちを抜けるプレイヤーは珍しく無いんだよ」

「そうなんだね。ボクもそこまで行ったら抜けた方がいいのかな?」

「いや、残ってもらっても一向に構わないぞ。そこは自分の判断だからな。まあ、俺達が支援するのは、最長でも3番目の街にたどり着くまでと決めてるから、それ以降はサポートしてほしけりゃ素材なりお金なりを用意してもらうけどな」

「わかったんだよ。それじゃあ、その頃までにはどうするか考えておくね」

「そうしてくれ。……そうそう、ハイネの爺さんからお前が農作業をするならって事で、預かってるアイテムがあるんだった。受け取ってくれ」

「……これは? 見た限り、収納用の箱に見えるけど」

「そうだな。見ての通り『収納箱』ってアイテムだ。これがあれば従魔が庭でもアイテム収納ができるからな。ワーカーアントに自動で農作業を任せるなら必要だろうよ」

「そうだね。それじゃあ、遠慮なく使わせてもらうよ」

「そうしてやってくれ。あと、農作業用のくわだのすきだのと伐採用の手斧、それから採掘用のツルハシも作っておいたから受け取ってくれ」

「うん、ありがとう。大切に使わせてもらうよ」

「まあ、壊れそうになったら、俺のところに持ってこい。それじゃあな」

「ばいばい、ガイルさん」


 ガイルさんを見送ったけど、ユーリさんは立ち去らないね。

 何か用事でもあったのかな?


「ユーリさん、ボクに何か用事があった?」

「昨日伝え忘れてた事があったのと、庭に畑を設置するに当たって説明役がいた方が安心かと思ってね。一緒に家に行ってもいい?」

「そう言うことなら大歓迎だよ。それじゃあ、早速行こう」

「そうね、そうしましょう」


 ボクとユーリさんは一緒にボクの家へと移動することにしたよ。

 フォルミちゃんの働く環境もしっかり整えてあげないとね。


 自分の家に帰ってきたら、まずはパートナー達のご飯だね。

 今日はまだ与えてなかったものね。


 皆にはいつも通りのメニューに、シズクちゃんには大好物のワイルドストロベリー。

 シズクちゃんは今日も5つだけ食べてその後は食べなかったよ。

 ユーリさんにも理由を聞いてみたけど、「何でも教えたら面白くないでしょう」って言って教えてくれなかったんだよ。

 食べてくれてはいるんだし、問題はなさそうだからまあいいかな。


 それから新人くんのフォルミ。

 ワーカーアント系は生野菜が好きだって聞いてたけど、ロイヤルなワーカーアントのフォルミちゃんはどうなんだろうね?

 試しに、持っている生野菜数種類に料理で作った生野菜サラダを並べてみたけど、フォルミが選んだのはキャベツだったよ。

 フォルミは嬉しそうに葉っぱを1枚ずつはがして食べてる。

 白菜とかには見向きもしなかったから、キャベツがここにある野菜の中では好物なのかな?

 それなら、後でキャベツの種も用意してこないとね。


 お食事が終わったら、ブラッシング……と行きたい所なんだけど、先に畑の購入を済ませないとね。

 ユーリさん曰く、畑もハウジングメニューから拡張設備として買えるらしいから、そのメニューを見てみるよ。

 するとそこには、確かに畑が売ってたね。

 1つで10個まで育てられる一番安い畑から、1つで20個育てられる高い畑まで、何種類かが売ってるよ。


「ユーリさん、畑ってどれを買った方がいいのかな?」

「うーん、私は農業系プレイはしたことがないから又聞きだけど、従魔や召喚獣に任せられる畑は数が決まってるらしいわ。だからまずは、フォルミだったかしら、そのワーカーアントに聞いてみるといいわ」

「うん? ワーカーアントってしゃべれるの?」

「シズクちゃんのレベルが10を超えてるって事は、リーンちゃんの職業レベルも10になってるわよね。それなら【意思疎通Ⅰ】って言うスキルを覚えてるはずだけど、覚えてるかしら?」

「えーと、ちょっと待ってね。……うん、覚えてたよ」

「だったらそれを使えば、虫系のパートナーとは簡単なやりとりができるはずよ」

「わかったよ。やってみるね」


 ボクは早速【意思疎通Ⅰ】を使用してフォルミに話しかけてみる。


「フォルミ、えーと、ボクの言葉がわかる?」

{うん、わかる。なに、ますたー}


 おお、フォルミの言葉がわかるんだよ。

 でもちょっとカタコトかな?


「フォルミに畑の管理をしてもらいたいんだけど、大丈夫?」

{まかせて、ますたー。がんばる}

「フォルミってどれくらいの畑を管理出来るの?」

{はたけ、6つまで、かんり、できる。でも、ひんしつ、たかいさくもつ、まだつくれない}

「ふむ、畑を6つまでなら管理出来るんだね。一つの畑に植えられる個数は関係ないのかな?」

{こすう、もんだいない。はたけ、6つなら、なんでもいい。でも、こうきゅう、はたけ、まだ、いみない}


 ふむ、わかった情報をまとめると、畑は6つまで管理可能で畑に植えられる作物の数が多くても大丈夫、だけど品質が高いものは作れないから、高級な畑を買ってもまだ意味がない、という事かな。

 それなら、畑一つで20個まで育てられるものを6つ用意した方がいいよね。

 20個育てられる畑で一番安いのは……4,000Gかぁ。

 ゲームを始めてから貯めておいた貯金が一気に減っていくよ……

 でも、ここでお金を使わないと意味がないので、我慢して4,000Gの畑を6つ購入して庭に並べるよ。

 畑の場所は、出入り口の扉からみて裏手側にある空き地でいいかな。

 と言うよりも、畑を設置できる場所はそこしかなかったんだけどね。


 畑の設置が終わったら、育ててもらうものを決めないとです。

 まず、ワイルドストロベリーは確定として、あとはどうしようかな。

 さっき、フォルミが喜んで食べてたキャベツは育てるとして、他に何が育てられるだろうね。


「ねえ、フォルミ。畑ではどんなものが育てられるのかな?」

{はたけ、やさい、やくそう、くだもの、そだてる。じつぶつ、あれば、たね、つくれる}

「おお、実際の完成品があれば種にできるのですね!」

「ああ、リーンちゃん。種にできるものだけど、住人NPCから買ったアイテムは種に変換できないらしいから注意してね」

「え、そうなんだ……」


 試しにフォルミに野菜や果物、それに拾っておいた薬草なんかを渡してみたよ。

 結果、ユーリさんの言葉通り、住人の皆さんから買った野菜や果物はダメで、自分で採取した薬草やユエさんからもらったワイルドストロベリーは種にできたみたい。

 とりあえず、実物1つから種が1つか2つ作れるみたいだから、まずは薬草を持っていた分20個全て種にしてもらって畑20カ所分、それからワイルドストロベリー30個を種に変換してできた種60個を60カ所分育ててもらう事に。

 ……まだ、40カ所分余ってるけどどうしよう。

 キャベツを育てる分は残しておかなきゃだから……あと30ちょっと空いてる計算になるね。


「リーンちゃん。畑で育てるものが足りないなら、プレイヤーがマーケットで売ってる薬草とかを買ってきて、それを種にしてもらって育てればいいと思うわよ」

「なるほどです! それじゃあ、この後で買ってきます」

「そうするといいわ。あと、野菜の種とか肥料は農業ギルドに行けば売ってるからそこで購入するといいわよ」

「わかりました。ありがとうです、ユーリさん」

「どういたしまして。それで、今日、私がリーンちゃんと話したかったことなんだけど、今から大丈夫かしら?」

「えーと、フォルミ、後は任せて大丈夫?」

{まかせて。はたけ、たがやす。あと、できれば、ひりょう、ほしい}

「肥料だね。後で探してくるね」


 フォルミに種や農業用の道具を渡したら、畑の方に向かって歩いて行ったよ。

 これから畑を耕してくれるみたいだね。


「大丈夫みたいです。それで、話って何でしょう?」

「ええと、前にゲストキーってアイテムを渡したのは覚えてるかしら?」

「はい、これですよね」


 ボクはインベントリの『大事なもの』に入っていた鍵を取り出した。

 アイテム名は『ユーリの家のゲストキー』になってるね。


「そう、それね。それを使えば私の家に遊びに来ることができるから、私の従魔達と遊びたくなったら使ってね」

「本当ですか! そんなすごいアイテムだったとは……」

「リーンちゃんもハウジングメニューから『ゲストキーの作成』って項目を使うことで、ゲストキーを作って他の人に渡すことができるって覚えておくといいわよ。……1個作るのに5,000Gかかるから最初はあまり使わない方がいいと思うけど」

「……ここでもお金なんだね。わかりました、覚えておきます。ところで、勝手に他人の家に入って悪さをしたりはできないんですか?」

「ゲストキーで入れるのは庭までだから問題ないわ。それに、他人の家の収納アイテムを勝手に取り出す事もできないからね。あと、ゲストキーを使って誰かが家に来ていたら、そのログが残るから誰が来ていったのかも確認出来るしね」

「わかりました。今度遊びに行かせてもらいますね!!」

「ええ、そうして頂戴。……ああ、それから、種や肥料を買うなら先にプレイヤーのマーケットを調べてみた方がいいかも。そっちの方が安く色々仕入れることが出来る事が多いからね」

「はい、アドバイスありがとうございます」

「それじゃあ、私もこれで失礼するわ。色々やることが増えてきて大変でしょうけど頑張ってね」


 ユーリさんが帰っていった後は、とりあえずパートナー達のブラッシングタイムです。

 今日も皆、ふわふわモフモフになりましたよ。


 畑ではフォルミが頑張って畑を耕しているね。

 アリさんが前脚でくわを使って耕している光景は少しシュールかも?


 さて、今日はログアウト前にキャベツの種や薬草、それから肥料とかも買ってこなきゃいけないし、モフモフタイムは終了して買い物に行くよ。

 それが終わったらフォルミに渡しておやすみなさいだね。

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