18.面倒な事はさっさと済ませてしまいましょう
「え、何を言ってるの? そんなのボクが受ける理由がないじゃない」
そもそも、ファーラビットのテイムはボク一人でも出来る事なんだよね。
そこにガイルさんがレッド達を割り込ませてきただけで。
あ、スズカちゃんには思うところはないよ?
協力的だし、ボクに突っかかるようなこともしてこないからね。
「ふざけんな! 俺の邪魔をしてくれたんだから勝負しやがれ!!」
「どちらかというと邪魔したのはキミの方だよね? キミが邪魔しなければもうファーラビットのテイムは終わってたのに」
「うるさい! お前がさっさとテイムしないのが悪いんだろうが!」
うーん、こっちの話をちっとも聞きやしないね。
はっきり言ってこう言う人間は大っ嫌いなんだけど。
面倒だし、ブラックリストに登録しちゃおうかな。
このゲームもMMOなんだしブラックリストか、それと同じ働きをする機能くらいあるよね。
ブラックリストがありそうなのは……メニューのシステムの項目かな?
「すまない、リーン。ちょっと待ってもらえるか?」
ブラックリストの項目を見つけたので登録をしようとしたら斬魔さんに止められたよ。
「斬魔さん、何か用? ボクとしては早くファーラビットをテイムしたいんだけど」
「すまないが、PvPを受けてやってもらえるか? これでは収拾がつかない」
「うーん、それってボクには関係ないよね?」
「……その通りなんだが。道理を曲げて頼む。
ふむ、
それなら負ける心配自体がなくなるよね。
……ここで考えてる時間も無駄だし、PvPを受けてやるか。
「わかったよ。PvPを受けてあげる。その代わり、私が勝ったら一人でどこにでも行って。キミがいると邪魔されそうだから」
「あ? もう勝ったつもりか? チビガキのくせに調子づきやがって……」
「はいはい、PvPを受けてあげるから早く始めようよ。ユーリさん、どうすればいいの?」
「ええと、メニューを開いて……」
ユーリさんからPvP申請のやり方を聞いて、さっさとレッドに申請を送る。
PvPモードは一対一、HP全損まで戦うデスマッチ形式にしたよ。
レッドの方で申請を受けたみたいで、カウントダウンが始まった。
……10から数え始めないでもいい気がするんだけど。
「吠え面をかくなよ、ガキが」
「はいはい、もうすぐ始まるよ」
カウントダウンは徐々に小さくなっていき……やがて0になったよ。
「行くぞ、このガキが!」
「シズク、Go!」
「ワオン!!」
戦闘開始と同時にシズクちゃんのサンダーボルトが炸裂する。
落雷の轟音と閃光ともに目の前にはPvPの結果が表示されたよ。
もちろん、ボクの勝ちで。
「さて、ボクの勝ちだね。さあ、ウルフでもなんでも好きに狩りに行くといいよ」
「……ふっざけんな!? 何で一対一のバトルで従魔を使えるんだ!! 反則だろうがよ!!」
「一対一のルールでもシズクの攻撃が有効だったのが答えじゃないの?」
「だからそれが反則だって言ってんだよ!!」
負けたって言うのに往生際の悪い男だね。
これ以上、ボクのモフモフタイムを減らしたくないのに……
「ルール上は正しく一対一だった。負けたのはレッド、お前だ」
このPvPをけしかけた斬魔さんが間に入ってくれるみたい。
斬魔さんも引率の一人だからね。
お仕事はしてもらわないと困るよ。
「斬魔さんも。なんで従魔を使うような卑怯者の肩を持つんですか!?」
「そもそもテイマーとサマナーは、従魔や召喚獣を1体連れて一人という判定だ。だからシズクを連れて戦いに挑んだリーンは問題ない」
「でも、実際には二対一でしょう? そんなの許される訳がないじゃないですか」
「システム上正しく判定されている以上、問題はない。それに、他の状況下でのPvPでもテイマーやサマナーはパートナーを連れて戦うのが当たり前だ。テイマー相手にPvPを挑んでパートナー対策をしていないお前が悪い」
「でも、だからって……」
言い訳をダラダラとみっともないなぁ。
「はいはい、そんなのボクには関係ないよ。負けたんだからとっとと好きなところに行きなよ」
「……ちっ、覚えてろよ」
ようやくレッドはどこかに行く気になったみたい。
プレーンウルフのいる平原奥の方に向かって歩いて行ったよ。
「……すまなかったな、リーン。今まではあそこまで身勝手ではなかったのだが」
「今までがどうでも、今日は自分勝手過ぎるでしょ。あんな奴と一緒に行動はしたくないね」
「……ギルドに帰ったらガイルにも頼んでしっかり注意してもらう。……すまないが、俺はレッドの様子を見に行く。それではまたギルドハウスで」
「はーい。斬魔さん、またね」
斬魔さんもパーティを抜けてレッドの事を追いかけていったよ。
……引率って言うのも楽じゃないね。
「……さて、変な空気になっちゃったけど、気を取り直してファーラビットのテイムを目指しましょうか。スズカは引き続きファーラビット相手にスキル取得のための練習を続けてね」
ユーリさんが場を取り成すようにこれからの事を宣言したよ。
……ほんと、引率って大変だよね。
「はい、わかりました」
「……ねえ、ユーリさん。スズカちゃんが練習してるスキルって何?」
「え? ああ、【手加減】って言う特殊スキルよ。これを使うと、モンスターの最大HP以上のダメージを与えてもHPが必ず1だけ残るようになるの。テイマーやサマナーにとっては捕まえるのに便利なスキルね」
なにそれ、モフモフを捕まえるのに必須スキルじゃない!
……でも、なんでスズカちゃんがそのスキルの練習を?
「……スズカちゃんはどっちでもないのに練習してるの?」
「一部のモンスターは瀕死状態にしないとドロップしないアイテムとかがあるのよ。それを手に入れたいときにあると便利なのよね。だから、希望者にはスキルを覚えるように練習させてるのよ」
「それってボクにも使える?」
「スキル取得条件を満たせばね」
「それならボクも覚えたいな」
「……そうね。リーンちゃんもテイマーだから覚えるべきよね。わかったわ、スキル取得のための方法を教えるわね」
「よろしくお願いします、ユーリさん」
「【手加減】を覚えるには『合計100回、モンスターの最大HPの50%以上のダメージを1回の攻撃で与え、なおかつ瀕死状態にする』必要があるわ」
「50%以上のダメージを与えつつ100回瀕死にすればいいんだね。瀕死状態って最大HPの25%以下だよね?」
「そうなるわね。で、その条件を満たすなら、できるだけ弱いモンスターに条件を満たせるうちにやってしまった方がいいのよ」
「なるほど。それでファーラビット相手にわざわざ練習してるんだね」
「そう言う事よ。スズカの現在の攻撃力なら、クリティカルを出さないでファーラビットに攻撃を当てれば条件を満たせるのよね。そう言う訳で、今日はリーンちゃんのお手伝いをしつつスキル修練に来てるのよね」
「なるほど。……それで、ボクにも条件は満たせるかな?」
「まずは普通の攻撃でどれくらいダメージを与えられるのかを調べないとね。……そう言えば、リーンちゃん、【剣】スキルは覚えたの?」
「え、【剣】スキル? どうして?」
「蛇腹剣は分解して使う時は【鞭】スキルでダメージ補正が入るけど、合体して使う時は【剣】スキルでダメージ補正が入るのよ。だから蛇腹剣を使うなら、どちらのスキルももっておいた方がいいのよね」
……なるほど、そんなシステムになってたんだね、この武器。
そう言う事なら【剣】スキルを覚えなきゃいけないかな。
【剣】スキルを覚えるにはSPを2ポイント消費するけど、必要経費と思うしかないよね。
「……うん、【剣】スキルを覚えたよ」
「それじゃあ、ファーラビット相手にダメージを確認してみましょう。悪いけど、スズカは自分で練習していてもらえるかしら。テイムは考えなくてもいいから、攻撃したら倒していて」
「わかりました。それじゃあ、あっちで練習してますね」
スズカちゃんは少し離れたところで練習するみたい。
ボクの方はと言うと、剣として攻撃した場合はダメージが少なすぎてダメで、鞭として攻撃した場合は50%以上のダメージは与えられるけど瀕死にはできない、そういうなんとも中途半端な結果だったんだよ……
「剣で攻撃した場合のダメージが少ないのは、種族的にSTRが少ないせいね。鞭の場合、DEXを参照して攻撃力が決まるから」
「……あれ、ボクって気付かないうちに有効な武器を選択してた?」
「そう言う事になるわね。後は魔法だけど……おそらく、そっちでもそこまでダメージは伸びないでしょうね」
試しに光魔法で攻撃してみたんだけど50%のダメージまでは届かなかったよ。
……ボクの攻撃力って本当に中途半端だね。
「……まあ、攻撃1回で瀕死にすればいいわけでもないし、シズクちゃんに1回攻撃してもらってから鞭モードで叩けばちょうどいいくらいになるんじゃないかしら?」
「シズクちゃん、お願いできる?」
「ワンワン!」
試しにシズクちゃんがファーラビットに
そこにボクの鞭攻撃が当たると……HPの残りが10%位まで減ったよ!
「うん、上手くいったみたいね。それじゃあ、とりあえずその子をテイム……」
「ユーリさん、大変です!!」
「スズカどうかしたの?」
スズカちゃんが慌てた様子で戻ってきたよ?
どうかしたのかな?
「ネームドのファーラビットが現れました! どうしましょう」
……ネームド?
なんだか強そうだけど、それがどうかしたのかな?
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