17.パーティプレイは前途多難です……
「なんでお前がリーダーなんだよ!?」
パーティを組んだのはいいけど、レッドとやらが何やら不満をがなりたてていますよ。
……シズクちゃんが怯えるといけないから、うるさくしないでほしいんだけどね。
なお、今回はユーリさんと斬魔さんもパーティに入っている。
なんでも、参加するパーティのレベルにあわせて高レベル者のレベルを制限するシステムがあるらしく、今回はそれを使ってお手伝いをしてくれるんだって。
なお、ボクは従魔としてシズクちゃんを呼んでるけど、ユーリさんは従魔を呼んでいない。
従魔まで使うと戦力過多だから使わないんだってさ。
「何度も言ってるけど、今日の目標は『ファーラビットのテイム』よ。テイムするのがリーンちゃんなんだから、リーダーもリーンちゃんにすべきだわ」
「でも、俺の方がレベルも上だし歳だっておそらく上だぞ。ましてや、ファーラビットの相手なんてつまらない事をするんだから俺がリーダーでもいいだろうが!」
「別にレベルが高ければえらいわけじゃないし、リアルの年齢なんて
「ちっ、ただでさえ面倒なガキのお守りをしなきゃなんねーのによ。めんどくせえ」
「レッド、このゲームは他のプレイヤーもいるMMORPGだ。自分の都合ばかりで物事を進める事なんてできないぞ」
「はいはい、わかりましたよ。ともかく、あのウサ公どもをさっさと蹴散らせばいいんだろう? 早く行こうぜ」
「……出発を邪魔してたのは君の方だと思うんだけどね」
「うっせーな、ガキが。生意気なことぬかしてやがると手伝ってやんねーぞ」
「ファーラビットなら別に手伝ってもらわなくても、ボクは大丈夫だよ」
「リーンちゃんもそう言わずに。さあ、出発するわよ」
話はまとまったみたいなのでアインスベルの北門から外にでる。
そこに広がっている平原では、結構な数の
「さて、それじゃあ今日の予定のおさらいね。最初の目的は『ファーラビットのテイム』よ。レッドはファーラビットが逃げ回らないように誘導、スズカはファーラビットに攻撃して瀕死の状態にすること。リーンちゃんは瀕死になったファーラビットをテイムで仲間にすることね」
「わかったよ。ボクは攻撃しない方がいいのかな?」
「攻撃役はスズカにお願いするわ。スズカにも一つスキルを覚えさせたいところだから」
「はい、わかりました。よろしくね、リーンちゃん」
「よろしくだよ、スズカちゃん」
「なあ、別に俺はいなくてもいいんじゃねーのか? ファーラビットなんて放っておいてプレーンウルフに行きたいんだけどよ」
「だめだ。お前は威嚇スキルでモンスターの行動をコントロールする練習だ」
「……わかったよ。それじゃ、始めんぞ」
話は終わったとばかりに、レッドがスキルを発動させて近場のファーラビットを威嚇し始めた。
もう、なんでこんなに協調性がないかな!?
「仕方が無いわね。スズカはすぐに攻撃を始めて。スキルの開放条件はわかっているわね?」
「はい、大丈夫です。それでは、行きます!」
3匹ほど襲いかかってきたファーラビットの1匹をスズカちゃんの槍が刺し貫く。
するとファーラビットのHPが一気に減って、残り1割くらいまで減ったよ。
流石、物理攻撃職だね。
「さて、それじゃあ瀕死のファーラビットも準備できたし、リーンちゃんテイムを……」
「オラァ! ターンスラッシュ!」
レッドが何やらスキルを使ったみたいだよ。
すると、レッドの周りにいたファーラビット全てにダメージが入って……
ああ! せっかくスズカちゃんが瀕死にしてくれたファーラビットも巻き込んで全滅しちゃったよ!
「ちょっと、レッド! 何してくれるのさ!!」
「あぁ? さっさとテイムしないお前が悪ぃんだろうが。ちんたらしてんじゃねーよ」
「レッド、これはパーティでの連携訓練だと言ってあるだろう? なぜあんな真似をする?」
「連携訓練って言うならチンタラしてるチビが悪いんだろうが。俺は群がってきたザコどもを倒しただけだぜ?」
「そもそもお前のレベルならファーラビットに囲まれても問題ないはずだ。何故範囲攻撃を使った?」
「そんなの一気に片付けられるからに決まってるだろ? いちいちこんなザコを倒すなんてめんどくさくてやってられねーよ」
「だが、それもパーティプレイの一つだ。まともな連携も取れずに強敵を倒すなんてできないぞ」
「あぁ? ファーラビット程度じゃ連携もクソもないだろうが。ともかく、チビがテイムにミスったんだから次行くぞ」
「誰のせいでテイムができなかったと思ってるのかな?」
「のんびりしてるてめえのせいだろ。次行くぞ!」
そういってレッドは手近なところにいるファーラビットを引き寄せる。
今度は4匹だね。
今回もスズカは一撃でファーラビットを瀕死にするわけだけど、レッドのヤツは、また範囲攻撃で瀕死になったファーラビットも倒してしまったよ。
テイムをするためにはボクの手が届く距離まで近づかなきゃいけないのは事前のミーティングで伝えてあるのに、そんなのお構いなしにファーラビットたちをレッドは倒していく。
その都度、ユーリさんや斬魔さんに怒られてるんだけど、そんなのどこ吹く風と言わんばかりに無視を決め込んでる。
そんな事を繰り返す事数回、毛並みが灰色のファーラビットの中にクリーム色のファーラビットがいたんだよ。
「あれはファーラビットのレア個体ね。本当ならスズカにお願いしたいところだけど、私が手加減で瀕死にするわ。瀕死になったらリーンちゃんがテイムするって事でいいわね?」
「了解、任せて」
「よろしくお願いします。私じゃまだ、レア個体まで上手く手加減できるかわからないので」
「それじゃあ行くわよ。手加減発動、ウィンドカッター」
ユーリさんは前にガイルさんが戦っていたときと同じような青いオーラに包まれてファーラビットを攻撃した。
すると、ファーラビットはHPバーがほとんど残らない状態になってぐったりと倒れ込んだよ。
「それじゃあ、あとはテイムするだけね。リーンちゃんテイムよろしく」
「わかったよ。さあファーラビットちゃん、今すぐ……」
「スラッシュウェイブ!」
ファーラビットをテイムしようと近づいていくと、後ろから衝撃波みたいなエフェクトが飛んできてファーラビットに激突した。
すると、瀕死だったファーラビットのHPがなくなってファーラビットが消えちゃったんだよ!
今のスキル? を使った犯人はもちろん……
「ちょっとレッド! あなた、何をしているの!?」
「ん? ああ、悪ぃ悪ぃ。チビガキが周りにモンスターがいるのにのこのこ近づいていくからよ。露払いしてやろうと思ったら、手が滑っちまった」
「……ファーラビットはこちらから手を出さなければ襲ってこないノンアクティブだ。それは知ってるだろう?」
「ああ、そうだっけか。すっかり忘れてたわ。悪いなチビガキ」
コイツ、とことんボクの邪魔をしないと気が済まないみたいだね。
それならそれでボクにも考えがあるよ。
ユーリさんに教わったとおり、パーティメニューを開いてと……
「……あぁ? おい、チビガキ! 何で俺をパーティから外してんだよ!!」
「そんなの決まってるでしょ? ボクの邪魔ばかりしてるからだよ」
「あぁん? ガキのくせに調子づいてんじゃねえぞ!?」
「ああ、コワイコワイ。そうやって脅せば自分のいいなりになるとでも思ってるのかな?」
「落ち着け、二人とも。……だが、今回の件についてはレッドが一方的に悪い。お前から謝れ」
「誰が謝ったりするかよ! 俺はさっさと強くなってトッププレイヤーの仲間入りがしたいんだからよ!」
「トッププレイヤーと呼ばれる人達は、この程度の事で仲間の邪魔なんてしないわよ? パーティでの連携もできずにトッププレイヤーになろうなんて考えが甘すぎるわ」
「ちっ……ガキが先輩方に可愛がられてるからって調子に乗りやがって」
別にボクは調子に乗ってなどいないけどね。
ただ
「おいチビガキ、PvPで俺と勝負だ! お前が勝ったらウサギ狩りに付き合ってやるよ。だが、俺が勝ったらプレーンウルフを倒しに行くぞ!」
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