7.テイマーギルドのチュートリアル終了です!

「それでは、テイマーの基本スキル【テイム】と【リリース】の説明が終了しました」

「おお、これで講習は終了ですか!?」

「残念だけどもう少し付き合ってもらいます。と言うよりも、これから教えるスキルについても覚えてもらわないと色々困ることになるでしょうから」

「わかりました。それで、どんなスキルを教えてもらえるのでしょう?」

「【コール】と【リターン】です。これらは対になっているスキルですから、きちんと覚えておかないと痛い目を見ますよ」

「【コール】に【リターン】ですか。どんなスキルでしょう?」

「まずは【コール】ですね。これは離れた場所にいる従魔を自分のところに呼び出すスキルです」

「なるほど、召喚みたいなものですね!」

「そうなりますね。ただ、サマナーの召喚と違うのは戦闘中やダンジョン内部では使えないって言うことです。……ああ、ダンジョン内部でも、女神の使徒なら『壊れた女神像』の側なら使えるって話ですけどね」


『壊れた女神像』?

 また新しい単語が出てきたよ。

 そろそろ覚えきれなくなってきてるんだけど、どうしよう……


「『壊れた女神像』というのはなんでしょう?」

「女神像関連については神殿に行って聞くといいですよ。私もあまり詳しくは知らないですし」

「わかりました。それじゃ、後で確認するとします」

「そうしてください。それでは話を戻します。サマナーの召喚のように戦闘中に呼び出せるわけではありませんので過信は禁物です。それとは別に戦闘中でも従魔を入れ替えるスキルはあるのですが……」

「それは教えてもらえないんですか?」

「ギルドランクがEの10まで上がったら教えることができます。……ギルドランクの数え方は講習が終わったら教えてあげますね」

「わかりました。とりあえず、戦闘中とダンジョン内では使えないって事を覚えておけば大丈夫ですね」

「大雑把に言うとそうなりますね。なんで戦闘中やダンジョン内で使えないかというのは、魔力の乱れが生じてスキルが発動しないという説が主流です」

「ともかく使えないって事だけ覚えておきます。それで、【リターン】はどういうスキルなんですか?」

「【リターン】は【コール】の逆で、手元にいる従魔を従魔牧場に送り返すスキルですよ」

「従魔牧場? それってなんですか?」

「契約はしてるけど連れ歩けない従魔達を一時預かりする施設ですね」

「え、従魔って契約しただけ連れ歩けるんじゃないんですか!?」

「一度に連れ歩ける従魔の最大数は3体までです。それ以上の従魔を同時に連れ歩こうとすると、特別な方法が必要になるのですが……」

「またギルドランクが足りないんですね」

「そう言う事ですね。だから、ギルドランクはこまめに上げるように努力して下さいね」

「わかりました。それで、従魔っていつでも3匹連れ歩けるんですか?」

「他の使徒とパーティを組んでいる場合は別です。とりあえず1体は常に連れ歩けますが、2匹目以降はパーティの一人としてカウントされるらしいですね。パーティは最大で6人までって決まっていますので、あなたを含めて5人のパーティだったら従魔は2匹までしか連れ歩けない訳ですね」


 おおう、ここにもモフモフ天国を阻害する要因が……

 これはパーティを組んだとしても5人以上にはならない方がいいね。

 いや、今は完全にボッチだけどさ……


「テイムに成功して連れ歩けないモンスターが出てきた場合でもリターンは発動します。この場合、新しく仲間になったモンスターに対して強制的にリターンが発動しますね」


 つまり新しいパートナーをすぐ使いたい場合は、パートナー枠を空けておくか、戦闘終了後に今いるパートナーをリターンして、その後、コールで呼び出せって事ね。

 面倒だけどそう言うシステムなら仕方が無いよね。


「さて、それじゃあ最後の実践テストです。今連れているパートナーを【リターン】で帰して【コール】で呼び出してみてください」


 なにー!?

 それって、一時的にでもシズクとお別れしなきゃいけないてこと!?


「嫌です」

「……別に失敗したりはしないですよ。それに従魔牧場もテイマーギルドの地下に用意されてますから、万が一の時でもすぐに連れてくることができます。最後の試験だと思って従ってください」


 うう……そう言われると断りづらい……


「わかりました。リターン、シズク。コール、シズク。……はい、ちゃんと成功しましたよ?」

「……リターンの後、もう少し間をおいても良かったと思うのですが……まあ、成功はしているわけだし問題ないですかね」


 とりあえず、無事に合格判定がもらえたようだ。

 これで今度こそ街の外に行けるはず!

 最初の目標は先程見かけたファーラビットだよ!!


「ひとまず講習はこれで終了ですね。お疲れ様でした」

「ありがとうございました。これで、街の外に行ってモフモフを捕まえてきても問題ないですよね!?」

「その前にギルドシステムについて、もう少しお話があるから待ってください。それじゃあ、受付に戻りましょう」


 お話があるというならついて行くしかない。

 本当は一刻も早くモフモフを手に入れたいのだが、今後の事を考えるとギルドとの関係は良好なものにしないとダメだよね。

 訓練場を出て、受付まで戻ってくると、セシルさんはカウンターの中に入り、ボクに営業スマイルを向けてきたよ。


「それでは講習が完了した証をギルドカードに記録しますので提出をお願いします」

「わかったよ。……ええと、どこに行ったのかな?」

「使徒の方ですとインベントリの『大事なもの』というところに入っているようですよ?」


 そうなのか、全然知らなかったよ。

 インベントリを確認してみると、確かにタブで『一般アイテム』と『大事なもの』の2つに分けられている。

『大事なもの』を見てみるとそこにギルドカードが保管されていたよ。


 目的の物は見つかったので、インベントリから取り出してセシルさんに手渡す。

 ギルドカードを受け取ったセシルさんは、受付の後ろ側にある機械にギルドカードをかざして何か作業をしている見たい。


「……これで、ギルドカードの本登録が完了しました。リーンさんはギルドランクFの1からスタートになります」


 戻ってきたギルドカードを確認すると、水色になっていた部分に『F-1』と記載されていた。

 本登録といいどういう意味なのかな?


「それでは改めまして、ギルドランクのシステムを説明させていただきます。各ギルドのランクは本登録された段階で『Fの1』からスタートになります。ギルドカードで水色になっている部分は、テイマーギルドの所属である事の証明です。その中に書いてあるランクが、今のリーンさんのランクとなります」

「『Fの1』って事はランクアップしていくと『Eの1』になったりするの?」

「いえ、ギルドランクは全部で31段階に分かれています。初心者講習を受ける前の段階がランク0の仮登録となります。初心者講習を受けてもらった段階で本登録のランク1にランクアップいたします。ただ、このときのランクについては講習で優秀な成績を収めた方は、いくつか飛び級することもありますね」


 どうせボクは普通の成績でしたよ。


「ランクの数字の前についている『F』ですが、ギルドランクが1~5の場合、『Fランク』となります。同じように、ランク6~10の場合は『Eランク』、その後も5ランク上がる毎に『Dランク』から『Aランク』まで分類されることになります」

「ランクを上げることのメリットってあるの?」

「高ランクのギルドメンバーには様々な特典が与えられます。低いランクの間は教えられない情報ですとか、新しいアイテムの購入、新しい設備の利用許可などです」

「ランクを上げるにはどうしたらいいの?」

「基本的には私達が用意しているクエストを受けてもらう事になります。クエストはあちらの掲示板に掲載してありますので、そちらを確認してください。ただし、クエストには受注ランクが設定されていて、自分のランクの1つ上までのクエストしか受けられません。具体的な例ですと、今のリーンさんは『Fランク』ですから『Eランク』までの依頼しか受けられないことになりますね」

「ふーん。それで、クエストを受けたときのデメリットは?」

「……普通の人はデメリットまでは聞かないんですけどね。クエストを失敗、または放棄する場合ですが、特別な事情がない限り違約金を支払っていただきます。特別な事情というのは、依頼内容が異なっていた場合や、モンスター討伐に行ったときに上位のモンスターが居座っていた場合などです。また、同時にギルド貢献度が下がります。ギルド貢献度というのは、ギルドランクを上げるために必要なポイントのことですね。無理をして上位のクエストを受けて失敗するよりも、自分に見合ったクエストをコツコツクリアすることをお薦めします」


 何となくだけど理解できたよ。

 とにかくクエストを受けまくって、失敗しなければいいって事が。


「早速ですが、何かクエストを受注していきますか?」

「せっかくだけど今はパス。だって、これ以上モフモフを待てないからね!」

「……そうですか。それでは時間ができましたらまたお越しください」

「はーい。それじゃあ、セシルさん、またねー」


 割と長かった初心者講習とギルドランクの説明も終わった!

 さあ、モフモフ天国への第一歩を今度こそ踏み出すのだ!!


「ねえ、そこのあなた。テイマーギルドから出てきたって事はテイマーなの? よければ少しお話ししましょう?」


 ……第一歩を踏み出そうとしたら見知らぬお姉さんに声をかけられてしまったよ。

 ああ、ボクのモフモフ天国はいつになったら始まるんだろうね……

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