6.テイマーギルドのチュートリアルです!

「さて、それではまず【テイム】というスキルがなんなのかから始めましょうか」

「よろしくお願いします!」


 そうだよね、テイムスキルの事を知らないとモフモフを仲間にできないもんね。

 やっぱり座学も大事ですよね!


「テイムスキルというのは【従魔術】スキル内にある基本スキルの1つです。このスキルの効果は『魔物を手なずけて自分の従魔にすること』となります」


 そっかー、やっぱりこのスキルを使わないとモフモフは仲間になってくれないんだね。


「もちろんのことですがテイムスキルを使ったからと言って、必ず従魔になってくれるとは限りません。テイムスキルを成功させるには前段階として色々と準備が必要になります」

「はい、その準備とはなんですか?」

「基本的にはモンスターに自分の強さを見せつけること、すなわち相手を死なせない程度に痛めつけるのが一番わかりやすい方法ですね」


 いきなりストレートな方法が来たー!

 わかりやすく言うと『力尽くで手に入れろ』って事だよね!


「他には方法はないんですか?」

「一番わかりやすい方法はこれなのですが……。そうですね、他の事例としては餌付けなどで仲良くなってからテイムを受け入れてもらうなどもありますね」

「そっちの方がいい気がするんですけど……」

「モンスターにとっては強いものに従うのは当然のことです。なので、戦って力を示すのが一番早い方法になります。餌付けで仲良くなれるのは一部例外ですね。そういった存在は、モンスターの中でも特別視されることになる幻想種ファンタズマと呼ばれる存在がほとんどになります。幻想種ファンタズマは賢く無意味な争いは嫌う性質のものが多いですので、戦闘で力を示すのが最適解になるとは限りません。……まあ、ドラゴンのような力が強いものを崇める幻想種ファンタズマは、戦闘で力を示すのが効果的ですが」


 最初の説明からドラゴンとか出てきちゃったよ!

 それにしても幻想種ファンタズマかー。

 きっと、ファンタジーな生物達なんだろうなー。


「念のため言っておきますが、リーンさんが大事に抱きしめているライトニングシーズーも幻想種ファンタズマですよ? 今の段階では幼体であるライトニングシーズーですが、成長すればたった1匹でも街に壊滅的な被害を与えられるような、強力な自然災害を巻き起こせる幻想種ファンタズマになります」


 ……わお、シズクちゃんの意外な真実が発覚。

 シズクちゃん、カワイイのに幻想種ファンタズマなんだ。

 そして成長すると生きた自然災害になるんだ……


「話を戻しましょう。テイムスキルを成功させるには、とにかくモンスター側の同意の意思が必要になります。戦ったり餌付けをしたりするのは、そう言った同意を得られやすくするための手段ですね」

「はい。力を示すのって一人で行った方がいいんですか? 他のプレイヤーや従魔の力を借りちゃまずいですか?」

「プレイヤーというのは女神の使徒の別称でしたね。その辺りはモンスターの性格によります。群れる事を基本とするモンスターは、大勢でかかっていってもあまり気にしません。逆に群れる事を嫌うモンスターの場合、他の使徒の力を借りるのはあまりお薦めできません。ただ、テイムが成功するかどうかは運次第な面が多いですので、テイムの成功率を上げる方法の一つ程度に考えておいてください。女神の使徒は死んでも復活すると聞いていますが、テイムのために毎回必要以上に命をかけるのはお薦めできません」


 ふむ、テイムをするにはモンスターの性格も考慮しなきゃいけないのね。

 これは意外と面倒なシステムかもだよ。


「それではテイムの実践をしてみましょうか。今回はこちらでテイム慣れをしたファーラビットを用意しています。この子にテイムが成功するか試してみてください」

「……うわぁ、モフモフウサギだ! これは是非ともテイムしないと!」

「あー、言いにくいのですが、テイムに成功してもその子を差し上げることはできませんので諦めてください」

「そんな!」


 こんなモフモフをテイムできても諦めろと!?


「……ファーラビットは街の周囲にある草原に多数生息しています。最初のテイム相手としては簡単な方ですし、講習が終わったらそちらで試してみてください」

「……わかりました。この講習が終わったら可及的速やかにテイムしてきます」

「その意気込みは大事ですよ。それではテイムを試してみてください」


 こちらを見つめる人なつっこそうなウサギに手のひらを向ける。

 そしてスキル発動のためのキーワードを叫ぶ。


「テイム!」


 テイムスキルが発動し、視界に見えているボクのMPが消費される。

 テイム1回のMP消費量は4ポイントのようだね。


 さて、テイムをしたウサギさんの様子だが……


「……テイムに失敗したみたいですね。さすがに一回で成功するほど甘くはないです」

「これってさっき説明してもらった『力尽くで奪い取る』を実践していないからじゃないですか?」

「この子はテイムしやすいように普段から調教しています。そんな事をしなくとも何回かテイムを使えば成功するはずですよ。念のためMPポーションも用意してありますので心配せずにどんどん使ってください」

「わかりました。それじゃあ、改めて、テイム!」


 ……2回目もやっぱりダメだったっぽい。

 その後も何回か失敗を繰り返して、6回目のテイムを実行。

 そうすると、ウサギの体が光ってボクにじゃれついてきた!


「6回目で成功ですか。なかなかの腕前ですね。一般的な使徒達の成功回数は平均して10~12回ですのに」


 どうやらボクのテイムはなかなか上手なようだね。

 さて、とりあえずこのモフモフを堪能……


「それでは次のステップに移りましょうか。次は契約したモンスターとの契約を解除する【リリース】というスキルについてです」

「えっ!? もうこの子を手放さなきゃいけないの!?」

「早く講習を終えれば、それだけ早く街の外に行けますよ?」


 くっ、そんな事を言われたらおとなしく引き下がるしかないじゃないか。

 ……さようなら、モフモフウサギちゃん……


「【従魔術】の基本スキルの1つに【リリース】というスキルがあります。このスキルを使えば、従魔との契約を解除できます」

「……それって間違えて大事なシズクとの契約も解除しちゃわない? その辺は大丈夫?」

「【リリース】は同一個体に対して短時間に二度スキルを使用しないと効果を発揮しないので大丈夫です。それから幻想種ファンタズマの場合ですと、主人と従魔の結びつきが非常に強くなるため【リリース】では契約解除ができません。他の手段を使う必要があります」


 それならひとまず安心かな。

 間違ってシズクとの契約を解除しちゃったら、それだけでこのゲームをやる意味がなくなるよ。


「さて、リリースを試してもらうには本契約を済ませなければいけませんね。ファーラビットに名前をつけてあげてください」

「すぐにお別れするのに?」

「それでも本契約は必要なんです。何でも構いませんのでよろしくお願いします」

「それじゃあ君の名前はウサギちゃんね」

「……随分、ストレートな名前ですが、大抵の人は同じようなものですからね。それでは、テイムの時と同じようにリリースを使ってみてください」

「わかりました。リリース」


 リリーススキルを使うとシステムメッセージが表示された。


〈『ウサギちゃん』相手にリリースが使用されました。契約を解除する場合は1分以内に再度リリースを使用してください〉


 システムメッセージに促されるまま、もう一度ウサギちゃんにリリースを使用する。

 そうしたらウサギちゃんの体が光って、走り去って行ってしまった。


 ちょっと前はじゃれついてきたのになんだかすごいショック……


「リリースの確認もできたようですね。それではリリーススキルの必要性について説明いたしましょう」

「……そう言えばリリーススキルって、従魔を集めるならあまり意味がないですよね」

「はい。集める上では必要ありません。ですが、従魔と契約出来る数には限りがあります。最初の段階で従魔にできる最大契約数は全部で7匹になります。これは職業がテイマーかサマナーの場合のみとなります」

「他の職業だと数が違うの?」

「他の職業の場合ですと、まずは【使役の心得】と言うスキルを覚える必要があります。これはテイマーの【使役】【従魔術】、サマナーの【召喚】【召喚術】とは似て非なるものなのです。彼らの場合ですと、どれだけスキルを磨いても従魔、あるいは召喚獣にできるモンスターの数は最大で5匹しか契約出来ません」

「ボク達テイマーやサマナーは違うの?」

「はい、違います。テイマーやサマナーは職業スキルである【使役】と【従魔術】、あるいは【召喚】と【召喚術】のスキルレベルを上げることで最大契約数を増やすことができます。具体的には、職業スキルを覚えた段階で1匹ずつ、その後、スキルレベルが5の倍数に達する度に1匹分の契約数が増えていきます。なお、最大契約数の上限は50となっています」


 うーん、50匹までしかモフモフと契約出来ないのか……

 攻略サイトを見る限りだと、モフモフ、と言うかモンスターの数はもっともっと多いはずなんだけど……


「最大契約数を超えての契約は本来できません。ですが、別の方法で最大契約数以上の契約をすることは可能となっています」

「それ本当!? どうすればいいの!?」

「そちらの情報開示についてはギルドランクがCランク以上になってからの開示になります。なので、頑張ってギルドランクを上げてくださいね」

「わかりました! 全てはモフモフのために!」


 最大契約数以上のモフモフを仲間にできるのか!

 これは絶対に方法を聞き出さないとね!

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