5.テイマーギルドに訪問です!

 どーも、皆さん。

 響、改め、リーン=プレイバードです。


 アドラステア世界に降り立ったボクですが、現在街門からテイマーギルドへと向かっております。


 何故かって?


 新たなモフモフを見つけるために街の外へと突撃をかけようとしたら、門番の方々に止められたのですよ。

 なんでも「身分証作りとアイリア大陸の案内も兼ねて一度ギルドに行ってこい」と言われてしまったわけでして。


 これってつまり、RPGでよくあるチュートリアル的強制イベントですよね。

 つまり、チュートリアルはまだ終わってはいなかったと。


 そんなわけでミニマップに表示されている目印を頼りに、テイマーギルドへの道をとぼとぼと歩いてるわけです。

 ……串焼き肉や果物ジュース、ホットドッグなどなどを抱えて。


 別に買ったわけじゃないですよ。

 街門からテイマーギルドに向かう道程に露店街があって、そこを通りかかったら、


「お、その服装は新人か? こんな時期に珍しいな。俺のとこの串焼き持ってけ!」

「あら、ルーキーが来たのね。子犬を連れてるって事はテイマーかしら。テイマーギルドはこの先よ。ついでに私のお店のジュースもプレゼントするわ。……ああ、今日は無料サービスにしておいてあげるから気にしないで持って行きなさい。気に入ったら今度は買ってね」

「おう、ルーキー。俺んとこのホットドッグも持ってけや。お代はいらねーからよ。これから頑張るんだぞ」


 などなど、露店の皆様のご厚意で色々な食料が集まってくるわけです。


 このゲームはNPCとプレイヤーがすぐには判別が出来ないのですよ。

 NPCも非常に高度なAIを積んでいて、動作がすごく人間的です。

 まあ、近年のVRMMORPGにはごく一般的なことらしいのですけどね。


 そして、NPCとプレイヤーを分けるようなアイコンや名前表示などもありません。

 ミニマップには他のキャラクターがアイコンで表示されるのですが、自分のパーティメンバーなどは青色、友好的あるいは非敵対的キャラクターは緑色、モンスターなどの敵対的存在は赤色と言った具合に色分けされています。

 でも、緑色のアイコンだからと言ってプレイヤーともNPCともわからないのがこの世界なのです。

 実際に接してみて、どちらなのか判断するしかないのがこの世界のルールなんですって。


 そう言う訳で、今まであってきた露店の皆様もどっちなのかわかりませんが……ボクの装備を見てルーキーだとわかるんですから、きっとプレイヤーの皆様ですよねー。


 あと、NPC相手に『NPC』と言うのは失礼に当たると注意されてました。

 このゲームでは一般的にNPCの事を住人と呼ぶことになっているそうですよ。


 あまりNPC呼ばわりしているとNPCからの好感度が下がってしまい、色々不便が生じると攻略サイトに書かれていたのです。

『初心者向けの注意事項』というわかりやすいページにまとめられていたので、ボクでもしっかり読んでましたよ。


 露店の皆様も商品を1つずつ渡してくるわけでなく、2つ3つとまとめて渡してくれました。

 多い人では10個くらい渡そうとしてきた人もいます。

 何となく人の優しさに触れてほっこりしたところです。

 初期アイテムの携帯食料も含めて、満腹度が減ってきたら食べさせていただきましょう。


 そんな諸先輩方? からの歓迎を受けながら歩くこと暫し、ようやく目的地であるテイマーギルドにご到着です。

 早いところ手続きを済ませて、モフモフを探しに行かなくては!


「たのもー!」


 ボクは勢いよくテイマーギルドの扉を開けます。

 こういうときは勢いが大事ですからね!


 テイマーギルドの中は割と……というか、他の利用者がいないんじゃないかと思わんばかりにガラガラです。

 ですが、人がいないという事はすぐに用事を済ませられるという事でもあるわけでして。

 早速、受付にいるお姉さんに話しかけるとしましょうか。


 他に人もいないですし。


「ごめんください。ここがテイマーギルドであってますよね? 新人テイマーです。街の外に行きたいので身分証をお願いします!」

「あら、いらっしゃいませ、小さな旅人さん。ここはテイマーギルドであってますよ。身分証を作るにはいくつか手続きが必要ですから、お手数ですがそちらをお願いしますね」

「わかりました。それで何をすればいいですか?」

「まずはこちらの記入をお願いします。文字は読めますよね?」

「はい大丈夫です。それでは、サクサク書かせていただきますよ」


 渡された用紙には、名前や(テイマーしかありえないのに)職業、種族、得意な武器や魔法などなど、いくつかの記入項目があったよ。

 記入自体は日本語でOKだったので、サクサクと記入事項を埋めていきます。

 全てを書き終えたら受付のお姉さんに用紙を返却です。


「……はい、テイマーギルドへの登録申請を受け付けました。それではこちらのプレートに魔力を流してください。このプレートがギルドカードとなり、身分証になります。プレートのこの部分が水色になったら登録完了です」

「わかりました。……これでいいです?」

「はい、無事登録完了です。こちらのカードは他のギルドでも使うことがありますので、なくさないように注意してくださいね」

「他のギルドでも使うのですか?」

「露店などで商売をする時は商業ギルドに行かなければなりません。あと、テイマーの方でも他の職業ギルドと兼業する人は多いですよ」

「なるほどです。それじゃあ、自分が関係しそうなギルドは片っ端から登録した方がいいんですよね?」

「いいえ、ギルドへの登録は全部で5カ所までとなっています。自分の職業ギルドを登録しない人はいないので、実質的には4つのギルドを選択することになりますね」

「……意外とシビアだ。じゃあ、それ以上登録したくなった場合、どうすれば?」

「いずれかのギルドから脱退していただく必要があります。その際に、ギルドランクに応じた脱退料が発生しますので注意してください」


 ここでもお金か!

 やっぱり世間はどこに行ってもお金が一番なのか!

 一番はモフモフのはずなのに!!


「……ああ、でも。商業ギルドと生産ギルドについては、所属しなくても利用できますのでご心配なく」

「その2つのギルドはどういった立ち位置なのです?」

「商業ギルドは露店や店舗、住宅などの販売を取り仕切っているギルドです。商業ギルドの許可無しに露店を開くと、罰金が発生しますので注意してください。生産ギルドは主に生産職が利用する施設です。生産設備の貸し出しなども行っているので、何か生産したい場合はそちらに行くといいでしょう。ちなみに、簡単な素材でしたら生産ギルドの中で買えますよ」


 思ったより大事なギルドだった!

 それじゃあ、料理やポーションを作るときとかは生産ギルドに行けばいいのかな?


「あの、露店以外でアイテムの取引をする場合でも商業ギルドに行かなければダメなのですか?」

「個人間でのアイテム取引については問題ありません。あくまでも露店として活動する場合に許可が必要なんです」

「わかりました。それじゃ、気をつけますね」


 さあ、旅立ちの準備は今度こそ整った!

 いざ、モフモフ探しの旅へ!


「ああ、少し待ってください。テイマーギルドの初心者講習を受けてもらいます。これはテイマーにとって必須事項になりますので、こちらにどうぞ」

「えー、ボクはモフモフを探しに行きたいのに。それって今日受けなきゃダメです?」

「新しいモンスターをパートナーにしたいのでしたら、尚更受けた方がいいですよ。テイマーの基本にして奥義、【テイム】について説明することになります。後は、契約従魔の制限数や各種注意事項の説明ですね」


 テイムについて講習が受けられるのか!

 それは後回しにできないかも!


「そう言うことなら喜んで受けさせてもらいます! さあ、早く早く!」

「そんなに急がなくても誰も逃げたりはしませんよ。講習会場はこの奥になりますのでついてきてくださいね」


 受付にあったベルを鳴らしてからギルドの奥に向かう受付さんの後を追って、ボクはギルド奥へと足を運ぶ。

 ……ただ、受付さんは兎獣人で、ボクの目の前には小さな尻尾がピョコピョコと揺れているんだよ。

 ボクを誘惑するなんてヒドイ受付さんだ!


 尻尾をモフりたい誘惑に抗いながら着いて行くと、大きなグラウンドのような場所に着いた。


「ここが講習会場の訓練所です。今日の講習はBランクテイマーである、私、セシルが担当させていただきます」


 えー!

 受付さん、Bランクテイマーだったの!?


 Bランクテイマーというのがどれくらいすごいのかわからないけど、なんだかすごそうな肩書きなんだよ!

 でも……


「セシルさん。受付はいいんですか?」

「先程交代要員を呼んでからきましたので大丈夫です。……それに、テイマーギルドに新人が来るなんて何ヶ月ぶりか……」


 最後の方は聞こえなかったけど、とりあえず大丈夫っぽい。

 それなら早速テイムのスキルについて教えてもらわないと!


「さて、それでは講習を始めさせていただきます。準備はよろしいですか?」

「もっちろんだよ! さあ、早く早く!」

「元気なようで結構です。それではまず、テイムについてのお勉強から始めましょうか」


 えー、こんなグラウンドみたいな場所に来て座学から入るのー?

 テンションは下がってしまったけど、モフモフ天国のためなんだからキッチリと授業を受けなきゃだね!

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