第3話 神になる
オラの酒造りはあれがら何年も続いだ。
酒造り
んだべな。
酒っこ造るどって畑やめで米
酒っこさ合う米こしゃねねがら、今もまだ試行錯誤
米も品種によってぁ味も違う
ご近所さんとはいえ譲り渡す時にゃ寂すぃ思いも
今でも立派なチャイ菜どナース、トメイドが育って、街さ売りぃ行げば人気あって
隣の父さんも喜んでらみでんたな。
大事に育ででけるがらいがったぁ。
んだんだ。
オラなの酒っこ造りもドブログなば旨ぇな造れるよになったなしゃ。
いづだったが忘れだのも、ゴブリンぁこの村さ来て
旨ぇドブログになったがら今度は日本酒造り頑張ってらどごよ。
ん?
な
それぁよ、オラじょな虫歯あるんだのもよぉ、どぉもその虫歯さ菌あるなが駄目なんでねがな?
まぁその前にいろいろどオラも考えでみだなよ。
日本酒っちゅーなは……
いや、酒っちゅーなは元々神様さお供えするもんでねっけがなって思い出
んだがら神様さ頼まねねべがど思って、家ぼっこして神社に建で替えだ。
オラ家が神社ぃなったなひゃ。
お経だのなんだのぁ何もわがらねがら、オラの感覚で適当に作って読んでみだ。
効果なば何もねっけのも、村の人達もオラやってる事さ興味持ってお参りに来るよになったっけな。
ようはオラが酒造る為に建でだ神社が、この村の神社、
そさ住んでるオラは神主さん
それがらも毎週酒っこ造ってみるのも酸っぺぐなる。
この頃にゃそのまま捨てるなも勿体ねがどって、酢ど
なんぼ上手ぐ酒っこ造れねくても、オラの酒への執念っちゅのは衰える事ぁねがった。
んでそれがら
へば何とす。
村の
(米どご口さ
こんた事人さ頼んでいがわがらねがったんだのもよ。
さすがぃオラだって悩んだおん。
んだのもノルドさんの娘っ子ぁオラどさ協力
メルちゃんって言う可愛い娘っ子だ。
まんだ二十歳にもならね娘っ子だのも、オラどさもいぐ
オラがゴブリンどご倒すな見で、かっこいって思ったら
オラも歳なばとったのもかっこいって言われれば嬉
年甲斐もねぐ喜んだおん。
んだのもな。
メルちゃんはこれがらいい人見っけで幸せぃなんねねがらよぉ。
指一本も触れでねど?
まぁ手伝ってけるっちゅーがら神社の事ど酒造り手伝ってもらったんだのもな。
オラなの娘みでんたおんだおの。
早ぐいい人見っかればいいなど思ってだぁ。
呑んだ時ぁ感動して涙ぁ出できたっけでゃ。
女の人がやれば酒っこになるがども思ったんだのも、メルちゃんさなば虫歯ねぇなしゃ。
おそらぐこの虫歯が影響してるんでねがって事でオラは答え出
これがら毎日ドブログ呑めるど思えば、オラはそれだげで幸せだど思ってらったんだぁ。
ところ、が、だ。
人の欲望じょな恐ろしもんだ……
もっと旨ぇドブログを……
あわよくば日本酒を……
出来る事だば旨ぇ日本酒呑みでぇなってなってきたなしゃ。
それで今に至るわげよ。
米作りがら始めで、温度どが湿度さも気ぃ使って、いろいろど試してるわげしゃ。
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今日も村外れさある田んぼさ行って、水の管理して草毟って。
肉食いでがらまだ鳥でも獲ろがなーなんて考えでらった。
「
「はぁ、はぁっ…… カズオさんっ…… 村が…… 村さ山賊の一味がっ!!」
オラぁ迷わず走り出
この村でも聞いだ事はある。
山賊っちゅーのは村人ぁ皆殺しにして何でもかんでも奪ってぐ極悪非道な人間達。
何人いるがは知らねのも、村の皆んなどご守らねば
ノルドさん家は大丈夫みでんたがら通り過ぎ
んだのも避難さねば危ねがも
「ノルドさーん!! 山賊来てらら
家さ向がって叫んで走った。
家がらノルドさん出で来た
オラ家さ来た時ぁ神社が山賊に囲まれでらっけ。
皆んなして避難して来たんだがもしれね。
村の何人だべ……
十五人
血ぃ流して動
オラの頭の中ぁ真っ白ぃなってしまって、
「ああ? なんだシジイ。テメーもぶっ殺してやっからよぉ。動くなよ?」
腹刺され
「あ? この…… シジイ、刺さんねぇ……」
オラは持ってだ鎌で山賊の首切り落どした。
草刈り用の鎌だのも、村の人がら買ってもらった鉄の鎌。
そっからは頭の後ろ痺れできて覚えでねぇ。
何も
気ぃ付いだば血の付いだメルちゃんがオラどご抱き留めて泣いでらっけ。
周りさは村の人達の死体ど首のねぇ山賊達。
おそらぐ……
オラが全員の首刈ったんだべおん。
死んだ村の人達どご見で、生き残った人達も泣いでらな。
辛いな……
悲しいな……
仲良ぐしてけだ人達が死ぬのは辛いな……
んだのも……
村の人達死んだ悲しみよりもよ……
オラが人殺したって事が……
山賊どオラは……
変わらね……
「う゛あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
山賊達が来た日から一月。
死んでいった村の人達の弔いを終えて、皆んな悲しいながらもいつもの日常に戻っていく。
私はいつものように神社を掃除し、お神酒の発酵具合を確認する。
これはいつもと変わらない日常なはずなのに、彼はここにいない。
村人達を埋葬し、弔いの為のお経を読み、全員の前で涙を流した彼はお神酒を村人全員に振る舞った。
美味しいお酒と酢の物。
彼が毎日口にしていた物だ。
いつも美味しい、美味しいと言っていたはずなのに、その日は一言もその言葉を発する事はなかった。
そして浴びる程に酒を呑み、泥酔し、恥も外聞も捨てて泣き叫んだ彼は、翌日の朝にはいなくなってしまった。
何故いなくなったのかはわからない。
私達に楽しみを与えてくれた人。
私達に豊かさを与えてくれた人。
そして私達を命懸けで守ってくれた人。
そんな人が悲しみ、苦しみ、絶望を抱きながらいなくなってしまった。
私達は彼に何も返せていないのに。
会いたい。
会いたいよ……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
半年。
あれから一度として、村は魔獣に襲われる事がなくなった。
誰かがこの村を守っていてくれるのだろう。
それはカズオさんではないかと村の人達は信じて疑わない。
私は巫女装束を着て神社の仕事をする。
カズオさんがいなくなる前に注文してくれていたという、神社で働く女性の衣装なのだそうだ。
彼がいなくなってから、しばらくして街から届けられた衣装。
「いつ見ても似合うねぇメルちゃん。カズオさんにも見せてやりたいねぇ」
「ありがとう、お婆ちゃん。でもね、カズオさんは見てくれてると思うの」
村長さん家のお婆ちゃん。
優しくてカズオさんとも仲が良かったみたい。
「そうかい? いいや、そうだね。彼は私らにとって神様みたいなもんだからねぇ」
「うふふっ。お酒の大好きな神様ね」
「今日もお神酒は捧げたのかい?」
「勿論よ! カズオさんが呑んでくださるもの」
「そうだね…… そうであるといいねぇ」
お婆ちゃんは笑顔を見せて立ち上がった。
やはりその笑顔も少しだけ寂しそう。
「帰り道、気を付けてね」
「はい、ありがとね」
お婆ちゃんを見送って私は仕事に戻る。
私の仕事はお神酒造り。
お米作りは村の人達で協力してくれるし、神社の管理をしてお神酒を造るのが私の仕事。
これは私が死ぬまで誰にも譲らない。
そしてお神酒は村の誰が呑むわけでもない。
私は神様(彼)の為だけにお神酒を造り続けるんだ……
田舎のおっさん異世界へ 〜やがて神となる〜 白銀 六花 @Platina_Rocca
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