第2話 酒と魔物

 うーん……

 やっぱり違うんだよなぁ……

 オラ飲みで酒ってゆーのはこうでねぇ。

 このいっつも飲んでる酒っこぁ全然駄目だ!

 もう一年ぐれ飲んでるのも全然旨ぐねぇんだ!

 こったなでこんなので酔っ払うわげねべ!!


 オラはしゃ、酒っこどご呑むながいいなしゃ。


 わがるが?


 オメさも……


 酒っこっちゅのは酔えばいいわげでねいいわけじゃない

 旨ぇて呑んでこそ酒だべった!


 なぁ!?

 そう思うべ!?


 ヒック……


 オラぁ全然酔ってねがらよぉ……


 ヒック……


 楽ぐ酔っ払える旨え酒呑みでな!!


 んだのも夜だもぉ寝ふてぇ……

 だえだだめだこりゃ、寝る……




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 よ、オラ決めだ!

 ドブログドブロク造る!!


 さすがに日本酒は無理だのもよ。

 ドブログなば米発酵させでオラでも造れるべ?

 造り方何もわがんねのも、何事にも挑戦っちゅのが必要なんだ!


 確か酒作るにゃ米どこうじど水必要だべ?

 麹って何だっけな……

 麹…… 菌?

 んだ、麹菌だ!

 麹菌なんてどさあるなよ!?


 んだのも菌どごへればを入れれば発酵するあんでねっけがするんじゃなかったかな?

 どごだがどこかで聞いだ事あるな……

 口噛み酒だっけがな?

 米噛んで口の中さある菌で発酵させで酒にするがったはず。


 よ

 米噛んで酒っこ造ってみるべ!


 っちゅーわげでこの日がらオラの酒造りが始まったわげよ。




 村の人がらもらってだ米ど入れ物用意したら……

 あどは何だ?


 この米じょなそのまま噛むんだべが?

 それとも炊いでがら噛むんだべが?


 わがんねどっちもやってみるが……




 米炊いでまずはこっちがら始めるべ。

 炊いだ米を口さ含んでっかり噛む。

 どんけ噛めばいがわがらねのも……

 あ、飲んでまった。


 へばもう一口。


 とりあえずさっとが噛んで、皿さぎ出す。

 これを繰り返てげばいいべ。




 大っき皿さいっぺいっぱいになったこの…… なんだべ。

 噛み出した米!

 これどご瓶はねぇがら陶器の入れ物さ入れでいぐ。




 よ

 こごまでで五っつでぎだ。


 次は生米ど水口さへで入れてやるなが……

 めんどくせのも酒っこの為だど思えば頑張れる。






 よぐわがんねまま口噛み酒造りてみだんだのも、一晩経ってどうなってるべな……

 とりあえず家の床下で寝がせでみだのも。




 床板外して被せでだ布取ってみだらなんだが泡立ってる。

 ぶくっぶくって発酵てるみでんた!

 炊いだ米も炊いでね米もどっちでも発酵するみんたな!

 これでばらぐせばアルコールになって酒っこになるんでねっけがな!?

 こんたに簡単に造れるど思ってねがった!


 よー

 こりゃ楽みだ。

 ちゃんとアルコールなるまで大人ぐ待づべ!






 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 あれがら一週間。

 まんず一つ呑んでみるべがな。


 炊いだ方がらいってみるが……


 コップさ掬って見るのも白濁りしてでドブログみんたな。

 香りは……

 うん、アルコールの香りもするのも…… 酸っぺんた気もするな。


 よ

 まんず一口……


 酸っぺ!?


 あやおがしなやあらおかしいな酢みでんたぐ酢のようになってらおんだ。

 これなば失敗がも知れねな……




 へば次は炊いでね方……

 こっちも白濁りすてるすドブログにゃ見えるんだのも。

 香りはこれも似だぃんたような酸っぺ香りする。


 飲んでみでもやっぱり酸っぺがった……




 楽みにてだのも、やっぱりそう簡単に造れるもんでもねべな!

 一回失敗たがらって諦めでらいね!




 オラの酒造りはこっから始まったんだ。

 これがオレの趣味、仕事、そて生きがいさなってぐどはこの時は思ってねがったんだのも……






 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 酒造りも何ヶ月なったべ。

 農作業ながら毎週毎週新ぐ酒っこ造りて過ごてらったなひゃ。

 何十回って失敗すて、それでも諦め切れねくてまだ造る。

 噛んでは吐ぎ出て発酵させる。

 毎週同じ事繰り返た。


 そんた日々を送ってだんだのも、村もずっと平和なわげでもね。

 村の近くさゴブリンっちゅー魔物の群れが住み着いだんだど。


 たまーに畑の野菜どご食われるだげで、人の被害は出でねがったんだけどよぉ。

 ばらぐたっけ村の方さ集団で襲って来たなしゃ。




 オラの酒造りの味見の日。


「きゃあぁぁぁあ!!」


「うわぁぁあ!! 皆んな逃げろぉお!!」


 村の外れの方さ住んでだ人達が逃げで来た。

 オラのどさとこに聞ごえでくるまでばらぐ掛がるがら、気付ぐなさ遅ぐなったなしゃ。


 オラは皆んなどご守るどってとしてクワ持って走って行った。

 皆んなて逃げで来る方ど反対側さ向がえばいるべどいるだろうと思ってな。




 走って行ったばゴブリンがらぶん殴られでる村人いだがら、まんずその人どご助けるどってようとして魔法撃ってゴブリンどご倒すた。


『グア゛ァァァア゛!!』


 火ぃちで付いて叫んだなは熱っちして転がり回る。

 放っといでも死ぬべがら、その横さいだなどごいたのをクワで頭を叩ぎ割ってやった。


「大丈夫だが!? 死んでねべな!?」


「う…… うぁ…… うちの家ぞ…… くが……」


 あや、村外れのノルドさんでねがじゃないか

 確か奥さんど娘っ子いだっけな……


「待ってれよ! 助けでくっからな!」


 ゴブリンっちゅー魔物は確か欲望のまんま生ぎでるんでねっけが。

 急がねば大変な事ぃなっちまう……


 オラはゴブリンどご探て全力で走った。




 村の一番遠ぐさある家。

 こごどご根城にたんじゃねべが……


 オラはクワどご握り締めで家の中さひゃってった入って行った


 ひゃった瞬間に頭の上がら飛び掛がられで、オラもどでんすて驚いて家の壁さ叩き付けでまってよ……

 家ぼっこすて壊してまったのもあどで謝んねばな。


 オラやがますうるさい音させでまったがら、奥の方がらゴブリン三匹出できた。

 奥の部屋がらは女子おなごの声聞ごえるがら間違いね。

 こごのゴブリン皆ぶっ殺せば助けらる。


 オラは必死でゴブリンどごクワで叩いだ。

 三匹も相手にたら魔法どが考えでらいねがらな。

 ありったげの力でぶ殴ってやったなしゃ。




 三匹殺てがら奥さひゃってったば入っていったら、ゴブリンがら掴まれでる女子どその娘さんだべな。

 二人いでまだ無事みでんた。


 立ぢ上がったゴブリンは他の奴より大っきて、群れのボスみでんた奴なんだべな。

 斧持って吠えながらオラさ向がって来たわげよ。


 オラだって負げでらねがらよぉ。

 クワ構えでありったげ叫んでやった。

「おっかねよぉ!!」ってな。


 んだのもだけどオラの魔力は強えんだべな。

 斧振り上げだどさ魔法撃ってやったば火ダルマなって苦しんだっけ。

 あどはオラのクワ振り下ろせば簡単に勝でだ。


「大丈夫だが!? ノルドさんの奥さんど娘さんだべ!?」


「は、はい! 助けてくれてどうもありがとうございますっ!」


「ありがとうおじちゃぁぁあん!!」


 おっかねがった怖かったんだべなぁ……

 抱ぎ合って泣いでらおん。


 あ、泣いでる場合でね!!


「あっちさノルドさん倒れでらがら来てけれ!! あのままだば死んでまうがもすんねど!!」


「旦那は無事なんですか!? 連れて行ってください!!」


 オラの方が足速えしノルドさん運ばねねがらないといけないから、荷車さ乗せで奥さん達どご連れで行ぐ。




 さっき助けだどごところより手前でノルドさんは倒れでだ。

 両腕ど右脚折れでるなさ、こごまで這って来たんだべな……

 こんた状態でも家族どご助けようどて。


へばではノルドさんどご乗せで村長さんのどさところに行ぐど? これなば治てもらわねば死んでまうがらよ」


 ノルドさんどご見で泣いでる奥さんだのも、今そんた泣いでる場合でね。

 強引に退がて荷車さノルドさんどご乗せで、まだオラは全力で走り出す。




 ゴブリンが群れで住み着いだっちゅー事はよ、オラ倒た他にももすかすたらもしかしたらまだ居るんでねが?

 オラ倒たなは七匹。

 群れっちゅー割には少ねんた気もするがらな。


 全力で走ってオラの辺りまで来たば、なんだが戦ってるんた声ど音が聞ごえできた。


 村長さん家の周りさ十匹ばりのゴブリンど、クワ持って戦う村の人達。

 ゴブリンの方が少ねのも、村の人達ぁ戦ったりする事もねべがらなないだろうからな

 村長さん家さ追い込まれでるみでんた。


 オラは鳥獲ったり熊獲ったりてるがら、このクワ持って戦えばまんず負げる事はねぇ。

 荷車止めで、クワ持ってゴブリンさ殴り込んだ。


 十匹ばりのゴブリンぐれなばオラなの敵でねおな。

 クワで頭割って魔法で火ぃ付けで。

 んだのも途中でクワの先さ付いでる石っこ割れでまったなひゃ。

 かだねがらクワの木の柄で死ぬまでぶ殴った。

 バガッバガど、ありったげぶ殴てやったなしゃ。

 結局そのクワもぼっこれですまって壊れてしまって、最後はオラなの手で殴ったんだのもな。

 オラなの力だば何が武器欲がもすれね。




 まんずオラはゴブリンどご皆倒た。


「うおぉぉぉお!! 助かったぁぁあ!!」


「「「「「わぁぁぁぁあ!!」」」」」


 村の人達ぁ喜んだ。

 なんぼおっかねがったどれだけ怖かったんだが知らねのも、泣いで喜ぶぐれ嬉がったみでんた。


 いがったなぁ良かったなぁ……


 いがったなぁ……


 オラもおっかねがったのも皆んなどご助ける事でぎでいがった。




 その後ぁ怪我た人達どご、回復医っちゅー魔法のお医者さんが治てけるみでんた。

 ノルドさんなば酷い怪我だのも、ばらぐ魔法掛げれば治るっちゅーがら心配はいらね。


 オラはゴブリン倒たがら血塗れだ、あどは村長さんさ任せで家さ帰った。


 体洗って服も洗濯さねねがらしないといけないからな。

 その後ぁ酒っこの味見さねねよぉ!




 残念ながら酒っこぁ失敗たんだのもな……

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