第一章 12 『2人目の男、周』
☆お知らせ☆
次話→11/15公開予定です。
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飛鳥は、なんとなくその男子生徒が学校編の攻略対象なのではないかと思った。それほどまでに、その男子生徒には惹きつけられる何かがあった。
男子生徒は、目の前にあるリンドウのような花を眺めていた。
(うわぁ…、絵になる横顔だなぁ…)
ずっと眺めていたいと思ったが、飛鳥はハッと我に返り、入学式が始まってしまうことを思い出す。
邪魔しては悪いと思いつつ、他に人もいないので、とりあえずその男子生徒に入学式の会場を聞くことにした。
「あのっ!すみません!」
「え?」
「入学式ってどこでやってますか!?」
突然現れ声をかけてきた飛鳥に驚きつつも、その男子生徒は優しく入学式の場所を教えてくれる。
「ありがとうございます!えっと、あなたも新入生ですよね?一緒に行きませんか?」
「あー……ごめんね。俺は後から行くよ。もう道に迷わないようにね。」
「はいっ!この御恩は忘れません!また会ったときにはなにかお礼させてください!それではまたっ!」
一緒に行こうと誘ったとき、男子生徒の顔が驚きと悲しみが混ざったような複雑な表情になった。しかし、その理由を聞いている暇は飛鳥にはなく、その場をひとまず離れたのだった。
会場まで走りながら、せめて名前だけでも聞いておくんだったなと思った飛鳥だったが、最後にお辞儀をしたときの勢いで、携帯を落としてしまっていたことには気づかないのであった。
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飛鳥は、入学式が始まる前に無事に会場入りできた。
会場内は新入生とその親、教師などで埋め尽くされている。また、一角では吹奏楽部らしき人たちが、生演奏をしていた。
久しぶりの入学式に心を踊らせながら、飛鳥は先ほど出会った男子生徒がいないか探してみることにした。
ちなみに、クラス発表はこのあと外の掲示板でされるため、座る位置は好きなところと適当である。
しかし、新入生の座っているところをキョロキョロしてみても、あの男子生徒の姿は見えなかった。
(うーん、入学式サボるためにあそこにいたのかなぁ…)
飛鳥としては、別にサボることに関して嫌悪感はないのだが、もう一度あの顔を拝みたかったという気持ちがあった。
入学式恒例の校長先生の話は長いのかと思いきや、思いの外短かった。
校長先生の話をまとめると、「人と人との繋がりを大事にして青春してね!」とのことだった。
校長先生は女性で、見た目はかなり若い。どこかガブリエルさんに似ているような気もしたけれど、飛鳥は気のせいだと思うことにした。
着々と入学式の式次第がこなされていき、次は『在校生歓迎の言葉』となったときに飛鳥は自分の目を疑った。
「在校生歓迎の言葉。在校生代表、生徒会長3年A
「はいっ!」
凛とした声で出てきたのは、なんとあの校舎裏で出会った男子生徒だったのだ。
(あ〜………。だからかぁ〜………)
飛鳥はここであのときの表情の意味を理解する。3年生が1年生に間違われたら、そりゃあ驚きもするし悲しくもなる。
あの男子生徒は、ちゃんと入学式に来ていた。しかし、飛鳥はずっと新入生の席を探していたから、視界に入らなかったのだ。
愛月周と呼ばれた男子生徒は、歓迎の言葉をスラスラと述べていく。自由な校風だの、生徒同士の繋がりを大事にしているだの色々言っていたが、飛鳥はとにかくその顔に夢中だった。
飛鳥がぼーっと見つめていると、最後のお辞儀が終わったあとに目があった。そして、周はウインクをした。きっとそれは飛鳥に向けられたものだったのだろうが、それを見た周りの女子生徒たちが何人か倒れていた。
顔がいい
何人かが保健室へと運ばれる事態もあったものの、入学式は無事に終わった。
新入生たちは、自分のクラスを確かめるために会場を後にする。飛鳥もその流れについていくことにした。
(さっきの周くんは3年生だし、ぶっちゃけクラスはどこでもいいんだよなぁ。友達もいないわけだし…)
クラス分けの紙を見てみると、飛鳥は1年A組の3番だった。
「A組か…」
「ねぇっ、あなたもA組?よかったら友達になってくれない?この高校に私の中学から来てる子少なくてさ。友達あんまりいないんだ。」
飛鳥の呟きに、隣にいた女子が反応してきた。見た目は完全にカナの高校生のときのソレである。違いといえば身長くらいだろうか。少し本物よりも低い。
「いいよー。私は、鬼武飛鳥。よろしくね。」
「飛鳥ね!ってことは、出席番号が私の前の人だ!私は、
(まさか本当にカナだった。)
飛鳥は親友ポジになりそうなキャラクターの名前がカナであることに驚きながら、やりやすさを感じていた。
そして、連絡先を交換するために携帯を出そうとするも、その肝心の携帯がなくなっていることに気付いた。
「あれっ!?ない!?うそ!?」
「どうしたの?」
「携帯どっかに落としたみたい!うわー、どこで落としちゃったんだろ!」
「思い当たるとことかないの?家に忘れてきたとか。」
「いや、だって学校来るまでに使ってたし、そのあとは……あっ!」
「なにか思い出した?」
「多分…。ごめん、連絡先交換するの明日でもいい?」
「大丈夫。早く見つかるといいね。」
「うん。ありがとう。」
「ま、ここはとりあえず教室に行きましょうかねー」
そういって2人で教室に向かって歩きだす。
飛鳥は携帯の落とし場所に心当たりがあった。先ほど周と会った校舎裏だ。
きっとバタバタしてるうちに落としてしまったのだ。そうでなければ、他に思い当たるところはない。
(放課後になったら探しに行こう…)
そう心に決めて、今はとりあえず教室へと向かうのであった。
「鬼武飛鳥、ね。ふふっ、面白そうな子だなぁ。」
教室に向かう飛鳥の姿を、生徒会室から覗く人物が1人。
愛月周は飛鳥の携帯を持っていた。失礼だけど、どこか憎めない、そんな女子が嵐のように去っていったと思ったら、携帯が落ちていた。拾ったものを職員室に届けなかったのは気まぐれだ。
「高校最後の1年、楽しくなりそうだ。」
周はそう言って、生徒会長用の椅子に腰掛けるのだった。
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