第一章 7 『飛鳥、相棒を得る』


☆お知らせ☆

次話→8/30公開予定です。

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 『ビーバーの巣』から急いで帰った飛鳥は、家についてからカロリーメイトを食べ、早速『True Daling』にログインすることにした。

 ちなみに、先ほどソウから来たメッセージには、『お願いだからもう少し待って!入ってこないで!』と返してある。


 ゲームを起動すると、前に見た事のある「げ~むで~た」の選択画面に飛ばされた。相変わらず2つの扉があるが、前と変わっているところがあった。

 前は「学校編」と「異世界編」と書かれていたのだが、今回は、「学校編」と「」と表記が片方だけ変わっているのだ。


(なるほど。もう世界の名前がわかったから変わったわけだ。適応していくとは、やるな、『True Daling』。)


 そして、飛鳥は学校編が気になりつつも、ソウを待たせているからグリュックへと再び足を踏み入れる。以前と同じようにまばゆい光に包まれ、吸い込まれーーーーーーーーーー




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「んっ、ここは……」


 飛鳥が再び目を開けると、この前最後に寝た記憶のあるベッドの中であった。


「よかった。ちゃんと戻ってこれたみたい。」


 ゲームを開始してからすぐにバグ(?)が起こっている以上、なにが起きてもおかしくないと思っていた飛鳥は、ちゃんと続きから始められることに安堵していた。

 特に着替えたりしていないので、そのまま扉を開けて出ていく。


「お!やっと来たか!待ってたぜ!」


 飛鳥を見つけたソウがニカッと笑いかけてくる。カナに笑顔が忘れられないなどと話していたせいか、急に恥ずかしくなり赤くなってしまった顔を隠すように飛鳥は下を向く。

 不自然に思われないように、咳ばらいをして落ち着きを取り戻してから再び前を向く。そこには、すでにデス婆も椅子に座っていた。


「昨日はゆっくり眠れたみたいさね。それじゃあ、早速だけど、まずはこれを受け取ってほしいさね。」


 そういうと、デス婆はゆっくりと立ち上がり、テーブルの上に置かれていたものを手に取り飛鳥の前にやってきた。

 デス婆がもってきたものは、星の形のペンダントだった。


「これは、セイヴィアの特殊アクセサリー『星詠みのペンダント』さね。セイヴィアが現れたら渡すことになっているさね。このカルディアーの神殿でずっと大事に保管されてきたものだけど、アスカが正式な持ち主さね。」


「星形のペンダント!かわいい!これは普通に首につければいいんだよね?…っと、これでいいかな?」


「……え!?ちょっとまって!?なんか光り始めたんだけど!!なになになになに!!」


 飛鳥の首にペンダントがかかった瞬間、ペンダントが光り始める。そして、光が収まろうとしたとき、ペンダントの中からなにか黒い影が飛び出した。

 その影は部屋中をぐるぐると飛び回ったあとに、飛鳥の目の前で止まった。


「よっ!俺様はのノヴァだ!お前が今回のセイヴィアか?よろしくな!」


 そう語りかけてきたのは、体としっぽの先に星がついている猫のような生き物だった。首には、星詠みのペンダントと同じであろうペンダントがついている。

 ノヴァと名乗ったその猫のような生き物は、2足歩行の格好でふわふわと飛鳥の目の前を浮いていた。大きさは、スマートフォンよりも少し大きいくらいだ。


「クンペル?えーと、あなたは……猫?」


「誰が猫だ!!!!俺様はな!!れっきとしたスターライオンの一族の長なんだ!!」


「ごめんごめん、スターライオンっていうのを知らなくてさ。私はアスカ。よろしくね。」


「……は?スターライオンを知らない、だと?お前一体何を学んできたんだ?」


「すまん、俺も知らない。」


 飛鳥とノヴァのやりとりにソウも加わる。2人が知らないという事実を、信じられないという様子で頭を抱えるノヴァ。


「まぁ、2人が知らないのも無理ないさね。クンペルとは、特殊な装備に宿りし精霊の総称。そして、スターライオンのことは、今や神殿に保管されているセイヴィア関連の本の一部にしか記されていないさね。」


「曰く、『セイヴィアが現れし時、スターライオンの長来りてそのものを助けるだろう』とのことさね。要するに、アスカの手助けをしてくれる心強い相棒と思っておけばいいさね。」


 スターライオンのことを知っている者がいたことに、喜びを隠しきれないノヴァ。そのしっぽは嬉しそうにゆらゆらと揺れている。


「まー、そういうことだ!俺様はセイヴィアを助ける!そして、世界を救う!それが存在理由であり、使命なんだ!」


 ノヴァはものすごく得意げに胸を張って主張する。そこで、飛鳥はふと気になっていたことをぶつけてみることにした。


「なるほどねー。ところで、どう見ても子ライオンなんだけど、本当にノヴァちんは長なの?」


「ノヴァちん!?ちんって……まぁいいや。この姿は本来の姿じゃないんだ。色々訳があってこの姿になっちまってるがな。それでも、本来の力の半分くらいは出せるから安心しろ。宝玉が集まっていけば、そのうち力も戻ってくるはずだしな。」


 どこか寂しそうな様子のノヴァに、飛鳥はそれ以上突っ込むことはできなかった。しかし、飛鳥にとってこれは嬉しい展開だった。


 飛鳥が以前やっていた異世界系乙女ゲー『ときクエ』のときも、相棒と呼べるマスコットキャラクターが存在したのだ。そのときは、猫のキャラクターが一緒に戦ってくれていた。

 飛鳥は、この猫のキャラクターが大好きだった。今でも部屋の中にそのキャラクターのぬいぐるみが置いてあるくらいだ。苦楽を共にする相棒に、情が移らないわけがなかった。



 そして、飛鳥はなによりものがたまらなく好きだった。



 今回もそれができる可能性があることがわかっただけでも、飛鳥にとっては嬉しい出来事だったのである。


「ねぇねぇ、ノヴァちん。そのめちゃくちゃプリティな肉球をぷにぷにさせていただいても?」


「はぁ!?俺様の高貴な肉球をぷにぷにしたいだと!?」


「お願い!少しだけでいいから!その高貴さを堪能したいんです!」


「お前、この高貴さがわかるのか?」


「もちろんですとも!」


「じゃ、じゃあ…ちょっとだけなら……っておい!!」


 許可が出ると同時に、ガシッとノヴァを捕まえて、思う存分肉球を堪能し始める。その触り方、プロの犯行であった。


「ちょっ、やめっ!…ふぁっ、もうっ!あーーーーーーーーーー!!!!!」



ーーーーーーーーーーーーーー



「ふぅ~~~~、堪能した!ありがとね!ノヴァちん!」


 そこには、悶絶の限りを尽くし、ぴくぴくと動くことしかできなくなったノヴァの姿があったのであった。




 後にノヴァはこう語る。「あれは神の手だった…」と。


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