第一章 8 『いざ、ロウーユへ』


☆お知らせ☆

次話→9/6公開予定です。

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「さて、そろそろ話し始めてもいいさね?」


「はーい、すみませーん。」


 飛鳥が肉球を一通り堪能し終わると、再びデス婆の話が始まる。


「昨日も言ったけど、アスカにはこれから6つの宝玉を集めてもらうさね。順番も決まっているさね。『ロウーユ』、『オーア』、『ルネ』、『イズイーク』、『ケルパー』、『カルディアー』の順番で集めていくさね。」


「あ、じゃあ、この今いるカルディアーは最後なんだ。」


「そういうことになるさね。後に行けば行くほど、試練が難しくなるさね。でも、ノヴァもいるし、ソウもいるから、なんとかなるさね。」


 そういわれ、ソウの方を振り返ると、ソウは飛鳥の視線に気づき、ニカッと笑いかける。その笑顔をみて、飛鳥はすこしだけ安心する。


「それじゃあ、さっそくまずはロウーユに行くといいさね。ロウーユには、という爺さんがいるさね。そいつを訪ねていくといいさね。紹介状なんかなくても、私の名前とアスカのペンダントを見れば事情を察してくれるさね。」


「げっ、そういやあそこは、のテリトリーだったか。この前近くまで行ったのに挨拶してこなかったから、絶対なんか言われちまう…」


 ソウの顔が、シックザールという名前を聞いた瞬間青ざめる。


「ソウもシックザールさんのこと知ってるの?」


「あー、知ってるも何も、ザル爺はデス婆の旦那だよ。そんで、俺の魔法のお師匠さん。」


「えっ!?デス婆って結婚とかしてたの!?」


「何気に失礼さね。私だって人並に結婚くらいするさね。でも今はわけあって離れて暮らしてるさね。」


 飛鳥はそのわけが気になったが、深刻そうな顔をして語るデス婆にこれ以上突っ込むことはできなかった。




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 ロウーユに向かうために、デス婆の部屋を後にし、カルディアー神殿の外に出てきた。2人と2匹の旅の始まりである。

 ちなみに、デス婆はこの神殿の長であるため、ここから動くことは基本的にできないらしい。



「…にしても、これすごい量の食料、だよね?」


「あぁ、それだけあると当分は食料に困らねぇな。」


 今、飛鳥たちの目の前にはどんっと山のようになっている食料があった。

 というのも、デス婆の部屋を出てから神殿の出口にたどり着くまでに、神殿の人や、町の人々が飛鳥を一目見ようと集まってきたのだ。そして、その際に一緒に食料を持ってきた、というわけだ。


 この世界の人々にとって、飛鳥はセイヴィアであるからして、希望の光だ。飛鳥次第でこの世界が滅びるかどうかが決まるのだ。それにセイヴィアは異世界からくると言われていたこともあり、どのような存在かが気になって仕方ないのである。


 そして、昨日この大陸中に神殿を通してセイヴィアが現れたと発信された。そして、その姿を一目見ようと人が集まったというわけであった。


「ん~~~、どれもおいしそう!これとか見た目もかわいい!」


 飛鳥は食料の山から、ハートの形をした飴のようなものを手に取り食べようとする。

 すると、突然横にいたノヴァのしっぽについている星が光り始めた。


「アスカ!それは食べちゃダメだ!多分、毒が入ってる!」


「え!?」


 ノヴァに毒と言われて、驚きのあまり飴を投げ出す。それをソウが拾い、鑑定してみるとやはり毒が含まれていた。


「致死性がある毒じゃない……おそらく魅了系の毒だろうな。」


「なんでそんなものが入ってんの……」


「そりゃあ、セイヴィアに活躍されると面白くない連中もいるってことだわな。」


「なっ!?私の命を狙ってる人もいるってこと!?」


 このゲームにきてから、2度目の命の危機を飛鳥は感じる。飛鳥は、セイヴィアなんていうものだから、無条件にみんなから歓迎されるものだと思っていた。

 しかし、命が狙われるとなっては話が違うではないか。自衛することもできない自分では、いくつ命があっても足りない。


 飛鳥はまたしても、がくがくと恐怖に体を震わせる。




「おい、アスカ。」




 ソウに呼ばれた瞬間、グイっと両頬をつかまれ上を向かされる。


「1人でどうにかしようとすんな。お前には誰がついてんだ?」


「…そ、ソウがいる。」


「そうそう!よくできました!」


 そこでソウは飛鳥にニカッと笑いかける。すると、飛鳥の身体の震えは止まった。

 

 飛鳥は、ここはゲームの中で本当に死ぬわけではないと理解している。ましてや、死ぬことが本気で怖いなんて自分でもおかしいと思う。しかし、ここはリアルすぎるのだ。本当に死んでしまうような錯覚に陥る。


 でも、不思議とソウとならば生き残れるような気がしてくる。自分一人じゃないんだと気づかせてくれる。そんなソウにどんどん惹かれていくのがわかった。



「おい!俺様のことも忘れるなよな!」


「そうだね、ノヴァちん。さっきは止めてくれてありがとう。」


「えっへん!」


「ところで、さっきのしっぽが光ったやつはなんだったんだよ?」


「俺様のしっぽは特別製でな!セイヴィアに危機が近づくと光るようになってんだよ!すげぇだろ!」


「すごい!それがあれば、どんな危機が近づいてくるかもわかるんだ!」


「……………いや、まぁ、どんな危機が近づいてくるとかまでは、見てみないとわからなかったりすんだけど……」


 さっきまでの威勢はどこへ行ってしまったのか、急にノヴァの語気が弱まる。シュン…としてしまったノヴァがかわいすぎて、飛鳥は抱きしめたくなったが、その衝動を抑えて慰める。


「ほ、ほら!でもさっきみたいに事前に対応できるわけだし!十分すごいよ!うん、すごいすごい!」


「そ、そうか?俺様すごい?」


「うん!とっても!」


「ふ、ふん!もっと俺様のこと褒めてくれてもいいんだからな!」


 少し褒めただけで機嫌が直ったノヴァを見て、ソウと飛鳥はチョロい…と感じたが、それは言わずにそっとしておくことにした。とてもこの先扱いやすそうである。




「そんじゃ、気を取り直して、ロウーユに行くかー!」


「あのさ、ロウーユって、この前私がエルダーボアに追い掛け回された近くにあったって言ってたとこだよね?」


「そう。本来アスカが現れると言われていた国だ。あそこの国の人たちは、セイヴィアを歓迎してくれると思うぜ。なにせザル爺の国のやつらだからな。」


「シックザールさんて一体何者…」


「行ってみりゃわかるさ。おーい、ソレイユ!」


 ソウに呼ばれて、外に待機していたソレイユが近づいてくる。


「待たせたな。まずはロウーユだ。行けるか?」


「ギャオー!」


 乗れと言わんばかりに、背中をこちらに向けるソレイユ。準備万端らしい。


「よし、行くぞ。」


 そういうと、ソウは当たり前のように、またしても飛鳥をひょいっとお姫様抱っこする。


「ちょっと!私自分で乗れるって!降ろしてよ!」


「ん?なにかいったかー?」


 そのままソレイユにジャンプして乗り込み、飛鳥の意見は聞かなかったことにされた。飛鳥はお姫様抱っこなどされ慣れていないので、どうも恥ずかしいのだ。


 ちなみに、ノヴァは自分の力で浮いていると、そのまま置いていかれる可能性があるので、飛鳥の頭の上に乗っている。


「いざ、ロウーユへ!」


 宝玉を集める旅は、ここから始まるのであった。



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