最強はボスを狩る⑧

 出来る限り攻撃を躱しながら、武器を火属性をMAXまで付与した杖に換える。

 この杖につけている精錬魔法:メテオストライクメテオのために、私は一年間貯め込んだゼルをつぎ込んだ。その威力を是非楽しんで味わって貰いたい。

 などと考え、精錬魔法:メテオストライクを放つ準備を開始する。メテオストライクは、時間をかけてMPを注ぎ込んだ分だけ降り注ぐ隕石の数と威力、時間が増える魔法である。


 メテオで思い出したけど、魔法書手に入れたのかな? 火系の狩場に行けば出そうだから、今度一緒に行くのもいいかも。あ、回復っぽいのが死んだ。残り、二人かな? ん-、三人? 回復を厚くして、バフはスクロール頼りなのか。まぁ、バッファー育てるの根気要るから、この程度の血盟じゃ育てるの無理そう。


 よそ事を考えながら観察しつつ、MPのチャージをする。減ったMPは、もちのろんで特濃MPポーションを飲んで回復した――。


 メテオストライクのゲージが、MAXの250まで溜まり【 充填完了 】のメッセージがシステムログに流れる。と、同時に周囲一帯全てに向けてメテオストライクを発動させた。

 紅蓮の炎を纏った一筋の隕石のが、ついさっきまでいた場所に落下してくる。それを合図に、周囲一帯へ次々と大小の隕石が落下を始めた。

 

 ドンッ……ドンドンドン。


 轟音と共に地が揺れ、至る所から悲鳴があがる。

 逃げ惑っていた回復職や魔法職と言ったHPの低い職業のプレイヤーたちが、メテオストライクに被弾してHPを枯らしては倒れて灰色に変化していく。


 回復職と魔法職を同時に葬れたことに、これで戦いやすくなった。欲を言うなら重装備ATKも沈んでくれると良いのだが、そうは問屋が卸さないらしい。


 私を追いかけるボーンドラゴンの攻撃を往なして、攻撃回数を減らすことを目的に生き残ったプレイヤーへアーマーブレイクをいれる。一人が終わったら次へと繰り返して全員に入れ終わると、視界に入ったプレイヤーから二刀で数回斬り手は移動を繰り返す。


「ぐはっ」

「ぎゃっ」

 

 そうする事で私へ攻撃しようとするボーンドラゴンが、プレイヤーへLAラストアタックを入れて殺してくれる。情けなくもボーンドラゴンの攻撃の巻き込まれ、無残にその屍を晒したプレイヤー達は萎えて即座に消えていく。


「あと、六人か」


 メテオストライクとボーンドラゴンのおかげで、残り六人になっている。もう少し手古摺るかと思っていたが、違ったようだ。


 萎えたプレイヤーが、帰還の護符を使おうとする。それを精錬魔法:アイスニードルを使う事でキャンセルさせ、サイレントを入れて機関の護符を使えなくしておく。


 狭い空間にいるため、どこに逃げても巻込み事故が起こる。敢えて、ボーンドラゴンが攻撃する直前まで移動を止めて、少しでもHPを削る為にプレイヤーを二刀で斬る。

 そうして、三人が灰色に変わった。


「うふふっ」


 久しぶりにやりたい放題やっている私は、つい本能のまま笑うと唇を舐めた。

 次の獲物を探して視線を動かせば、戦士職であろう男プレイヤーと目が合った。


「ひぃっ」


 情けない声をあげた重戦士ATKが、怯えてその場にへたり込む。無抵抗な彼の首を狙って、右手の刀をで容赦なく振り抜いた。一撃では殺しきれずに、腕、胸、背中と何度か斬ったところで重戦士ATKはパタリと倒れて灰色に変わった。


 ボーンドラゴンの攻撃が来る気配を感じて移動しようとしていると、背後から乱心したドワ爺ドワーフ男姿の重装備ATKが、斧で殴りかかってくる。それを条件反射で蹴り飛ばし、同時に殴りかかって来た重装備ATKのメイスを受け止めた。


 重い! 上から叩きつけられたメイスを受け止めた腕がビリビリと痺れる。メイスをなんとか弾き飛ばして、互いに距離を取った。

 そして、互いに相手と切り結ぼうと動いた瞬間、これまで着いてくるだけだったボーンドラゴンが本領を発揮した。


 鋭い牙が並ぶ口を開けたボーンドラゴンが、真後ろでブレスを吐いたまでは良かった。

 ただ、そのブレスが私の頭の上を通り越して、メイスの重装備ATKへ直撃し。更にボーンドラゴンの攻撃を察知した私が動いたせいで、ポーションを飲もうとしていた重装備ATKの腹へボーンドラゴンの尻尾がもろに入って吹っ飛ばなければ……。

 流石にHPの多い重装備ATKでも、二度連続で受ければ耐え切れずはずもなくお亡くなりになってしまった。


 憎い相手とは言え、この状況は惨い。謝るべき? それとも慰めるべき?


 色々悩んだ末、結局「……。どんまい」としか言えずもどかしい気持ちを抱えて、消えていくメイスの重装備ATKを見送った。

 ふと、ドワ爺の存在を思い出して視線を動かす。と、そこには、既灰色になったドワ爺がいた。


 やばい。さっきのメイスの人よりもドワ爺の方が、酷い結果かもしれない。帰ったらグランドロールに宣戦布告しようと思ってたけど、流石に彼らの無残な死に方を見ると二人を殺す気になれそうにない。でも、グランドロール事態は許せないから、やっぱり宣戦布告はしておこう。

 

 グランドロールに所属するプレイヤーの死体が残った場所で、ボーンドラゴンとの死闘を再開する。

 私がその場を動かないと思ったらしい死体たちが、次々と消えていく。最後の一人を見送って、最初に戦い始めた場所までボーンドラゴンを引き直した。


 奴らの邪魔さえされなければ、ボーンドラゴンのHPが順調に減っていく。ブレスの攻撃もいつもと同じ攻撃回数で発動され、タイミングを見て柱の陰に隠れてやり過ごす。尻尾も勿論、柱で回避する。


 そして――。


「ギュワアアアア」


 雄たけびをあげたボーンドラゴンの身体が崩れ落ちると、同時にガーディアンスパイトルたちも崩れ落ちた。

 まずは、討伐時間を確認。次に、ボスをやっている間放置していたMOBを処理する。

 マップを見て他にMOBが居ない事を確かめると、漸くドロップ確認に移った。


【 善悪の塔60階フロアボス ボーンドラゴン を討伐しました。 】

【 5502558ゼルを獲得しました。 】

【 ボーンドラゴンの核を獲得しました。 】

【 善悪の塔61階のスクロールを7枚獲得しました。 】

【 善悪の塔61階の宝玉を獲得しました。 】


 帰還の護符を発動させながら、今後の事を含めて思考を巡らせる。


 ん~、PKした分POT代かかってるから若干稼ぎは少ないかな。あ、宝玉出てるからプラスだわ。

 街についたら、PKで拾った装備の返却呼びかけして、グランドロールの盟主を呼び出そう。

 話し合いで解決するようなら公式掲示板で謝罪文掲載して貰って、PKするって言うなら全体チャットで宣戦布告しよう。猶予時間は、いつも通り四十八時間にするとして、協力者のあぶり出しもしないと……。

 こういう時、鉄男が居たら楽なんだけど、引退して別ゲーム行ってるから頼れないな。あ、そうだ。黒にありがとう密談しなきゃ!


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※ 改稿分割追加分。

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