第325話 ドラパレ攻略①

 白影が狩りに行きたいと言い出した。

 それを同盟チャットで聞いていたクラメンが、私を呼ぶ。

 仕方なく経験値スクロール作りを一旦横に置き、同盟ハントに参加する。


 場所はどこでもいいと言うので、一度はクリアしたいドラゴンパレレスのダンジョンを選んだ。

 選んだ瞬間、行くと言っていたはずの同盟員たちがこぞって辞退する。

 まぁ、元殲滅の破壊者以外いなくなってしまったのだが気にしない。


 倉庫でPOTやら魔石やらを積み込み、鍛冶屋で武具の耐久を戻して準備を整えた私は、集合場所であるランペティエに移動する。


 既に着いていたらしいキヨシにPTに呼ばれ、入ってみれば雪継と千桜、ゼン、博士、小春ちゃんが入っていた。


 来ると言っていたメンバー的にフルで三PTだろうと思いながら、ミツルギと宗之助の戦闘を見守る。

 ここ数か月で、見違えるほど腕をあげたミツルギは、今では宗之助の攻撃すら避けるほどだ。


『ren。この間はごめんね?』


 横に座った雪継が、突然謝ってくる。

 私はどの話だろう? と首をかしげた。

 すると千桜が、この間の同盟のことだわいねと、密談を送ってくる。


 同盟って、あぁ! あの、グダグダだったクランごとに戦ったやつかと、思い至った。

 

『あー。別に謝る必要はないよ。アースに思う事はあったけど、経験値が違うんだから仕方ないって諦めたし』

『諦めないで!!』

『見捨てないで欲しいわいね!!』


 出来る限り優しい言葉を選んだはずなのに、また言い方を間違ったらしい。

 涙目になりながら訴えるアースのギルマスと副マスを見ながら、私は何とも言えない顔をする。


『ren、揃った』

『うい。バフ』

『黒、大和、白影先頭で進もうか』


 言い訳しようかとしていたところでロゼが声をかけてくる。

 まぁ、いいかと流した私は、バフを開始。

 先生が、隊列を指定しながらバフが終わると同時に森を進み始めた。

 

 ドラパレのダンジョンは、森を全員が抜けてダンジョン入口に居るNPC——小さな亀の像を通して登録しておかないとPTメンバーでも飛べない仕様だ。


 今回初めてダンジョンに行くメンバーである、小春ちゃん、ロゼ、雪継、千桜がいるので森からのスタートになった。


 森の中は、人数に応じて沸くモンスターが増える。

 今回は、今までで一番多い人数だ。考えるよりも先に、モブが沸く。


「ぎゃぁぁぁぁ!」

「死ぬぅ。俺死んじゃうー」

「キヨシ、雪、煩い!」

「宮ネェ、小春。盾優先で回復」

「くそ、足止めできねぇ」

「キヨシ、もう少し中走れ!」

「あ、やば……範囲じゃんこいつ!!」


 森に入ってたった三分しか経っていないのに、阿鼻叫喚の地獄絵図が展開されている。


 まぁ、こうなることは分かっていたじゃないかと思う私は、キヨシに言わせると鬼畜らしい。

 と、そんなことは置いておいて、こんな状況になった理由はキヨシだ。


 最初は、五体ほどのモンスターが沸き順調に、倒せていた。

 なのに、背後に沸いたモブに対してキヨシが範囲魔法を放ち、タゲを集めた。紙装甲以下のキヨシがタゲを集めれば、逃げ回るしかない。

 そのたびに新しいモブが引き寄せられて…………現状に至る。


「はぁ……何やってるんだか」

「ren。いける?」

「え、私が処理するの?」

「頼むわ。博士じゃ不安だろう?」


 確かに博士じゃ不安だけど……ここで、カリエンテは使いたくない。

 だって、どうせなら経験値の美味しいダンジョンで使いたいもん。

 

 そうなるとやっぱり博士のポーションを使う方向になる。

 まずは、一か所に集めて、それから——よし、決まった。


『黒、大和、白影は一か所でタゲ集めて。キヨシは意地で走り込んで。博士! 英知のポーションNo.二——ミリまでポーション用意! 宮ネェバリア準備』

『来たのである~!!』

『ちょ、は? え?』

『ちょおおおおお』

『うそーーーーーーん』

『カウント五で、ポーション投下、ゼロでバリアよろしく』


 叫び、戸惑う周囲を無視した私は、カウントを始めた。


 黒たちが慌てふためき集まり、キヨシはカウントを聞きながら周囲を走り回っている。

 カウント五で博士が、ミリまでポーションを放り、セロで宮ネェがバリアを張った。


 宮ネェがバリアをはると同時にキヨシが、黒たちの元へ走り込む。ポーションのカウントがゼロを示し、ポーション瓶が爆ぜる。


『さゆたん、ゼン、白、ロゼ、聖劉、範囲攻撃!!』

『はいでしゅ!』

『はい』

『おうよ!』

『いくぜー』

 

 冷静な四人は返事を言い終えるなり、得意な範囲するスキルを放った。

 スキルがあたり、大量に黒たちを囲っていたモブが、HPを枯らしバタバタと倒れていく。

 ギリギリ範囲に入らなかったモブは、状況をいち早く判断した先生が近接組に指示を出し倒す。


 こうして開始早々の混乱は、なんとか片付いた。

 最大の元凶であるキヨシは、あとで確実に説教されることだろう。


『よし、終わった。進もう』

『いや、待て! ren、お前博士のPOT使うなら事前に俺らに相談しろ!!』

『そうだぞ。マジでびびったじゃねーか! お前、もう少し盾を大事にすることを覚えろ?』

『ren~。僕、怖かったんだからね~?』


 作戦はうまく行ったし、なんの問題ない。さっそく先に進もうと言った私は白影、黒、大和に怒られた。

 博士のPOTは使い方次第でうまくいくのに、なんで怒られなきゃいけないのか……なぞだ。

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