第327話 ドラパレ攻略③

 爆弾耐性のポーションは、あの見掛け倒しのスライムからしかドロップしない。

 スライムを探しまくったけれど、見つからなかったことからモブを倒さないと湧かないのだろうと言う結論になる。


 ネズミ、猫、犬をランダムで倒す。ただし、二十匹を超えないとスライムは湧かない。

 その事がわかったのは、二時間半も無駄に狩りした後だった。

 やる気がなえ始める皆をなんとか励ます……先生がっ!


 そのおかげで、なんとか集めることができたのだけど……見掛け倒しスライムの出現率は、二十分の一と言う鬼畜具合いだった。


 そんなこんながありつつ、三階へ。


 階段を登った私たちを待っていたのは、いたるところが腐れ落ちた崩れかけの廃屋のような木造りの室内だ。

 

「海賊船?」

「亡霊とか出そうな雰囲気だなー」

「井戸ないのか? 井戸!」

「……貞〇wwww」

「こんなところで、〇子出ないだろww」

「草生えるからやめろ?」


 盛り上がる白チャに目を向けながら、キヨシとチカ、鉄男のセリフに呆れる。

 確かに、三人が言う通り雰囲気的に幽霊が出そうな感じだ。

 が、流石にファンタジー世界であるこのゲームで髪が無駄に長い人はでないだろう。

 

「ほら、皆ちゃんと警戒するでしゅよ!」

「まったく、困るわね~」

「や~ん。わたし、こわいわ~ん」

「あぁ、やべぇ、ネカマに襲われる悪夢見そうだわw」

「「あ‶??」」


 黒はどうしてこうも馬鹿なのか……。

 宮ネェと小春ちゃん相手に喧嘩売る黒へ、私は心の中で安らかに眠れと冥福を祈っておく。


 まったく雰囲気とはかみ合わない会話を交わしながら、ギシギシと鳴る床を歩く。

 道が分からないため分かれ道は、とりあえず右へ。

 曲がった途端、複数の赤い点がマップに表示される。すぐさま黒、大和が警戒し足を止め、盾を構えながら武器を抜く。

 全員が、狭い通路で固まり先を見つめた。


 道の先から小さな白い球タートルボムエッグが十五個前後コロコロと転がってきたかと思えば、腐り落ちた穴へ落ちていく。


「え?! 落ちたぞ??」

「……また、スライム系か?」

「ちょ、もういいよ。そういうネタ系」


 穴に落ちた白い球に拍子抜けと言いたげな声をあげたティタ、村雨、キヨシだ。

 私も同じ感想だったので、何とも言えない。


「とりあえず、進もう」と言う先生の指示で、黒たちが息を吐き、武器を直す。慎重にマップを確認しながら、私は一歩踏み出そうと足を出す。

 唯一の気がかりは、マップに残った赤い点だ。


チッチチチ、チッチチチ

 

「……変な音がするでござる」


 耳をピコピコ動かした宗之助が、注意を促しかけたその時だった——。


ドーンッ、ドン、ドン……。


 突然足元から、爆発音が上がりその場にいた全員が被弾する。

 爆発物でHPががっつり削れ、全身の至る所に炎が屑ぶり、バーの下にデバフの表示が現れた。

 デバフは火傷状態を示す、人のシルエットが所々赤く染まった物だ。

 継続時間は三十分、効果はHPが五秒につき二五十減少、防御率の十五%低下。

 デバフの解除方法はない。

 

「くそっ!」

「あれかよ、爆発耐性必須な奴!!!」


 悪態をつくのは黒と源次だ。

 被弾したのは前衛で組で、中央を歩いていた私も含まれている。

 ジリジリとHPが削られ、地味に痛い。


 ポーションを飲むことで耐えれなくはない。

 一本につき一分しか持続回復しないため、三十分となるとポーションが三十本消費されてしまう。

 だが、MPを使わせるよりはいいとポーションを飲んだ。


「今更、飲んでも、意味ないよな?」

「これ、親がどっかにいそうだな」

「被弾してないメンツは飲んだ方がいい。特にHP少ない後衛は必須」


 足を止め、武器防具の耐久を小春ちゃんとヒガキさんに戻して貰いながら、被弾組はポーションでしのぐ。

 親が居そうだと言う先生の言葉を聞いた宗之助たち暗殺者組が、武器防具の耐久を戻し、直ぐに偵察を始めた。


 あちらこちらで爆発音が上がる。

 被弾していないかとHPバーを確認しながら待っていると春日丸から、見つけた! と報告が入った。


 春日丸のいる場所まで、全員が走り抜ける。

 直線距離にして約百五十メートル。

 穴が開いた場所を通るたび、何度も爆弾が爆発しては被弾した。

 爆弾耐性ポーションを使っているメンバーたちは、爆発してもデバフを受けることなく火傷にもなっていない。

 

「こいつだな」

「亀!!!」

「今度は、亀かよー!」

「しかも、卵が爆弾ってなんなのー?!」


 つぶらな瞳を持つワニ亀のような見た目をした、十五メートルほどのドラゴンボムタートルがのっそりと尻尾をあげる。


「来るぞ!」


 亀のお尻から、ゴロゴロとあの白い球——卵だったらしいが生み出されこちらに向かい転がってくる。

 触れれば爆発する可能性があるそれを皆なんなく避けた。

 球は戻ることなく、そのまま転がっていく。


「卵は避ければ問題なさそうだな」

「亀か……硬そうだな」

「戻るとき、また爆発するわいね……」

「まぁ、やるしかねーな」

「バフ」


 バフを入れながら、亀をどう攻略すべきか考える。


 基本甲羅は硬いだろうから、狙うとしたら出ている頭、足、尻尾だが……。このゲームの運営がまともなモブを用意するはずがない。

 柔らかい部分を攻撃して、もし即死のデバフを貰った場合それこそ詰むわけで……。


 バフが終わり黒がヘイトを打ち込み数回亀を切りつけ、補助に大和が入る。

 前衛組が、懸念していた柔らかい部分を狙い斬りつけた。

 やはりと言うか、そうなるよねと言いたくなるようなデバフを前衛組が貰っている。

 しかもかなり嫌らしいデバフだ。

 一度斬りつけるごとに攻撃力五%低下。十回で、最大五十%。

 唯一の救いは、効果が十秒程度だと言う事ぐらいだ。


 デバフを食らわないように攻撃するならやっぱり、甲羅かな。


「とりあえず、甲羅狙ってみて」


 たまたま隣に立っていた白に、甲羅を狙うよう伝えてみる。

 俺が? と言わんばかりの顔で白が、私を見る。それに頷き、やれと顎をくいっと動かした。

 渋々と矢をつがえた白が、亀の甲羅に向け矢を放つ。

 狙いはきちんと甲羅だった。刺さるかと思われた矢は、見事にじかれ消えた。


「ダメだな」

「みたいだね」

「亀の弱点ってどこだ?」

「さぁ?」


 甲羅じゃないとすれば、やっぱり柔らかい部分なのだろう。

 とりあえず十秒で消えるなら、デバフ受けて、消してを繰り返しながら倒すしかないかと私は、メンバーにデバフを消して順番で攻撃することを提案した。

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