第312話 最強は同盟の運営に尽力す㉔
状況が呑み込めていない村雨のためのクラチャを、見ていなかった私も黙って聞く。
怪人クリスの話では、M2ことミッシェルは初心者ですと言う体でクラン――怪奇俱楽部に入ってきたそうだ。
初心者にしては装備が整うのが速いなと言う印象のあるミッシェルだったが、時間が経つにつれクラメンたちの信用を得ていったと言う。
そうして事件は起きた。
ミッシェルが加入して数か月後、盟主と連絡が取れなくなった。最初の数日は仕事が忙しいのだろうと思っていた古参のクラメンたちは、一月経ってもログインしない盟主に慌てはじめた。
盟主がいない状態ではクランを纏めるのも難しくなり、新規の加入権限すらない状態ではメンバーを増やすこともできないと言う理由から、今後の運営についてどうするかを話し合った。
話し合いの中で数名の古参のメンバーが、盟主としてミッシェルを押した。
だが、ミッシェルは断った。
ミッシェルが断った理由は、自分は加入してそんなに時間が経っていないと言うことだったそうだ。
「あいつは面倒見がよくて良い奴だよ」
と言う怪人クリスは、ミッシェルをかなり崇拝しているらしい。そうじゃないと否定することは簡単だが、本当にミッシェルが危険だと理解してもらえることはないだろう。
[[大和] 盟主が引退かー。やり口は同じだろうねー]
[[キヨシ] 怖い! ミッシェル、マジで怖い]
[[風牙] あいつも懲りねーなぁ]
[[宮様] 断った理由はわたしたちに目を付けられたく
なかったからよね~]
[[聖劉] ミッシェルってあのしったかだよね~?]
[[源次] 良い奴が盟主引退に追い込むかよwwww]
[[鉄男] まー、盟主になれば間違いなく俺らにばれるからなw]
[[白聖] 敵対どころか永久PKだな]
[[ティタ] キヅナにばれたらフルボッコどころじゃないしねー]
クラチャのログを見る限り、盟主もまた私と同じように追い込まれログインしなくなったのではないかと推測できた。
話を戻そう。
盟主を断ったミッシェルは、副盟主に収まった。ちなみにあの謎の死体=白光は、盟主のサブキャラだったらしい。
怪人クリスの所属するクランの運営は順調で、いずれはどこかと同盟を組み攻城戦に参加してみようと言う話がクラチャに出るようになったのが一月前。
同盟相手としてどごがいいかの話し合いを起こった際、ミッシェルが名前を出した相手が、Silver Garden、新宿二丁目、アースの三つ。要は有名どころと同盟を組む気満々だったのだろう。
三つの名前を聞いたクラメンたちは無理じゃないかと言っていたそうだ。けれど、知り合いがいるから同盟を組めないか話をしてみるとミッシェルは言っていたと言う。
どういう風に話すつもりだったのかはわからないけれど、ちょうどそのタイミングで私が連盟を立ち上げ、ついでとばかりに同盟を組んでしまった。
うちとしては別に同盟を組むつもりはなかったが、内容を知らないミッシェルたちからすれば、うちが連盟を作りあっという間に自分たちが組むはずだった相手をかすめ取っていったと言うことになるらしく相当に腹を立てていたそうだ。
[[黒龍] 笑うわw]
[[シュタイン] 逆恨みである!]
[[村雨] ……そこで何でキレるんだ? 意味がわからない]
[[宮様] そうよね~。困っちゃうわ~]
[[†元親†] つか、あいつ俺らをクランに入れるつもりだったんじゃね?]
[[ベルゼ] 博士がまともすぎて反応に困る!]
[[大次郎先生] チカの言い分もあるかもしれないな]
なるほど、ミッシェルは元メンバーたちを自分の連盟に入れたかったのか。でもうちのメンバーがそれを了とするかと言えば否だ。
目的をつぶしてしまったことについては、本当に申し訳ないことをしたとしか言えないけど。
宮ネェが話をした限り怪人クリスは、ミッシェルが仕掛けたクラッシャーについてさほど知らないらしい。
彼がミッシェルに頼まれた内容は、BFのメンバーであるキヨシ、チカと幼女犬が仲良くなるようして欲しいと言われただけ。
怪人クリスが別にクラッシャーに関する何かを言われたわけではなかった。
とここまでで村雨への説明が終わる。
話を聞いた限りだが、クラッシャー云々はミッシェルが絡んでいる。だが、どこと手を組んでいるのかが不明。
これまで自由気ままにやってきたうちを恨んでる連盟やプレイヤーは多いだろうし、今のところ探すのはかなり無理がある。
怪人クリスの連盟をつぶすのは簡単だが、今PK戦をしかけたとしてもミッシェルは逃げおおせる可能性が高い。ミッシェルを確実につぶす。そのために今は我慢して、もう少し相手の出方をうかがうべきと言うのが先生、宮ネェ、私が出した結論だ。
クラメンたちに出た結論を話す。
黒、白、ティタ、大和、村雨と順に確認を取る。各々思うことはあるようだが、致し方ないと言う感じで渋々了承してくれた。
チカには個別にキヅナには言わないようにとお願いをする。キヅナが知ったら確実にヤバイことになるから……本当にお願いね?
残りは娘のご機嫌が治るまでログインできないさゆたんだけだ。彼女については後で先生が確認を取ってくれるのでまかせていいだろう。
翌日のこと、ログインするとメンバーたちはボスツアーへ行っていた。リビングへ行くとロゼ、白影、雪継、千桜がでくつろいでいる。
仕事は良いのか? と聞きたいけれど、安らかな顔を見ると言い出しにくい。
「お~ren。おは~」
「よっすー」
「邪魔してるわいねw」
「昨日はお疲れ~」
「あ、うん」
ノロノロと起き出したロゼたちを眺めながら、ヒガキさんお手製のタピオカミルクティーを飲む。
最近ヒガキさんが飲み物の開発を頑張ってくれたおかげで、クランの飲み物は豊富だ。
「それで、何か話があってきたんでしょ?」
「うん。あるっちゃあるんだけど、もう少しのんびりしたい」
「……そう」
緊急を要する話ではなさそうな雰囲気を感じた私は、寝直したロゼたちを横目に製本を始めた。
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