第313話 最強は同盟の運営に尽力す㉕

 呼ばれた気がして顔を上げる。そこには、先生をはじめとしたメンバーたちの顔が……。


「やっと気づいたか」

「二時間もスルーされると流石に泣くよ?」

「相変わらず酷いわいねw」


 のんびりしたいって言ったから製本していただけなのに、酷い言われようだ。


「それで、何の用?」

「もっと酷い!」


 気を取り直して聞いてみた結果、雪継が酷いしかいわない。

 私にどうしろと? 君たちうちでダラダラしたかったんでしょ? だから私待ってたのに……。まぁ、製本に夢中になったのは悪かったけど。


「まー、いつも通りな感じだな」

「そうだな」


 はぁ~とあからさまなため息を吐くロゼに軽くイラっとしながら、視線で早く要件を伝えろと促す。

 

「要件ってのはフォルタリアについてだ」

「フォルタリア……あぁ、何か分かったの?」

「おまっ、忘れてんじゃねーよ」


 白影の突っ込みについつい視線が彷徨った。

 別にフォルタリアの事を忘れていただけじゃない。ただ、幼女犬やらミッシェルやらの事で、ほんのちょこっと頭の片隅のタンスの引き出しの奥の底に眠っていただけだ。

 今回に限っては、直ぐに思い出したからセーフだろう。


「いや、アウトだからな?」

 考えていたことがバレた!! 白影は、私の心を読めるのか?


「フォルタリアの事なんだが、引退した元別ゲの仲間にようやく連絡がついてな。それで聞いてみたら鉄男が言ってたミッシェルのサブ――MISLが加入してたことがわかった」

「また、ミッシェル……ね」


 ミッシェルがフォルタリアにいたと言うことは、フォルタリアも今回の件と関係あるのか? 本当に?

 悶々とした何かが喉元に詰まっているような感覚で思考が鈍る。


「フォルタリアにいた目的は何だと思う?」

「ん-。フォルタリアって古いクランだっけ?」

「フォルタリア自体は新しいぞ。けど、前身の戦神いくさがみっていうクランにいたプレイヤーが立ち上げたクランだったはずだ」

「戦神って言えば、殲滅と結構競ってたクランじゃんw」

「立ち上げたか……」

「今はもう、ほとんどが引退してる。残ってる奴らもフォルタリアは抜けてほかのクランに移ってる」


 戦神と言うクランには覚えがある。名前と同様戦闘狂が揃ったクランだった。戦神と聞いて思い出すのは、どんなに気に食わない相手でもPKなどは一切しない。攻城戦は、スポーツとして公平に楽しむクランであると言うこと。

 殲滅の破壊者だった頃、毎回と言っていいほど攻城戦でやりあったが清々しいほど潔い戦い方をしていた。

 

「戦神って何で潰れたの?」


 ふと思い聞いてみる。


「戦神は盟主が体育会系の大学生で、大学卒業と同時に盟主が引退するって事で解散したんだよ」


 そうだったのか。盟主が変われば、クランの雰囲気も変わる。それは仕方ないことだが、所属するメンバーによってはやり難くなることもある。

 例えばだが、今まで当たり前のようにやっていたことが、突然禁止になったりもする。それを危惧した他のメンバーたちが、事前に抜けることを告げていた可能性は高い。

 反対に盟主が築いたクランを存続させたいと考えるメンバーも居る訳で、そう言った人たちがフォルタリアを作ったのだろう。


「今のフォルタリアを考えれば、抜けてて正解だな」

「盟主が、金の亡者だからなーw 俺とは絶対にソリが合わないwww」


 笑って言ってるキヨシに言いたい。せめて自分の装備ぐらい自分で作ってほしいと……。


「ミッシェルがフォルタリアと接点あるのは判ったけど、フォルタリアがうちに喧嘩売ってくる意味なくないか?」

「そこなんだよ。俺たちならわかるんだけど……なんで、BFなんだろう?」


 ケンカを売ってくる理由で考えられることと言えば、同盟の事ぐらいだ。アース経由だが、同盟参加を打診されていた。それをうちは拒否した形だ。恨みを買っていてもおかしくはない。けど、キヨシが言ったように金の亡者だと言うロナウドDが、ミッシェルと手を組むほどの何かをミッシェルが持ってるとは思えない。

 そうなってくると今回の件、フォルタリアとミッシェルは関係ないんじゃないだろうか? いやだが……怪奇倶楽部の盟主のサブである白光が、アースを叩いていたと言う情報もある。

 なんだか嫌な気分だ。繋がりそうで繋がらない点にイライラする。


「うーん。無理だ。今答えが出る気がしない! 狩りに行こう」

「ちょ! 唐突にどうした?」

「ren??」

「ついに可笑しくなったか??」


 だって、考えてもわからないし。ここ最近こういう手合いの話し合いばっかりで狩りに行けてないし……正直、飽きた! こういう時は潔く、狩りに行ってすっきりするのが一番じゃないか!


「今考えても、無意味。ロナウドD捕まえるなり。ミッシェル捕まえるなりしないと何にもわからないままでしょ?」

「……確かにそうだけど」

「捕まえるね~」

「どっちも捕まえるのは厳しいわいね」

「うん。だから、気にしないで狩りに行こう!」


 クラッシャーの件は、各々のクランで対応可能だし。ミッシェルやロナウドDを引き摺り出すにしても無理だ。だったら考えて悩むだけ時間の無駄。


「確かにrenの言う通りだな。ミッシェルが表に出てくることはないだろうし、私たちができることはないな」

「じゃぁ、行きますか~!」

「いいねぇ! 同盟ハント希望!!」

「それならうちだって参加したいわ~ん」

「俺も俺も!」


 先生を皮切りに、黒がニヤッと笑い、雪継、小春ちゃんが参加を希望した。希望を聞きつつPTを組み、それぞれが狩場へと繰り出す。

 せっかくのゲームやってるんだし、楽しまなきゃ損だよね。 

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