第266話 最強は城主を目指す⑳
残り時間三十分になり、相手の攻撃が激しさを増す。と言っても、突っ込んでは引き、突っ込んでは引きしている状態なのだが。
バリアは既に使い果たしたようでゾンビアタックに近い。
森から来ては死んでいく前衛にこちらはバリアを使いながら戦線維持を優先していた。
『「バリア七番! 遊撃ソロソロ、相手のフラグベース破壊に行って」』
先生の合図に七番目のバリアを担当する回復がバリアを張る。それとタイミングを同じくして宗之助他、数十名の遊撃部隊が帰還の護符を使い城から消えた。
「ren」と黒に呼ばれ五分に一度のソウルを黒に追加する。次に大和、そして白影と追加していきMPPOTをがぶ飲み。そこが終われば今度は魔法職の方へ。
マジックオブアブソールは、時間が短いのでさゆたんとキヨシ、博士にだけ追加する。他の人にはプレマフォロストのソウルを入れた。
本気で、十分前に戻りたい。そう願ってしまうほどに余裕なく走り回る。
(宗之助) フィスのフラグベースから優先で叩くでござるよ。
(宮様) バリア八番準備出来たら報告。
(ロゼ) スキル連打してるのいるな。隙間狙ってる気がするな。
(大次郎先生) 動かないように各クラン徹底させて。
(銀狼) バリア準備できました。
(黒龍) ん~。バリアちょっと様子見でいいぞ。今そこまで被ダメこない。
(宮様)了解
『「戦線維持して、タゲって前にでるな。空いた場所は直ぐ後ろが埋めろ。出たやつは、死に戻りか帰還の護符使え」』
見ていない間に、敵に釣られて前へ出る人が続出し始めたらしく先生から同盟チャットと指揮チャで注意が飛ぶ。
今、戦線を崩されるのは得策じゃない。維持する方も大変だろうが頑張って欲しいところだ。
魔法抵抗力が低い盾、近接ATKは、どうしても相手のスキルに引っ張られ動いてしまう。そのための措置として空いた場所を直ぐに埋めることを先生は優先する。
出ちゃった人への対処とかの指示は妥当だと思うし、実際抜けたメンバーが戻るまでの間に、その隙間を敵方に抜けられる可能性もある。それなら埋めて貰った方が断然にいい、と私も同じ判断を下す。
それよりも、ロゼの言う通り相手の動きが変わってきた。それまでゾンビアタック的に突っ込んで来ていた敵が、チェーンプルと言う三次職盾が持つスキル――無理やり相手を拘束し引き寄せる――を使い壁を崩そうとしてきている。
殺す訳でもなく引っ張るだけ引っ張って放置している事から、隙間を狙っていると言うロゼの言葉もあながち間違いではないように感じられた。
宗之助たちの方もまたクランチャットを見る限り、フラグベースの破壊に苦労しているようだし、このまま敵方が何もしないと言う事はないだろう。
では、時間的に今一番有効な手段は……なんだ?
相手はまず、城外門を抜けたいはず。だが、私たちが城外門で戦線を維持する限りそれはできない。なら、別の方法を考えるはずだ。残り時間で一番城主に成れる方法。
それは現城主を殺し、全てのクランを一時的に城外へ飛ばす。そして、どこよりも早く城内へ入りフィスもしくは同盟のクランが城主になる事ではないだろうか?
このゲームの攻城戦の仕様は、どちらかと言えば攻め側に有利と言える設定をされている。
・城主クランは、城主である限りフラグベースを置けない。
死んだ場合は城内の屋根裏部屋のような部屋だが、城が落とされると同時に街の神殿でしか復活できなくなる。
・城主クランは攻城戦中、城主である限り王座の間の王座に座る事ができない。これに関しては、当然なのだろうけど。
・攻城戦中、城主クランのマスターが打ち取られた場合、城主不在となり全員が一度街、もしくはフラグベースへと転移させられる。
・攻城戦中、一度破壊された城外門、城内門は攻城戦が終了するまで復旧できない。
などなど、他にもいくつかあったような気がするけれど、私が覚えている範囲ではこんな感じだ。
それを踏まえて考えれば、攻城戦も残り十五分。相手もなりふり構ってられなくなるだろう。念のためロゼを王座に行かせておくべきかもしれない。
(ren) ロゼ、2PT連れて王座の間に移動して
『「遊撃、フラグベース無理なら、復活した回復優先で排除に回って」』
(ロゼ) もうそんな時間か
(ren) 時間もだけど、城主になる=ロゼを殺した方が早い。
(宗之助) 承知。背後より回復、魔法職優先で排除するでござる。
(ロゼ) わかった。
(大次郎先生) 最悪の場合、なんとか生き残れるように
ロゼのとこの回復でバリア持ち連れてって。
(ロゼ) 了解。選抜はこっちでやる
(大次郎先生) 宮、順番に変動あるから、ロゼに名前聞いて
(宮様) 了解よー
一々説明しなくても、とんとん拍子で決まるこの感覚が私は好きだ。ストレスなく物事に挑めるのは非常に楽しく感じられる。
ちょこちょこと会話を交わしたロゼが、選んだ二PTと共に戦線を離脱するのを確認した。
これで一つ懸念が減ったと安堵しつつ、MPがヤバイと言うキヨシ達の元へバフを配りに行く。 私が移動する間に、宮ネェはバリアの順番を組みなおし、先生はアースと二丁目にそれぞれ指示をだしていた。
宗之助たち遊撃も、城外門から見える範囲で敵のローブ職を狙って攻撃を仕掛けている。あの間を走り抜けてくる敵は、それなりの強者しかいないため応戦するこちらも気合が入ると言うものだ。
『「残り五分。全員気合い入れろ」』
激を飛ばす先生の声に、その場の雰囲気が最高潮に高まる。
突っ込んでくる敵を協力して屠る、城外門中央の黒、大和、鉄男、ティタ、ヒガキさん、ベルゼ。三十人ほどの団体が城外門へ迫ると、上から下の皆を援護する形で、白、聖劉、さゆたん、キヨシ、ゼンさんが動き、敵を間引く。
皆が一様に纏まり動いている中で、博士だけは自身の作った『英知の結晶であるPOT』を敵に向けぽいぽいと投げ放ち。敵を爆散させては、
残り三十秒を切っても、敵は諦めていないのか攻めて来る。
彼らの負けん気の強さに脱帽しながら流石に諦める時間ではないだろうか、と思わずにはいられない。まぁ、シス帝が諦めたくないだけなんだろうけどさ……。
そんな感想を頂いたとこで、攻城戦の終了を知らせるファンファーレが鳴り響く。
【 クラン SilverGarden がデメテル城の城主となりました。 】
【 デメテル城の攻城戦が終了しました。 】
(ロゼ) これ
【 クラン にゃんchu がアテナ城の城主となりました。 】
【 アテナ城の攻城戦が終了しました。 】
終了のシステムログの間で零されたロゼの言葉が印象的だった。
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