第265話 最強は城主を目指す⑲
こちらがバリア消費を狙っていると勘付いたらしい敵のバリアが、突入するだけでは発動されなくなって来た。
そこで、先生は突入の人数を増やし王座の間の壁役に攻撃するフリ――実際に数回斬りつける程度――をする事に。
これにはシス帝も引っかかり、バリアが数枚無駄になった。
『よし、次行くぞ』
(ロゼ) さっきから、テラスの敵倒してるけど何やってんだ?
(白聖) フィス以外はフラグベース無いし、戻ってこれないから潰してる。
(シュタイン) 我の攻撃は最強なり。
(ロゼ) なるほど、それうちでも出来そうだな。
(雪継) うちも行けると思う~。
と、こんな会話が途中繰り広げられ隙間時間に、パタパタと複数人の敵が倒れるようになった。
地味な嫌がらせ目的だったはずが、何気に突入の際の被弾を防ぎ、回復のMP温存に良い感じに効果を発揮している。
『「そろそろ、本格的に突入するから各クラン装備のメンテナンス終わらせて」』
(大次郎先生) 悪いけど、renはそのまま一人で突っ込んで?
(ren) わ、かった。
非常な先生の言葉に私は気が遠くなる。けど、皆のメンテナンスの時間を稼ぐには、誰かが犠牲になる必要があった。
今回で言えば、一番警戒されている私がなるのが妥当なのだろうけど……納得はしていない。
(大次郎先生) あぁ、そうだ。ついでに
『「回復は、renに集中回復! カウント――」』
先生のGOサインと同時に深い深いため息をついた私は、一人寂しく敵陣に突っ込んだ。バリアが張られないまま、ダメージを受ける。イラっとするこの感情を吐き出すために、今は我慢、と言い聞かせ「イリュージョン」と白チャを流せば、すぐにバリアが張られた。
スキル強化最大の十五秒を目途にカウントを頭の中で始める。
呼び出されるはずのない詠唱は、虚空に消えた。
これでもかと魔法や剣戟、矢が飛来しダメージを負いがっつり減るHPに宮ネェとチカを中心に回復が何度も飛んでくる。
心臓が痛いほどのHPの上限が何度も繰り返された。
『10.11.12……イリュージョントニトゥールス』
カウント10で、プロテクトスケイルを発動させる。
13で本物のイリュージョンを白チャで唱える。
この間、相手のバリアが切れていないため残り二秒で相手のバリアが消滅する。消えた直後のタイムラグが一秒としてタイミング的にはちょうどいい。
城の中なのに砂塵が舞い、パチパチと火花のような静電気が上がる。グルグルと螺旋を掻く様に集まった砂塵が、バチンと大きな音と共に弾け青い雷を纏った美しいトニトゥールスが姿を現した。
「グルボアアアア!」
一声鳴いたトニトゥールスが王座の間に向かって突っ込んだ。
爆音を上げ、壊れる壁と周囲にはじけ飛ぶ敵――プレイヤーたち。
ぽっかりと開いた穴から王座の間の王座が見える。
(ティタ) え? 竜ってバリア無効なの?
(大次郎先生) ナイスタイミングだった。
(白影) お前、どこ目指してんの?
(宮様)
(千桜) renの読みとタイミングが恐ろしいわいね。
(雪継) マジ、味方で良かった~。
(ロゼ) お、おう
タイミングはばっちりだと踏んでいたし、トニトゥールスならこうなるだろうと予想もしていた。だけど、同盟には伝えていなかった。そのため、同盟チャットが何とも言えない空気になってしまう。
そんな中、いち早く気付いた宮ネェの声に慌ててロゼが走り、王座の間に座ると四散した敵と共に、城主クラン以外のクランに所属している私たちがシステムによって城からはじき出された。
『「SGは、ロゼ以外城外門に移動。ここからは耐久戦になる。城外門防御に切り替えるから、相手が来る前に移動すませるように!!」』
フラグベースに帰還させられた私たちは、指示を出す先生の言葉に急いで排水路を駆け抜ける。七分程で同盟全体が城外門に集結した。
相手の姿はまだ見えない。
『「盾、近接は城外門に隙間なく並べ! 遠距離は城外門上。暗殺者並びに、それに等しい職は遊撃」』
城外門の中央に堂々と陣取る黒、大和、白影。そのサイドに七人ずつ盾が並び、二列目には槍を持ったティタ、鉄男、村雨、源次、ベルゼ、千桜、柊さんやドワルグさんの姿も。
そして、城外門上には白、聖劉、ロゼ、雪継などの遠距離職が陣取り、相手が来るのを今か今かと待っていた。
こちらの準備が整い五分後。
デメテルの街へ続く街道沿いの森から、フィス、黒星、暁の園の姿が見える。遠距離でもまだ流石に飛距離が届かない位置で足を止めた敵に、白の舌打つ姿が浮かぶ。
実際には、弓に矢を番え何時でも放てる状態をいじしていただけだが。
『「タイミング合わせて来るぞ、全員気合い入れろ」』
(白影) なんだろうな。戦争してるって気になるわ!
血が滾るらしい白影が、実に嬉しそうに声をあげ盾と剣を構え直す。その顔を横目に見ていた黒と大和が楽しそうに笑む。
皆の盛り上がりに反して、門前の攻防戦になってしまうとバッファーの私にお呼びはかからない。なので、一人ポツンと上下を繋ぐ階段行き来しながらバフを配り歩いていた。
『「来るぞ」』
先生の声と敵方から上がる怒号が重なった。
砂塵をあげてなだれ込んでくる敵は、被弾しようとも勢いを殺さず黒たちの元へたどり着く。
一方こちらはでは突っ込んでくる敵に、遠距離がタゲ――主に回復優先で――を合わせ攻撃していた。
ぶつかり合う盾と盾が金属音をを鳴らし、剣先が、鉾先が互いの前衛を切り刻む。幾本も上がる回復の光に壁となっている盾が見えなくなるほどだった。
『「死んだら、そこに留まるな。後ろの奴は即座に詰めろ。ディティクション絶やすな」』
(黒龍) 回復おせーよ。もっと回せ
(白聖) タゲミスるな。合わせろ
(宮様) バリア三番、準備出来たら合図ちょうだい!
(Heizer) バリア行けます
(小春ちゃん) 死に戻り組は、復帰する前に
防具と武器の耐久回復してね~ん。
『「バリア!」』
(鉄男) おい、そこのタゲこっちだつってんだろ!
(大和) ren 一番前の人たちにソウル入れて~。雷でお願い~
(さゆたん) renちゃん、アブソールいけないでしゅか?
(大次郎先生) 出来る限り回してやって。戦線維持大事!
口が悪くなっているのはうちのクラメンばかりで、他のクランの人たちに申し訳なさを感じつつま、いつも通りだなと見なかったことする。
盛り上がる皆を恨めしく思いつつ城門上で敵にブレスオブアローを放つも、微妙に届かず断念した。その後は城外門周辺をブラブラしていたら、一気同盟チャットでバフの要求をされてしまう。
「あぁ~。戦いたい」そう零した私は、ノロノロとバフを配りに走った。
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