第264話 最強は城主を目指す⑱
どうして、こうなった???
同盟所属のクランから選りすぐられた盾と重AT――うちでは黒、ティタ、大和と一緒に、バリアを纏った敵へと突っ込みながらこうなった原因を考える。
確か、ニ十分前だ。
内城門を突破して、本体と別れ黒、大和、ロゼと一緒にイリュージョンで続きの間にいる敵を駆逐するため、四人で二階にあるテラスの入口へと向かった。
戦争中は固く閉じられているはずのテラスの入口が開いている事に、一瞬不審に思うも黒の『行くぞ』と言う声に釣られて考えを放棄する。
そして、中に足を踏み入れた瞬間、無数にディクションスクロールが放り投げられ、トランスパレンシーが効果を失う。
姿を見せた私たちを見た敵が、バリアを張り巡らせ攻撃して来る。ぶっちゃけ針のむしろ状態だった。攻撃する余裕すらなく、瀕死になりながらPOTをがぶ飲みして入口を抜けた。
ただ、ここで何もしていないのにバリアを張る相手に疑問を持つ。それに関しては後で、判明することになる。
そこへ更なる追撃がかかり、壁を頼りに黒と応戦。バリアが切れた敵を駆逐。
駆逐している間に、大和とロゼと先生で報連相――報告、連絡、相談を行い。先生の判断で、本体に合流することになった。
内城門を制圧して続きの間に向かう途中で、何もしていないのに何故バリアを使ったのかについて同盟チャットで話し合う。
(さゆたん) ただ単に、時間稼ぎにもってこいとかでしゅか?
(ロゼ) シス帝は、
しつこいぐらいに前回、俺に聞いていたし。
シス帝の性格ならそれぐらい徹底してやりそうだ。
(千桜) 幾ら数が多いと言っても、攻城戦残り50分もあるわいね。
(白影) あぁ~。ありえる。前回痛い目見てるし
(小春ちゃん) ん~。確かに時間稼ぎもありそうだけど、それだけじゃないわよね~ん。
(宮様) そうね~。でた意見の中ではロゼのが正解みたいね~
同盟チャを見ていた先生がニッコリと笑う。黒いその顔を見たクラメンたちが、顔を引きつらせる横で私もまた嫌な予感がした。
この顔を見ていない同盟相手が不憫でならない……。
『「各クランは、盾重ATKを10人選別。それを五人ずつA班とB班に分けておいて」』
先生がこれから言うであろう不吉な内容に思い至ったらしい大和が、青白い顔のまま『まさか……バリア全部?』と、漏らす。
その間にも、次々と十人の選抜が終わる。
そして、報告を受けた先生が声を張り上げ作戦を告げた。
『作戦を発表する。A班は続きの間に入ったら、攻撃するフリをしながら五メートルぐらい進んでくれ。相手がバリアを使った時点で、直ぐに後退して構わない。その間、回復は全員、突入した仲間の回復を優先。A班が戻って、バリアが切れたら、今度はB班が突入。相手のバリアが切れるまでそれを繰り返す。以上よろしく」』
バリアがあると言っても、せいぜい40枚前後だし常に張ればそれはいずれ無くなる。それを絶えず使わせる作戦を考えた先生は優秀なのだろう。けれど……中に入る面々にとっては鬼畜でしかない。
顔色を失くしたメンバーたちに同情を覚えた。
軽く肩を叩かれ振り向く私に、先生は『あぁ、renも一緒に入ってね?』と軽く告げた。なんで? と聞くよりも早く『だって、相手はrenのイリュージョンを警戒してるんだから、いないとおかしいでしょ?』と答えが返ってきた。
そして現在、冒頭で考えた事を叫びつつ相手のバリア消化を狙って魔法と矢、剣戟が飛び交う中続きの間から飛び出す。
入る間際になって『renは目立つ服装でね。後、うち人数少ないから、ren、黒、大和はABどっちも担当で』と言われ気が遠くなる。
花魁衣装を着て飛び込む私は後衛である。そのため、被弾するダメージが半端ない。ゲージが常に八割から二割に変動する様は見ていて心臓が痛くなるほどだ。
皆の元へ戻ると間を置かず、鉄男、黒、ティタ、大和、私が突入する。
『ちょ、もう痛すぎて笑しか出てこねーよ』
『痛い痛い痛い痛い! 俺槍使いなのにぃぃぃ』
『拷問されてる気分』
『ぎゃー、死ぬ死ぬ』
絶叫マシーンのように叫び続けるチカと鉄男を他所に、大きなふり幅を示すゲージに私と黒が愚痴を零す。
『「もうそろそろ、バリアが底つくはずだから、もうしばらく耐えて!」』
励ますような声音の先生を恨めしく思いながら、バリアの発動と同時に引き返す。そして、またバリアが切れる寸前HPを全開にして貰い突入した。
突入すると集中的に私が狙われている事がわかる。余りの痛さに、隙間を狙ってイリュージョンを打ち込みたい衝動に駆られるも、無駄内になる事が判り切っているので我慢するしかない。
それでもなんとか一矢報いたいと、痛みに耐えながら考える。
フィスタルトは誰を殺したとしても城主だから直ぐに復帰してしまう。それでは何の意味もない。フィスタルトは残すとして……フラグベースが破壊されている黒星、暁の園なら……?
思いついた妙案に、これなら少なからず嫌がらせになる、と口角が上がる。
[[ren] 白、聖劉。ちょっと相談があるんだけど]
バリアの消化を待つため引き返した隙に、私はクラチャを開き白と聖劉へ声をかけた。
「どうした?」と答えた二人に、思いついた嫌がらせを話せば暇だったらしい二人の他にさゆたん、キヨシ、博士が話に乗ってきた。
[[白聖] わかった。タゲは俺にませろ。隙は一瞬だからミスんなよ?]
[[キヨシ] 任せろー!]
[[さゆたん] やるでしゅ]
[[聖劉] 漸く暇から解放される~]
[[シュタイン] おうである!]
ニヤりとほくそ笑む五人と共に、続きの間へ突入する瞬間を待つ。
そして、バリアの効果が消え、『「A班、突入」』と言う先生の声が上がった直後――私たちが続きの間へ踏むこむ寸前のその一瞬の隙を付き、白がテラス上で姿を晒す黒星の回復にターゲットマーカーを付け。何も知らない相手はコンマ集秒で崩れ落ちた。
[[キヨシ] いえーい。やったぜ!]
[[大次郎先生] それ、次もやって。別に回復じゃなくても
紙なら一瞬だし誰でもいいから]
[[白聖] おー、任せろ]
ハイタッチを交わすキヨシと聖劉の横で、顎髭を撫でつけていた先生が何かを思いついたらしく次もと指示をだす。それに気を良くしたらしい、白たちは痛みに耐える私たちを他所に、一人ずつ確実に屠って行った――。
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