第186話 最強はアップデートを楽しむ⑧
円卓の騎士クランの面々に助けられた? 私は現在、源次と一緒に彼らと九階の皆の元へ向かっている。
そうなった経緯は、こんな感じだ。
階段でカッコよく決めた源次のコートをひっつかんだ短剣職の彼は、申し訳無さそうな顔をして、もう一度源次に対して丁寧に謝罪した。
その後、彼らは瞳を輝かせ私たち二人にこんな感じで話をしてきた。
「あの! よかったらSS一緒に……だめですか?」
「あぁ、俺でいいならいいけど? SS取ったからって何かあんの?w」
「いやだって、超! 有名な人じゃないですか!」
「ふーん?」
「宗乃助さんとか、ティタさんとか、黒龍さんとか!」
「え? renが一番有名だと思うけど……こいつには気付かなかったのか?w」
「えっと……名前見てなかったですw」
「そっか、ティタたちなら9Fにいるし一緒に行ってSSとるか?」
「いいんですか?」
「まー、いいんじゃね?w」
と言う訳で、現在移動中なのだが……やり難い! モブを源次が斬るないし倒す度に「おぉ~!」「すげぇ~」「かっこいい!」などなど、賛辞の声が飛ぶのだ。
いや、普通に倒してるだけだよね? こんなん二次職でも余裕でできるよね? 君らもしてたよね?
憧れてるのは分かるけど……流石に盲目過ぎないか?
[[ren] やり難い!]
[[源次] まー。あれだろ……憧れだろ?w]
[[ティタ] 戻りw]
[[さゆたん] 早いでしゅねw]
[[黒龍] renおせー!]
[[ren] 戦い難い!]
いい加減うざったいと言っては失礼だろうが言ってしまうのも仕方が無いだろう。本当なら、もう既に九階に着いていてスクを配って私は休憩に行っていたはずだ。なのに……あぁ、また。
やたらモブに遭遇する。もしかしたらだが、PTの人数により増えるタイプのダンジョン扱いなのかもしれない。
ん~。これは面倒だ。
早く登ってしまいたい私は歩を進めながら考え、一時的に連合を組みトランスパレンシーを入れて進むことにする。
連合を組んでトランスパレンシーを入れるだけで、どよめく彼らに注意点などを伝えさっさと進む。
それから三十分、いつもより遥かに時間がかかった。何度もトランスパレンシーの効果について説明したけれど、彼らは全く理解していなかった。
トランスパレンシーを入れては、誰かが白チャで発言したり攻撃したりする。その度に入れ直し、注意を繰り返す。
極度の疲労感を感じながら、なんとか皆の元へ到着した。
[[ティタ] 誰?]
[[さゆたん] ど、どなたでしゅか?]
暇そうに座るティタとさゆたんが同時にクラチャで、私たちに同行する円卓の騎士の面々を凝視しながら警戒する声を上げた。
そんな二人に源次が経緯をクラチャを使って説明すれば、戻ったらしいキヨシとチカ、鉄男が大変楽しそうに笑う。
笑い方が、雪継を構っている時のそれによく似ている。とてもいやな予感を覚え、やり過ぎないよう注意を促したのだが……時、既に遅し?
何をしても喜ぶ彼らに、ポージングを決めガンガンSSを撮らせている。
[[宮様] チカ! 回復しなさい!]
[[ゼン] あの、鉄男さんいつ交代しますか?]
狩り中にも拘らず、それを放置するチカに対してキレる宮ネェ。
交代しようとした所で私たちが到着してしまいタイミングを逃したゼンさんが、オロオロしつつ鉄男にまだかと聞いていた。
そんな彼らに買って来た解除スクロールを渡して、私はさっさと寝袋に入る。
SSとかどうでもいいから、よく分からないこの疲れをお風呂で癒したい。
一応クラチャに落ちる事を伝え、寝袋に入りログアウトした。
リアルでお風呂とご飯を済ませ、すっきりした気分でゲームへログインする。
そこには何故か見知らぬ死体と大量のモブが沸いていた。
[[ren] 皆どこ?]
[[ティタ] 村雨、そこ邪魔! 右]
[[白聖] 手ごたえね―なぁw]
[[大次郎先生] あ、renオカエリ。部屋移動した]
[[ren] それどこじゃない!]
死体が引いたであろうモブが、戻ったばかりで唯一生きている私に襲いかかる。
範囲をするにしても、バフも何も入っていない状態でモブに囲まれるのは勘弁して貰いたい。
壁際に立つ私に対し、囲み始めるモブをゲッターサークルスクロールを使い、足止めしつつその場から逃れる。
出来る限りモブを纏め、距離を稼ぎバフを入れた。
効果が切れ再び動き出すモブにゲッターサークルスクロールを使い纏める。そして、エレメンタル アップ(+15)を入れて、設置型のバインドとショックボルト(+19)を即座に発動させた。
更に距離をとりつつホーリー フレイムレイズ(+20)とドラゴン オブ ブレスをディレイ時間をみながら交互に連発する。
半分ほどモブを倒したところで、宮ネェたちが此方の部屋に戻ってくる。
[[黒龍] すまん。他の大部屋が空いたからそっちに移動してたw]
[[キヨシ] renなら余裕だろ~w]
[[大和] 大丈夫?]
なるほど、どこかいい場所が空いてそちらに移動したのか……。それは仕方ないけど、流石に起きぬけでモブに囲まれるのはキモが冷える。
黒たちの加勢で一気にモブを殲滅し終え、死体に視線を送る。
彼らが戻ってくるのであれば、それまでここで狩りして場所どりしてもいいけど……どうするんだろう?
そう思いながら声をかけようとした所で、死体が無言のまま消えて行った。
[[ren] とりあえず、様子見でここ使っとく]
[[ティタ] じゃぁ、5人そっちにいこうw]
[[鉄男] 俺いくーw]
[[聖劉] ノ]
[[ゼン] ノ]
[[村雨] ノ]
[[大次郎先生] 決まったなw バフは交代で貰いにいこうかw]
どうやら先着順だったらしい。
黒たちが新しい大部屋に戻るのと入れ替わりに、ゼン・鉄男・聖劉・村雨・ティタが此方へやって来た。
そのまま流れでPTを組みモブが沸くのを待ちながら流れを確認した。
バフを入れ終え、相談した通り鉄男がモブを引きに行く。それに村雨が追従する形で走り、取りこぼしを引いてくる。
ゼンさんと聖劉がゲッターサークル スクロールを使いモブを纏めその間にデバフを設置、発動させた。
その後はいつも通り、範囲魔法と槍でモブを処理する。
新規狩り場に行こうイベントのアイテムは十分に出るものの、魔法書やら装備は落ちない。
いつも通り過ぎる流れに、狩り場を替えても作業感が強くなる。
『ん~。なんか、目新しいものでないなぁ』
『まー、こんなもんじゃね?w』
『相変わらずなんですね……』
『飽きて来たw』
『まぁ、経験値稼ぎに来たと思って諦めようぜw』
同じように感じているらしい村雨の声に、聖劉・ゼンさん・ティタ・鉄男の順に返す。
諦めが肝心なのは確かだが、流石に出なさすぎではないだろうか? 経験値を稼ぐと言う意味なら、魔巣の半分と言う所だ。
モブの沸きが遅い上に数が少ない。
イベント中でなければ、ここに来る事は無いだろう。
他のメンバーも帰ろうとしない辺り、経験値と言うよりはイベント優先で考えているはず。
『そう言えば、ここのレイドって人数制限あるらしいそ?w』
『マジ?』
『うん。なんでも3PTー24人までしか入れないらしい』
『へ~。ボスってなんだっけ?』
『クリュエル トレラってボス』
『それってどういうボスな訳?』
『設定ぐらい読んどけよw
簡単に説明すると、この採掘場つーか鉱山? に住みついた狂気の科学者トレラがモブ使って研究を続けた。で、死ぬ前に身体をリッチにしたって言う設定らしいぞw』
『なるw 物理効くの?w』
『さぁ? 今日アップデートだし、動画とかなんもないからわかんねーよw』
鉄男とティタ・聖劉の会話に興味深々で耳を傾ける。
狩りをしながらなので、途切れ途切れで会話が続くもキッチリ説明してくれた。
人数制限的にはクラメンだけで行けそうだ。この後行ってみてもいいかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます