第184話 最強はアップデートを楽しむ⑥
探索を始めて一時間、この狩り場の全容がなんとなくだが把握出来た。
一階は、バットやマンティスと言った昆虫系の弱いモンスターで構成され、、道は狭くて戦い難い。大部屋みたいな部屋も無く、本当に坑道だった。
二階から三階は、二足歩行するフォディーナズ ハイ ウルフ・オリヒオゼ ハイ マウスなどの動物系。
一階よりは僅かに広くなった道に、複数個の小部屋がある狩り場だ。
動物系と言っても、武器を持ち攻撃してくるあたり全く可愛くない!
四階から五階は、巨人エリア。ルドニク ハイ ギガースやヴェルク ハイ ミノタウロス、ミーヌゼ ハイ サイクロプスなどが出現していた。
本当に大きい。この間のカリエンテまでとはいかないがそれでも……私たちの四倍はある大きさだ。
それらがうろつく坑道は広く高い。奥まった所に、複数部屋はあるようだが、ここは範囲と言うよりソロ用。
軽く戦闘をしてみた結果、魔法はかなり有効だが物理はほぼほぼ通らないようだ。
六階から七階は、アンテッド系が沸く。
ただし、普通の人型では無くモンスターがアンテッドになった形のゾンビやグールだ。
ベルク ハイ オークゾンビ、ドニーク ハイ ゴブリンゾンビ などなど、弓や剣、鈍器などを持っているが足は遅い、
範囲狩りするには引き方を考える必要はあるけど、数は稼げそうな狩り場だと思う。道はそこまで広くもないし、高くもない。
各通路の奥には、部屋が用意されているからありがたい。
八階から九階は、悪霊の類が沸くようだ。
オルセイ ハイ レイスやミルーウ ハイ ファントム、へ―ゼル ハイ リッチと言った、モンスターが沸く。
その中でもファントムはかなり厄介だった。
薄暗い坑道の中では、地を這って移動してくるため見えにくいし、デバフがウザイ。
四属性と闇属性の魔法に耐性があり、闇は回復することもあったので仕様には注意が必要。
聖属性と物理攻撃は良く効く上に、HPも少なく私的には狩りやすい狩り場だと思う。
十階には、ボスがいる。マップで見てもその内容はわからなかった。
一度足を踏み入れておく必要があるだろうが、レイドに一人で立ち向かうつもりは無いのでいずれクラハンで行ってみたい。
と言う感じで狩り場の検証が終わり、私たち三人は九階で唯一空いていた大部屋を陣取り狩りを始める。
『ここいいなw』
『村雨が引いてくれるから楽でしゅw』
『聖属性入れとけば余裕だw』
『二人共武器、属性教えて?』
『俺、聖槍』
『私、火でしゅw』
『k』
村雨には、聖のインヴィスに雷のソウルを入れた。
さゆたんには、火のインヴィスに氷のソウルを追加し、自分には聖のインヴィスと試しに闇のソウルを入れる。
ファントムのデバフを一応警戒して、マジック オブ パラリシス(+25)も追加しておいた。
麻痺と言うよりは、バインドに近い感じがするが……ないよりは良いだろう。
『デバフの解除スクあるし、まーなんとかなるだろw』
『ダメだったら、そこで範囲するでしゅよw』
『k』
村雨の言葉にデバフの解除用スクロールを、わざわざ一階まで買いに戻ったことを思い出す。
宮ネェやチカが居れば、ピュリファイが使えるから戻る必要はなかった。
けれど、今回私たちは三人だ。回復が居ない状態で、ファントムのデバフを食らえば死が待っている。
そんな訳で、一階まで戻り雑貨屋NPCで大量の解除スクを買って来たのだ。
『うんじゃ、ひいてくるぜえええ!』
『相変わらず、狩りになると村雨の雄叫びが酷いでしゅw』
『悪霊退散! ってやってる人みたい』
『ひやあああああああああああああ!』
ただモブを引くだけなのに……まるで、祈祷中の巫女のような奇声を発する村雨にさゆたんと二人苦笑いする。
部屋を一周走り村雨が戻る。それと同時に、ゲッターサークルスクを数枚使い、設置型のホーリー フレイムレンジ(+25)バインド(+18)を発動させた。
一応リッチには、サイレンス(+25)も試してみた。
闇のソウル半端ない! ほぼほぼ一発で全てが入る。これは、ストレスフリーで非常に良い!!
なんて思っている間にさゆたんが、ホーリー マジック ベールーー聖なる光が降り注ぎダメージを与える。――を数回連発で発動させ攻撃。
それに負けじと村雨も相変わらずの奇声を上げつつ、槍に持ち替えモブを攻撃する。
一部屋丸ごと引いて六分、討伐にかかる時間は三分ほどだった。
ここの狩り場の感想としては、沸きは問題ないし狩りやすい狩り場だとは思う。が、討伐時間よりも引く時間の方が長い。
ファントムのデバフのせいで縫いとめられてしまうため、どうしても引きの方が長くかかってしまうようだ。
『ん~。やっぱ引きがめんどい感じだな』
『デバフのせいでしゅねw』
『1回にどれぐらいデバフ食らう?』
[[白聖] 見た事ある奴らがいる!]
『さっきは八回だったw』
『多いでしゅw』
[[ティタ] 抜け駆け……?]
『その分モブは弱い感じするけどなw』
『なるw』
[[源次] なぁ……俺らにもバフくれよバフw]
『見つかった……でしゅw』
『最悪だw』
『……乞食』
[[キヨシ] ずるい! 俺も美味い狩りがしたい!]
『物乞いでしゅw』
『乞食はやべぇw』
経験値のスクロールが終わり、少しだけ休憩を入れる。
その間に、感想などを言い合っていると部屋の入り口に見慣れたクランマークの集団が現れた。
どうみても、クラメンだ。
いじけ気味のシロ、ティタ、源次、キヨシが乞食のようにバフを集って来る。
見つかってしまった以上は仕方ない。
諦め気味に立ち上がりバフを入れようとしたところで、黒から待ったがかかった。
[[黒龍] バフ入れる前に、俺一回リアルで休憩入れたいw]
[[さゆたん] そうでしゅねw あたくちも入れたいでしゅw]
[[白聖] あー。俺もw]
[[大次郎先生] そうだね。じゃぁ、入れ替わりで休憩入れようかw]
[[宮様] 寝袋ない子いる?]
[[キヨシ] 俺は狩るぜ~!]
[[†元親†] 俺も狩りしたい。金がない! 金金金!]
[[源次] 1PT分ずつ交代で残ってさ
ここで狩りすりゃいいんじゃねーの?]
[[ren] 私最後でいい]
[[大和] 最後で~w]
[[ゼン] あ、僕も後でいいです!]
こんな感じでクラチャで話し合いが行われ、私・大和・チカ・キヨシ・ゼンさん・聖劉・ティタ・源次で狩りをすることになった。
フルPTだとインヴィス入れなくても良いかな? うーん……。
悩みに悩んだ末、新しい魔法を使いたいと言う欲望のまま入れる事にした。
『武器、属性plz』
私の声に答え、大和は聖、チカも聖、キヨシは水、ゼンさんは火、聖劉は聖、ティタも聖、源次も聖のインヴィスをそれぞれに追加する。
ソウルは前衛には雷、後衛には氷を入れておいた。
[[大次郎先生] じゃぁ、二時間後に戻るからw]
そう言った先生たちは、周囲の壁や床と同色のサバイバル用の寝袋に入りログアウトする。
この狩り場での寝袋は、この色だった。それを全員購入しているあたり、偉いと褒めてもあげてもいいかもしれない。
引きは盾の大和で、追従はティタがかって出る。
二人が部屋の中を走る。が、そこで大和の足が止まり動こうとしない。
『チカ>大和 ピュリファイ』
『k』
『ありがとう。チカ! ってまた!!』
『チカ』
『k』
チカに指示を出し大和の足止めを解除するもまた、すぐに足止めを食らっていた。
流石に、この状態ではチカのMPもきつくなるだろうし、次に行く前に解除スクロールを渡しておこう。
そう思いつつ、狩りに熱中し過ぎてスクを渡すのを忘れ引きに行かせてしまう。
『ん~。ピュリファイの範囲そんな広くないから、俺が追従した方が良くない?』
『あぁ、次戻ったらスク渡す。自力解除で』
チカの声に、スクの存在を思い出し慌ててPTチャットで伝えた。
引きから戻った大和とティタに解除スクロールを五十枚ずつ渡す。
するとティタから何処で買えるのか聞かれた。一階の雑貨屋で買えることを伝えてやれば、後日返すと言われた。
それから二時間、途中解除スクが無くなったりしたけれど狩りは順調に出来たと思う。
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