第160話 最強は壊滅を齎す⑫

 私の脅し効いたのか……効きすぎた? のか参加者やクラメンたちの顔つきが必死な様子に変わり、討伐に対する動きが変化した。

 むっ……やりすぎたか? などと考えながらも、まぁいいかと流して自分のやるべき事を始めた。

 

 ボスの残りHPは参加者全員の動きが変わったおかげか、既に五割で……。

 宮ネェ・チカ・カフェオレや他の回復のMP残量を確認した。


 このガーゴイルは、ここからが勝負らしい。

 ロゼたちの説明では、残りHPが40%切ったあたりから雑魚を召喚するそうだ。その雑魚とは、このあたりでは見かけないブレイズと名の着くウルフやタイガー、サラマンダーやリザードマンなどだそうだ。

 

 攻撃力はそうでもないらしいが、装備が整っていない。もしくは、Lvが低いプレイヤーはその数の暴力に殺されるらしい。だからこそ、ロゼは引退者ではあるがその動きに信頼を置く雷に雑魚の管理を任せたのだろう。

 

 なんて事を復習している間に、ボスが動いた。


「ガアアアアア」


 低く地を這うような泣き声を上げたガーゴイルが、マグマで出来たような跳ねを大きく広げ空中へと飛び上がる

 こちらの攻撃が届かない程の高さに飛び上がったガーゴイルは、両手を頭上に向けるとそのまま振り下ろした。

 

 その後両手を組む形で滞空するガーゴイル。試しに魔法を一発ガーゴイルに向け売ったのだが、その状態の時はどうやら無敵になってしまうようでHPの変動はなく、羽を動かす以外動く事もなかった。


『雷。雑魚ヘイト!』

『わかったなのです』

『全員、雑魚処理頼む。

 魔法職範囲で! 槍持ちは槍使ってくれ』



 ロゼの声に、周囲のATKたちが武器を持ち替え。

 雷は返事をすると降り注ぐ溶岩の塊を猛スピードで潜り抜け、次々とヘイトを入れる。ほぼほぼヘイトを入れ終え、元の位置に戻った。


『一応全部に入れたけど自身がないのです。

 盾の人、近くのモブには予備でヘイト入れて欲しいのです』


 雷の声に反応した、周囲の盾職が近くの溶岩の塊にヘイトを入れた。そのタイミングで溶岩の塊が地に落ちるとモブに姿を変え、雷に向かう。


[[ren] ヒガキさん。ゼンさん。

    ゲッターサークル 使って。2秒おき

    ティタ、場所ターゲットマーカーで指示!]

[[雷] 宮ネェ、チカお願いするのです]

[[ゼン] はい!]

[[ヒガキ] はい!]

[[ティタ] りょーかいw]

[[宮様] 任せなさいw]

[[†元親†] おう! いきろーw]


  余り一気に集まっても、雷のHPが持たないだろうと即時判断を下した私は、クラチャでヒガキさんとゼンさんに指示を出した。

 ティタのターゲットマーカーは信頼できるし、三人で使えば雷のHPも大丈夫だろうと考えた。


 雷を殺そうとバラバラに集る雑魚に次々、ゲッターサークルのエフェクトがあがりそれ一つにまとめて行く。

 スクを使いつつバインド(+18)やショック ボルト(+19)を設置し発動させれば、そこを狙いクラメン達が範囲で攻撃を繰り出す。

 考えた事を態々言わなくても分かってくれるクラメンの動きに感動しつつ雑魚処理を終わらせた。


 最後の塊が倒れた刹那、ボスが大きく羽音を響かせ地上に降り立つ。間髪入れず黒のヘイトが入り、ボスへの攻撃が再開された。

 何度見ても、魔法やスキルのエフェクトがボスに集中する様は綺麗だ。

 リアルで例えるなら、レーザーライトを使ったテーマパークにいるようなそんな気分だった。


『残り20%切ったら、全員MP気にせず攻撃連打してくれ』


 ロゼ発言に開始前の言葉が蘇る。

「あれだ。見た目たいしたことないし、ボス自体もそんな今日攻撃はないんだけど……。

 最後の最後、残りHPが20%を切った段階から二分おきに雑魚呼んで、それの量が倍々で増えるんだよ。

 そのせいで処理にもたついて討伐時間が10分過ぎるごとに”分身体”呼ぶんだ。

 このボス……初めて討伐した時さ、マジで運営攻略させる気無いと思ったわw」

「分身体って……まさか、ボスのフルコピーじゃねーよな?」


 分身体と言う言葉に黒が反応する。その声にロゼは凄く嫌そうな表情をする。


「完コピだ。それも1匹が雑魚呼ぶともう1匹も雑魚呼ぶw」

「最悪じゃんw」

「最短で抜けるには、雑魚はその都度倒してボスも10分以内に終わらせるしかないってことか」

「そう言うこと」


 と言うような会話があり、私なりに出来る事をしようと決めていた。


 ボスのHPを気にしつつ、最大火力で挑めるようPTごとに個別のバフを追加する。


『そろそろ来るぞ、雷頼むな!』

『頑張るなのです!』

『雑魚量増えるなら、俺もでるわ』

『お願いするのです』


 ロゼの呼びかけに雷が力強く答えた。そんな雷をサポートすると白影が自発的に協力を申し出た。


 HPが残り二割になると同時にボスの羽を構成していたマグマがドロっと落ちる。巨体を震わせ、地団太を踏むような仕草を見せたボスの見た目が赤黒い色合いから黒へ変化した。

 それが合図となり、先ほどの倍はあるだろうと思われる溶岩の塊がボス部屋の中へと降り注ぎ始めた。


 ボスのタゲを持つ黒・大和はその場を動かず、定期的にボスへとヘイトを入れ、雑魚のタゲを担う雷と白影が部屋中を走り回りヘイトを入れ定位置に戻る。

 それに合わせ、ティタのターゲットマーカーがゲッターサークルスクロール用の位置を示し、バラバラに集まる雑魚をヒガキさんゼンさんが纏めあげた。


『ゲッターいいな。これ今後使えそうw』

『まねすんなよ?w』

『なんで、お前がいうねんw』

『エセ関西弁やwwww』

『お前もエセやんかw』

『つか、ゲッターにこんな使い方があったとは……買い占めて実験するのである』

『それは、やめてw』

『切実な願いでござるなw』


 ゲッタースクの使いやすさに気付いたらしいロゼが、今後これを取り入れよう的な発言をすれば、キヨシが真似するなと言い始め……それに反応したらしい博士が買い占めを宣言した。

 流石にそれは私が困るので勘弁して欲しいとお願いすれば、宗乃助が切実だと言う。


 真面目な討伐中にもかかわらず、自由なクラメンたちと交流しつつ雑魚処理を終わらせた。処理が終わると同時に、参加者たちがすぐさまボスの攻撃へと戻る。

 その時、ごたつくことなく移動できたのは雷と白影の位置取りが上手いおかげだろう。


 ボスに集中する攻撃エフェクトを見やり、時間をずらしたバフを更新する。ついでにボスへブレス オブ アローを叩き込み、MPPOTをがぶ飲みした。

 

[[白聖] ボスの属性変わったか?]

[[ミツルギ] ん~。硬いっすね]

[[村雨] シロどういうこと?]

[[風牙] 属性が変わった?]

[[大次郎先生] どういうこと?]

[[白聖] 羽が落ちてから水・氷のダメージの通りが悪いわ。

    色々試してみたけど、一番いいのは火だな]

[[ren] 羽落ちる→属性変化 火→地ってこと?]

[[シュタイン] そんなことあるであるか?]

[[白聖] 可能性は高いな。

     ダメージ表示させて数値みたけど明らかに違う]

[[ren] さゆたん、キヨシ 

    ちょっとブリザード使った後メテオ使って

    ダメージ量どれぐらい違うか教えて]

[[ティタ] 討伐中のボスの属性変化とか聞いた事無いよ?]

[[さゆたん] いいでしゅよw]

[[キヨシ] わかったーw]

[[大次郎先生] 結果次第でロゼに伝えるわ]


 シロの言葉にまさかと思いつつ、さゆたんとキヨシにメテオを落とすよう頼んでみる。その結果次第でロゼに伝えると先生が言う。

 会話が終わりさゆたんとキヨシが同時にブリザードを発動させた。その後間髪おかず、メテオを発動させボスへ叩き込んだ。


[[さゆたん] ダメージ5000ぐらいでしゅね]

[[キヨシ] 俺もそんなもんだなーw]

 

 その数字の違いに私は驚きいた。二人に使って貰ったブリザードもまたメテオと同じく氷属性の中では最強と言われている魔法だ。


 まさかとは思ったが本当にそのまさかだったのだ。シロの予測通り、だと思っていたボスの属性がここへ来てしていた。


[[シュタイン] 間違いないようであるな]

『え? 誰だメテオ使ったの……っていうか、メテオの魔法書あったのかよ!』

『メテオすげぇ!』

[[風牙] マジかよ]

[[村雨] 武器とスキル調整する必要がありそうだな]

『これが、メテオストライクか……』

[[大次郎先生] 伝えるわ]

『ロゼ。ボスの属性が火から地に変化してる。

 多分だけど、羽が落ちて色が変わると同時に属性変化もするみたい』


『先生、それマジ?』


『うん。今さゆとキヨシにメテオとブリザード落として貰って確認した。

 ダメージが、5000違う。

 この事から考えても属性が変化してるのは間違いない』


『そこまで違うなら間違いないだろうな。わかった。

 全員攻撃は火に変更! 雑魚は今まで通り水で!

 武器とか属性ついてるの持ってる人は持ち替えて対応よろしく!』


 シロの気づきのおかげで更にボスへのダメージが通りやすくなり、三度目の雑魚を召喚するのと同時にボスが討伐された。

 召喚された雑魚を雷と黒、大和と白影がヘイトでタゲをとり一か所に纏めあげる。それにヒガキさん達が加勢するかたちでなんなく倒せた。


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