第161話 最強は壊滅を齎す⑬

 休憩中さっきのボスについての意見交換が行われた。と言っても、基本発言するのは元クラメンとか引退者とか……私の関係者ばかりなのだが……。


 凄く遠慮されている気がして、イタタマレナイのは気のせいにする。


 私がそんな事を考えている間に話は進み。やはりボスの見た目の変化が、属性変化のキーになっているようだった。

 しかも、はじめてロゼたちがここに踏み込み中ボスのガーゴイルと戦闘した時、ボスの見た目は黒ではなく青に変化したらしい。


 その事から導き出せる答えとして――。


 このガーゴイルは、雑魚の処理時間に応じて属性が変化するのではないかと思う。そして、羽が落ちてから10分後に召喚される分裂体は元のガーゴイルと同じようにまた違う属性になるのではないかと思った。


 あくまでもこれは、私の個人的な見解であり、間違っている可能性もあることから誰かに言ったりはしない。

 自分の中で考査を終わらせ、PTチャットに参加する。


『もしかしかたら、これから属性変更ボスの配置増えるかもしれねーな』

『ありえるね』

『まぁ、間違いなく来そうである』

『面白いけど、こう言うの変化しましたよとか言う表示欲しいよな~』

『配置増えても吾輩には関係ないにゃ? 俺の一人称吾輩だっけ?』

『そんな優しい機能がこのゲームにあると思うか?』

『ないわいね』

『もう、普通に話せw』

『ないねw』

『N』

『ありえないだろうねw』

『まぁ、なんにせよ面白くなるんじゃないの?』

『運営に何かを求めるのはダメだなw』


 黒の言葉に、これから増えるだろうなと思った。それに同意する先生と博士の声に面白いけど……とキヨシが言えば、今度は一人称を思い出せないらしいライガーが関係の無い話を繰り出した。

 白影が、キヨシの考えを甘いと切り捨てれば、ほぼほぼ全員が頷いた。そんな状況の中、何かを纏めるように今後の仕様に期待するような事を風牙が言った。


『そう言えば、さっきのメテオ……どこで魔法書拾った?』そう話を変えたのは、ロゼだ。


『善悪でしゅよ』

『ボスドロップだった』

『ほー。何階?』

『60Fでしゅ』

『60かー。あそこボスのタイミング合わないんだよな~』


 それにさゆたんとキヨシが素直に答え話が進んで行く。普段通り話しながらロゼが、何故かこちらをチラチラ見て来る。

 嫌な予感だする。


『先に言うけど、元クラメンだろうが知人だろうが、うちのクランの敵対になりうるクランには魔法書売らないよ?』


『『『チッ』』』


 嫌な予感がすると思って、千手を打てば至るところから舌打ちする音が聞こえた。普通に考えれば簡単にわかるだろうが……そうイラつき思いながら、メテオの話を終わらせる。


『クラメンならいいのかー?』

『キヅナ引退済みだよな?w しかもメイン魔法職じゃねーじゃんw』

『サブで使ってみたい!』

『別にいいけど』

『サブにメテオwww しかも1回使うだけのために魔法書渡すのかよっ!』


 キヅナの声で、再びメテオの話しに戻る。

 使ってみたいと言うキヅナに魔法書を渡す約束をすれば、周囲からもったいない! ありえない、ふざけんなと大合唱で責められてしまった。


『ずるい! 俺にも頂戴!』

『俺も!』

『あたしも欲しいわん♪』

『拒否』

『そう言わずにさ―』

[[白聖] ふっかけてクラン費にしようぜw]

[[さゆたん] いいでしゅね~w]

『頼むよ~』

[[シュタイン] 格安で、欲しいのである]

[[ティタ] ふっかけるのありだねw]

『お願いよん!』

[[宗乃助] かなりの額になりそうでござるw]


 シロの言葉にその手があった! と閃きのようなものを感じ、フル回転で考えた。メテオ自体クラハンで出した物だし、その権利はクランにある。

 売り上げの20%と使った材料費をもらえれば私は十分に元がどれるはず……。


 そこまで考え、売る事を決める。その間ににもクラメンたちが次々同意の声を上げる。

 そんな会話に埋もれるように自分も欲しいと訴えたシュタインには後で渡すことを伝えた。


『んー。どうしてもって言うなら売ることも考えなくはない。一冊、いくらで買う?』

『お? 売ってくれんの?w』

『マジ?w』

『ちょっと相談するわね!』

『急がなくていい。それよりもカリエンテの説明して?』

『あぁ、悪い。まず説明するわw』


 そう伝え、漸くボスの説明をロゼから引きだした。


 カリエンテについてロゼが語った事を私なりに纏める。

 カリエンテはHPの残量に応じてその都度、形態を変えるようだ。その変化は、鱗の色でわかるらしい。


 第一形態は、鱗が黒くとにかく動きまわり、タゲが飛びやすいそうだ。

 ダメ―ジは普通に通るし、挟撃だけ気をつければいいらしい。


 第二形態は、鱗が赤になり動きは遅くなるものの、飛翔し近接のダメージが通らなくなったり、地上に降り翼を広げれば遠距離攻撃のダメージが通らなくなったりと色々面倒なようだ。


 ロゼ曰く、この第二形態が一番時間がかかると言う。

 その言葉にもしかしたら、カリエンテにも属性変更があるのかもしれない。そう思った。


 そして、第三形態だが、これつにて話す前にロゼは、ここで俺らは撤退したんだけどなと前置きした。

 第三形態については、鱗がオレンジを伴ったマグマに変わるらしい。そこからは数分置きにメテオストライクを落すらしい。


 メテオについては、タイミングさえ間違えなければバリア1枚で防ぐ事ができるはずだ。では何故、ロゼが第三形態を僅かしか経験していないのか……そこに引っかかりを覚えた私は、話の途中だがロゼに質問をした。


『ねぇ、ロゼ質問』

『ん?』

『なんで、撤退したの?』

『あ~。えっとなぁ、それについては上手く説明できねーんだよなぁ』

『状況だけでも教えて』

『えっとな、第三形態になってすぐ一発目のメテオが振ってバリア使って何とか避けたんだけど、その後カリエンテが前足で殴る仕草をして……。

 その後、なんかの魔法かスキルかわからないけど、一気にHP枯らされてカリエンテの周囲にいたATKが全滅させられたんだよ』

『ふむ。前足で殴る仕草のあとにってことね?』

『うん。その後なんかあったかと言われれば何も無いんだよ』

『死んだあとにデバフとか確認した?』

『あぁ、してねーなぁ』

『なる。ありがとう』


 ロゼの話を聞き何かがひっかかった。ネットで調べた中に似たようなものがあった気がする。確か……カリエンテの瞳の色が、金から黒の代わりモーションは無しで、ヒードン フレア バースト――隠された広がる爆発と言う魔法があったはずだ。それは、発動から数秒後に透明に近い煉獄の炎を波紋のように広げプレイヤーを殺す魔法で……。

 発動時間は、瞳の色が変わって三秒? 五秒だったか? それに、ディレイ時間が……あぁ、思い出せない……くそ、こんなことならもっと良くあのサイトを見ておくべきだった。


 自分の記憶領域を必死にあさり時間を思い出そうとするも、流し読み程度では思い出せず悶々と考える私を余所に、休憩を終えた皆が「そろそろ行くか」と声を掛け合い準備を始める。


『ロゼ、ここで落ちたら何処に行く?』

『え? あーえーっと、街の神殿に戻されると思うぞ。

 死に戻りも神殿だしな』

『そう……ちょっと、20分位待てない?』

『何か緊急事態か?』

『どうした?』


 突然の質問とログアウト宣言に、ロゼと先生が慌てて私にその理由を聞いてきた。そこで、私は流し読みしたサイトの内容を話した。

 すると他のメンバーもその情報が重要だと言いだ落ちて調べる事が決まった。

 一度入り口に全員で戻ろうと言うロゼに「魔石の残量が不安」と、未だ十分ある魔石を理由に断る。


 ぶっちゃけ、魔石云々よりもゾロゾロ連れ立って歩くのがめんどくさい。火力・連携共に十分ここのモブぐらいは倒せることから、クラメンのみを戻しロゼたちにはここで待って欲しい事を伝えた。


『大丈夫なのか?』

『余裕』

『マジで?w』

『うん。これだけのメンツいるし十分雑魚処理はいける……。

 ていうか、ロゼさうちのクランの事舐めてるの?』

『うわー』

『凶悪だわいねw』


 心配してくれたらしいロゼに、本当に余裕だと伝える。更に聞くロゼに首を傾げニヤっと口角を上げて見せれば、何故かドン引きされた――。

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