第148話 最強は壊滅を齎す④
クラハンに行くため、ヘラの街で倉庫と鍛冶屋を経由してポータルへと向かう。その移動中、倉庫でキヨシ・チカに会い一緒に移動することになった。
クラハンに行くのに何故ツルハシが必要なのか分からないけれど、キヨシ曰く「これがないとクラハンは、始まらないんだぜ~」らしい。
その言葉の意味を必死に考えてみたものの……意味は分からないままだった。
そんなくだらないことを考えながら三人連れ立って、ポータルに乗り【 ネキュレネ 】に移動する。
ポータルで、さゆたん・大和と一緒になり五人になった。
なんとなくだが、このメンツで歩くのに違和感を感じる。盾を担いだ大和が黒ならばそこまで無かったのかもしれない。
何故ここまで違和感を感じるのか……それについて、前を行く大和を見つめ考えた。
なるほど、これか! と納得できたのは、大和のゴールデンレトリバーのような垂れた犬耳に、ゆらゆら揺れるモフモフの尻尾があることとキャラが幼い見た目をしていること……それなのに、大きな盾とランスを背中に担いでいるからだろう。
違和感の正体を探っている間に、魔巣の入り口へと到着した。
まだ来ていないメンバーがいる。全員が揃うまで待つことになったのだが、ここでキヨシが、ツルハシを持ちだし周囲を徘徊し始めた。
何をしているのだろう? と気になった。じーっとキヨシの行動に注視しながらその様子を見ていれば、何やら年季の入った岩や瓦礫をツルハシを使いほじくり返している。
[[ティタ] 後5分ぐらいでつくよー]
[[ren] キヨシ。何やってるの?]
[[ミツルギ] すいませんっす。遅くなったっす]
[[さゆたん] そう言えば、PT二つに分けるでしゅか?]
[[宮様] 了解よ。ティタ]
[[キヨシ] ん~。代行の冒険家やってる~w]
[[大次郎先生] それが良いだろうね。さゆ]
[[ren] ふーん]
[[†元親†] え? 代行に冒険家とかあんの?
俺もやりたい!]
[[鉄男] 冒険家ねぇ~。何ができるのそれw]
[[大和] また、役に立たなそうな代行をww]
[[キヨシ] んー。ぉ、なんかでたぁ~!]
そう言って、キヨシが拾って来たガラス玉に全員が驚いた。
キヨシが持つそれは、ひとつで八人までが同時にあるイベント場所まで移動できるとされている黄昏の玉だった。
二年ほど前に開催された、超がつくほどプレイヤーの間では人気が出た黄金イベント――巨大なカジノやモブと戦うための闘技場などがある、黄昏のエデンへ行くための玉だった。
イベント期間中は、狩り場のモブがこの玉を落とした。
イベントが終わった今手に入れられるのは、資産売却などで極稀に取引所に流れる場合のみ。
その玉をキヨシが拾ってきた。
[[キヨシ] おぉ~。黄昏かー懐かしいなぁ~w]
[[黒龍] お前行く気になってんなよ?
それ売って、借金返済しとけ?]
[[ティタ] 良かったじゃんキヨシ。
それで全額返済できるじゃんw]
[[さゆたん] 多分、全額は無理でしゅw
売れても500M位でしゅよ?]
[[†元親†] 冒険家すげー! 俺もなりたい!!]
[[宮様] はぁ、ほらもう良いから行くわよ?]
[[キヨシ] え? 売るの?]
[[ミツルギ] お待たせっす]
[[大次郎先生] PT二つに分けようかw]
[[大和] 了解だよーw]
[[白聖] キヨシ……お前返す気ないだろ?w]
黒たちの言葉に、さゆたんがリアルな数字を出し無理だと言う。私も同意だと頷きキヨシの様子を見れば、キヨシは玉を使いエデンに行く気満々のようだ。
もし黄昏のエデンにキヨシが行ったとしても、貧乏でローブ職のキヨシには用の無い場所にしかならない気がする……。
ま、経験値とかも美味しいから行くならヒガキさん・ゼンさん・ミツルギさんを連れて行って貰いたい。
全員揃ったようで先生に勧誘を貰い・大和・ヒガキさん・ミツルギさん・ゼンさん・宮ネェ・キヨシとPTを組んだ。
何故この配置なのか? と聞けば「宮の方が、信頼できるから?」と妥当な返事が返って来る。
納得する私を余所に、黒たちの方もPTを組み終わったらしいく連盟を組と「バフ」と一言告げてバフを開始した。
最後に、トランスパレンシーを入れ四階を目指し歩く。
[[黒龍] ここポータル欲しいよなー]
[[鉄男] ここだけじゃなくて、全部の狩り場に欲しいw]
[[宗乃助] 歩くのだるいでござるなw]
[[大次郎先生] そう? 私はこう言うの結構好きw]
[[ヒガキ] 自分も好きですね~w]
[[宮様] 私はどっちでもいいわw]
今更な事を言いだす黒・鉄男に対し、同意を示す宗乃助他数名が頷く。逆に先生は、こう言うドキドキが堪らないらしい……ちょっと変態くさいと思いつつ、私も先生の意見に同意する。
狩り場に行くまでの道を歩き風景を見たりするのは好きだし、リアルの農村のような感じがして見ていて飽きない。
とここで、トーナメント戦で会ったドッペルについての話がでた。
[[ティタ] 俺もどっちでもいいかな~w]
[[大和] そう言えばさっきのドッペル。
別の街で他のプレイヤーにキモイって
言われまくってたってさ。
雪継じゃなかった生ジル君が心配して
密談送ってきてたよw]
[[さゆたん] 生ジルwwwwww]
[[宮様] アレは流石にドン引きよね……
運営も直に動くんじゃないかしら?]
[[ゼン] マスター。本当に大丈夫ですか?]
[[ミツルギ] あれがメインなんっすかね?]
[[ren] ゼンさんありがとう。大丈夫]
[[白聖] 流石にそれはないだろー]
[[宗乃助] 狩り場で会ったら即PKでいいでござるよ!]
雪継こと生ジル君には、後でお礼を伝えておこう。
正直、久しぶりにあのヤバイ感じの人にあったと思った。以前のクランを解散するきっかけになったのもクラン内に、アレよりもヤバいのがいたからだ。
そのプレイヤーの姿が脳裏にチラつき過去を思い出し嫌な気分になった。できれば二度と絡みたくないし会いたくない。
などと考えている私の肩を優しくない勢いで鉄男が叩く。その強さにグワッっと鉄男を見れば、いつの間にか3階の踊り場に到着していたようだ。
時間的にいつもここでトランスパレンシーを更新する。そのためメンバーたちはここで立ち止まる癖がついているらしい。
「大丈夫か?」と聞く黒に頷き答えれば「ren? トランスパレンシー切れるから早く!」そう鉄男に急かされ、慌ててトランスパレンシーを更新する。
更新したにもかかわらず、進もうとしない黒と大和。何か問題でもあたのだろうかと全員のPTバフを確認していた私の元へ密談が届く。
”黒龍” あいつの事は忘れろ。
”ティタ” あいつとは違う奴だから大丈夫だよ。
”大次郎先生” ミッシェルとは別人らしいから気にしないように!
”さゆたん” 何かあったら言うでしゅよ!
”白聖” あー。あれだ。思いだしてただろ?
もう二度と間違えね―から心配すんなw
”宮様” 守るから安心しなさい!
”宗乃助” 大丈夫でござるよ。
”鉄男” 大丈夫だ。今度は絶対間違えね―からw
”大和” ren大丈夫?
”†元親†” キヅナがミッシェル。
リアルで締めたからあいつはもう戻って来ない。
心配すんなーw
”キヨシ” ren! 玉使ってエデンいこうぜー!
クラメンたちから続々と届く優しさの籠る密談に、ホロリと涙が流れそうになる。泣いたりはしないけれども……ていうか、キヨシやっぱり玉使う気じゃん。
キヨシのおかげで沈みかけた気分が上がるのを感じ気を取り直し、皆にあり。と返事をした。
過去に起こった事件について、今は考える時ではない。
「よし、進むか」と言う黒の言葉に、四階へと登るため進んだ――。
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