第140話 最強は夢想する⑳
9階からはより一層モブの強度があがるので十分に注意したいところではあるのだが……。
[[キヨシ] いやああああああ! 助げでえー!]
[[黒龍] 無理だなwww 死ぬか階段まで逃げ回れw]
[[ティタ] ちょ、キヨシがひいてるwww カッコイイ! 頑張れ~w]
[[白聖] 頑張れキヨシwwww]
[[さゆたん] あふぉでしゅw]
[[宮様] はぁ。回復だけはするわね?w]
[[†元親†] すまん。兄弟助けられね―w]
[[宗乃助] やっぱり、泥船でござったか……]
[[ミツルギ] 助けないんっすか?w]
[[鉄男] んー。泥つーか骨組しかない船だなw]
キヨシがモブに追われ助けを求めながら、私たちの周囲を回っている。
ことの発端は――私たちが9階に到着すると同時に起こった。
頭がおかしいのではないかと思うほどのモブが入口から廊下にかけ溜っていた。正直、6階の溜まり方が可愛いと思えるほど……。
そこで、一度階段に引き返しクラチャで話し合いを行う。
先生の案で、ゲッター サークル スクロールを使いモブを纏めて、カリエンテを召喚後殲滅しようと決定した。
私が召喚したカリエンテがモブを殲滅し終わり残りは廊下だと廊下へと出たところで、想像以上のモブが廊下に詰まっていた。
黒のレンジ ヘイトが即座に発動され私はヘイトから漏れたモブを、ゲッター サークル スクロールでモブを纏める。
シロのダウン プルが降り注ぎ。さゆたんのダークネス フレイムが黒の周りのモブを焼いた。
それに合わせティタたち近接は、それを1匹ずつ確実に殲滅する方向で取り囲み攻撃を開始する。
とここまではいつも通りだったのだが……ここで事件は起こる。
何をとち狂ったのかキヨシが、ゲッター サークル スクロールで纏めた方のモブに対しダークネス フレイムを発動させダメージを与えてしまう。
結果、ゲッター サークルの効果が切れると同時に、キヨシを標的にしたモブが大量にキヨシに押し寄せた。
私たちが他のモブを殲滅する間、叫び声をあげながら涙目になり逃げ回るキヨシ。
黒やティタ、鉄男がどうにかタゲを取ろうとするも、ダークネス フレイムのダメージヘイトの方が効果が高いようでまったくタゲが取れない。
叫び続けるキヨシを可哀そうな子でも見る目で宮ネェが見つめ、廊下のモブを殲滅して漸く10階の階段に辿り着いた刹那、登ろうとするキヨシを慌てて私は止める。
[[ren] キヨシ!]
[[大次郎先生] 登るの最後な!]
[[キヨシ] うわああああああ。早く、早く登って俺しうゥゥゥ]
ここでキヨシに先に登られれば、アレが引くモブが私たちをタゲることになる。それは勘弁して欲しい。モブを引き攣れ逃げ回るキヨシを残し、全員が階段を登った。
[[キヨシ] ひぉうつ!]
[[宗乃助] おかえりでござるよw]
日本語のような良く分からない言葉を叫びながら階段へと突っ込んできたキヨシを宗乃助が受け止め、背中をポンポンとあやすように叩く。
そんな二人のどこか嘘っぽい友情を、呆れの籠った視線で見守る他のメンバーたち。
何とも言えない空気が流れ、視線だけが飛び交う。そんな中、ふっと噴出し笑いながら「進むか」と先生が言い階段を登った。
9階まではクリスタルで出来ていた壁や床、天井が10階では全て神殿のような白い石造りになり、部屋や廊下の作りも変わっている。
これまでは、廊下を通り階段へと抜ける事ができていたが、ここからは大きな広間を通り抜け階段を目指す。
もちろん広間には、モブがいるわけなのだが……その数は通常であれば、そこまで多くない。今回に限って言えば断言出来ないのだが。
周囲が見えなくなったことで、いつモブの塊が現れるか分からない状況に黒は慎重に進む。
そんな私たちをあざ笑うかのように、その後14階までモブの塊が現れる事は無かった……。
14階最奥にある天上の御社に到着すると同時に、クエストアイテムであるクスロールを探す。
[[ティタ] ren。あった?]
[[ren] うーん……無い]
[[大次郎先生] ん~。宝箱とかに入ってるとか?]
[[白聖] 本当にここなの? 代行だろ?]
[[ren] 最奥の天上の御社ってここでしょ?]
[[†元親†] ここ~w]
[[鉄男] これか?]
そう言って鉄男が指差す方を見てみれば、足元に大きな魔法陣が書かれている。
イヤイヤイヤ流石にこれじゃないよね?
そう思いながらも、鉄男とキヨシに手招きされるままその中心へ立つ。
何度か点滅するとうっすらと魔法陣が光半透明の冒険者らしい男が現れた。
その男は、その魔法陣から左の壁にある一つだけ色が違う石を押しこむ仕草を見せると消える。
これは間違いなく、クエスト関係だよね……石を押し込めってことか?
悩むより行動した方が早いと思考を切り、透けた男の後を追うように壁の石を押し込む。すると、大きな石が擦れなうような音が鳴り響き壁が横にスライドされた。
そこには、人が一人だけ通れる穴が現れる。
[[†元親†] うおぉぉぉ! すげぇー!]
[[キヨシ] あれだ、インディー○ョーンズみたいじゃね?w]
[[白聖] 例えが古すぎてわからねーw]
[[大次郎先生] 冒険家の映画だっけ?]
キヨシの例えが良く分からない。そんなことはどうでもいい。とにかく先に進まないとそう思い中へ入った刹那、視界が切り替わる。
ガラス細工で出来たような柱が乱立した細長い空間のようなそこには私一人だけが立っていた。
一緒に来ていたはずのクラメンたちが居ない。
その代わり目の前の祭壇の側には先ほど見た、冒険者の男が一人ポツンと立っている。
まるで私が来るのを待つようにこちらを向いた男は、私が側に近付くと徐に階段を登り丸い水晶に触れて消えた。
罠にはめられているような感覚を覚えながらも、男がしたように水晶に触れる。
と、突如水晶が黄金に光り輝き、白金の髪、白い大きな羽を背負い、金や銀などの装飾品が着いた白く上質そうな衣を纏ったナイスバディの天使が現れた。
【 よくぞ来ました。冒険者よ。私はニーケ、軍神アテナ様に仕えし大天使です。
ここへ辿り着いたあなたを見込んでひとつお願いがあります。
もし、わたくしの願いを叶えて下さるのであれば……その礼として、これを差上げましょう。 】
大天使ニーケのお願いについて詳しく聞いた私は、その場で膝をつきガックリと項垂れた。
そんな私にお構いなしのニーケは【 では、頼みましたよ。 】と言うと消える。
そのままの姿勢で元の場所へ戻された私を見たクラメンたちは、何かを感じたのか見ないふりをした。
[[宮様] れ、れん?]
[[黒龍] 終わったなら帰ろうぜ?]
[[ティタ] 凄い嫌な予感がするw]
[[白聖] 嫌な予感しかしね―w]
[[さゆたん] ……な、なにがあったのか聞きたくないでしゅ]
[[大次郎先生] でも、聞くしかないよね?]
[[鉄男] 否、ここは皆で帰還しよう!]
[[†元親†] 何があったんだ~?]
[[キヨシ] 俺も―帰りたいTT]
[[宗乃助] 話すでござるよw]
[[ミツルギ] どうしたんっすか?w]
その場にしゃがみこみ肩を叩いてくれた先生に抱きつき、ニーケに言われた事の詳細を話す。
その内容とは、この天城のどこかにいる ”魔に
居る場所すら分からないし……クエストアイテムが確実に出る訳ではないのに……どうやって探せと? もう少しヒントくれヒント! 代行のクエでこんなの持ってくるなんてマジで、頭おかしいんじゃないの? と今、物凄く叫びたい。
だが、それどころではない。
先にやるべきは、クラメンに狩りの続行を決断させること。必死に叫びたい衝動を抑え、懇願する気持ちを込めクラメン一人一人を見つめた――。
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