第141話 最強は夢想する㉑

[[大次郎先生] うっ……]

[[黒龍] あー。わかった、わかったってw]

[[さゆたん] まーこうなるだろうなって思ってたでしゅw]


 無言で見つめた結果、何かを諦めたように目を閉じる先生。はぁーと大きな溜息を零し分かったと連呼して失笑する黒。何度か頷き即座に了承してくれるさゆたん。

 他のクラメンも似たり寄ったりな反応を返し、クエストの手伝いと言う名の狩りを了承してくれる。


[[ren] あり]


 ホクホク顔で感謝の言葉を伝え、装備やPOTなどの確認を終えたところで14階からクエストモブを探して回ることになった。

 大部屋の隅から、小部屋の隅まで全て探しモブを探したが14階には居ないようだ。そのまま階段を降り13階へと向かう。


[[宮様] クエストモブのLAはrenが、取った方が良いのよね?]

[[鉄男] だろうなー]

[[ティタ] そうだねw]


 宮ネェの言葉に、そうかそう言うのもあったなと思いだす。

 このゲームに限らず、基本的にクエストアイテムを獲得するにはその獲得したい本人がラストアタックなり、ダメージを与える必要がある。

 病ゲーの場合、LAを与えた所でクエストアイテムが必ず出る訳ではないが……。


 14階から階段を下り、13階に到着すると同時にチカが思いだしたように「キヨシ、トレイン」と言い始めた。


[[宗乃助] ついにおかしくなったでござるw]

[[キヨシ] ど、どうした……チカ?]

[[白聖] え? チカは元からだろ?]

[[†元親†] さっきのキヨシの引きに名前を付けただけー!

     俺おかしくないからー!]


 どこかで見た事ある踊りを一人でやるあたり本当におかしくなったのか? と思ったけれど、どうやらチカ的には9階でやったキヨシのあの鬼気迫る引きに名前をつけたかったらしい。

 なるほど、○ューチュートレインか……キヨシにはもったいない有名な歌だな……。

 そんな事を考えている間に、13階を見回り終わってしまった。


 一体何処にいるんだ……? ニーケも場所のヒントぐらい教えてくれてもいいと思うし、ニーケの設定について、運営は何考えてるんだろう?

 なんて、運営とニーケに毒を吐き12階へと降りたところで待たせていたやまとから「まだ、じかんかかるのー?」と、密談が届く。


 やまとに事情を説明して、クエストモブを探していると伝えば一度落ちてクエストの詳細を調べてくれると言う。心優しいやまとのその申し出に感謝しつつ情報を待つことになった。

 待つと言ってもその場に立って待つわけでは無く、こちらはこちらで12階をうろうろと徘徊しながらモブを探すのだが……。


[[黒龍] ん~。いないな]

[[白聖] うーん。ボス部屋とかに湧いたりしてなw]

[[さゆたん] 嫌な事言わないでほしいでしゅw]

[[ミツルギ] ボス部屋とかやめて欲しいっす]

[[ティタ] 死亡フラグしかないw]

[[†元親†] やべぇ、頭の中でEXI○Eがずーっと歌ってるw]


 12階にもクエストのモブはいない。黒のぼやきにシロがありえなくない事をボソリと呟く。

 死亡フラグどころか死確定クエスト……だよね? と言いたい。流石にそこまで運営もバカではないだろうと思いつつ、他の部屋も見て回る。


”やまと” ren。わかったよーw

”ren” おかえりw


”やまと” えっとね。9階に色違いの小部屋あるの知ってる?

”ren” わかる。

   北のふたま続きの小部屋があるとこだよね?


”やまと” そう。そこにいる。一人で倒さないとダメで

     ドロップ率は100%なんだって。

     ただ、他のメンツが攻撃すると消えて 

     30分は湧かないから気を付けてw

”ren” なるほど。あり


”やまと” 早く帰ってきてね~ノシ

”ren” うい


 やまとから得た情報をクラチャにそのまま流せば「9階……マジで?」と各々が嫌そうな顔をする。

 あの大量湧きのモブをどうにかしないといけないので……そう言う顔になるのも分かるが、私のクエストのため是非頑張って貰いたい。

 

「しゃーねー。いくぞ」気合を入れ直したらしい黒が、そう言って歩き出すと他のメンバーも溜息を零したり、天を見上げたりしながら引っ張られるように歩き始めた。

 12階から11階、11階から10階へと降りやっとのことで辿り着いた10階からの下り階段で、バフを更新する。


 目的の北の小部屋は、階段を降りて左に進み三つ目の角を右に曲がった路地のつきあたりにある。道的には問題はないだろうが、階段側にいるモブの処理をどうにかしないと厳しい。

 クラチャで話し合いの結果、プロテクを使いモブの殲滅を試みる事になった。


[[白聖] まー。ダメだったら雷召喚だなw]

[[宮様] www]

[[ren] うぃ]

[[大次郎先生] いくぞー!]

[[黒龍] プロテク頼む]

[[ren] k]


 プロテクが入ると同時に、9階へと踊りでる。そこには、先ほどキヨシがトレインしていたモブが大量に犇めきひしめき合っていた。


 黒のレンジ ヘイトが発動され、モブが一気に黒へと流れる中ゲッター サークル スクロールをタイミングをずらし使う。

 塊ごとに距離を置いて3つに集団にわけた。


 その合間に、シロのダウン プル、さゆたん、キヨシのダークネス フレイムがエフェクトをあげ黒の元に居るモブへとダメージを与えた。

 間髪置かず飛ぶ回復の光が黒を包みこむのに合わせ、ティタ、先生、鉄男、宗乃助、ミツルギさんの五人がタゲを合わせ攻撃を開始する。


 黒の周囲ではモブが見えない程、色とりどりのエフェクトの光が上がりひしめき合うモブが一匹また一匹と倒れた。


 約5分ほどで一つ目の塊の殲滅が終わり、二つ目の殲滅に入る。

 ゲッター サークル スクロールを残りひとつの塊に使いながら、個別のバフを更新する。

 その後、たいした火力にはならないだろうとは思いつつも、ただ見ているのは申し訳ない気分になった私も攻撃に参加した。

 

 階段に犇めいて(ひしめいて)いたモブの殲滅が終わりに差し掛かった頃合いで、階段へ向かう複数PTと遭遇した。

 モブを殲滅することなく階段を登ろうとするPTの数名が、こちらの存在に気付くと慌てたような表情をする。

 既に階段を上っていたらしい数名が、眉根を寄せ面倒と言わんばかりの表情で戻って来ると、こちらを一瞥する。それと同時に白チャで「雑魚が居るせいで……チッ」と言われ舌打ちされる。


[[黒龍] 雑魚?w]

[[さゆたん] 舌打ちしたでしゅね?]

[[†元親†] 死刑じゃぁぁぁぁぁ] 

[[宮様] あぁ、言うふざけたクソガキは、しっかり殺しましょうね]

[[ティタ] 賛成~w]

[[キヨシ] お前のが雑魚だあああああ!!]

[[ミツルギ] 知らない奴もいるんっすねw]

[[大次郎先生] まー、いいんじゃないかな?]

[[鉄男] やってこーいw]

[[宗乃助] 加勢に行くでござるよw]

[[白聖] 俺も~w]


 クラメン達の援護射撃を受け、水を得た魚の如く階段に向かい宗乃助と二人走る。

 そんな私たちの横をシロの放ったオリハルコン アローがすきるエフェクトを纏い通り過ぎた。矢は見事モブを殲滅していた舌打ち男の足元を射抜き、その身体を麻痺させた。

 

 到着するかどうかのタイミングで、ピクリとも動かない男の足元にバインド(+18)を設置し発動させる。

 バインドが入ろうが入るまいが、関係無いとばかりに二刀を取り出し抜刀するのに合わせ袈裟斬を仕掛けダメージを与える。


 麻痺った男の背後から、狙い澄ましたように宗乃助が「覚悟っ!」と短く言いつつ現れ、急所を複数回斬り付け消えた。


「雑魚でわりーな?」と言いながら、口角をあげた黒が、盾を右から左へと振り抜き男を弾き飛ばす。


「ま―雑魚の俺たちの攻撃なんて大した事無いよね?w」


 足元に飛んできた男に、双剣を突き立てたティタが精錬で付いたらしいフレイム バーストを発動させる。笑っていない笑顔を見せそう言うと剣を抜きその場から飛び退く。


 それと同時に、少し離れた位置から黒い笑みを湛えたさゆたんと眉根を寄せたキヨシが詠唱を開始した。


「あたくち、雑魚でしゅからww」

「俺は、雑魚じゃねー?」


 言いたい事を言い終わり、サンダー スピアとアイス ランスが二人の杖から同時に発動され男の身体を射抜く。

「ま―、怒らない怒らない」と優しい声音で言いながら、先生の大槌が轟音をあげて舌打ち男の腹部目掛け振り降ろされた。


「ちょ! 俺まだ攻撃してないのにー!」

「自分もなんもしてないっすよw」


 チカが悔しそうな声音で攻撃してない事を訴えるも、いつの間にかモブの処理を終わらせ駆けつけた他のメンバーたちによって舌打ち男は灰色になり死亡した――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る